宇宙を知りたい臆病な男(仮)
ちょっとずつ更新がんばります。
面白書き、臆病な男の走り書き
死んでしまおうかと思う時がある。
後々思い出して何バカなことを、と正気に戻ることができるのだけれど、最近はどうもうつらうつらと危なっかしい。「死んでしまおうか」と考えて、後で思い返した時に、「あぁまだ生きているな」と思うだけで「死」に対して積極的であったことにまるで自責の念を感じることがない。
沸き上がる闘争心に、将来の夢を熱く願っていた時の自分とは、まるで逆であって今の自分はいったい、これは、誰なんだろうな?と自問しては、これはお前だと、まぎれもなく今のおまえなんだと、この不可思議なまるで暗い穴の奥で、もがくこともなく、ただ呆然としている。
このままではお前はいつか本当に死へと自ら足を踏み込んでしまうぞと過去の手鏡の声に、そうなっても何か悪いことがあるのかと思ってしまうから、これはいよいよ靴を買い揃えねばならんと少し笑ってしまった。
人は死んだら天か地獄へゆくというけれど神を信じなくなってしまった私にはそれはただの脅しにしか聞こえない。神とは人間にとってなんと都合の良い存在だろうか。神が本当に居たらいいのに。
神は死んだ。死について考えないことはなかったのだ。人間の誰しもが考えるのだ。なんとむごい進化をとげてしまったようだ、我々人間は。
死んだら灰となり塵となるだけなのだな。残るものといったら生者の記憶の中でしかない。だって神は死んだのだから?
つまるところ私の意思は死んだらそこでなくなるのだ。まるで最初からなかったかのように。いや、なかったも同然の生き方だなぁ。
慰める者もいるだろう、それでもお前の生きた証はお前の愛した者がしっかりと心に刻んでいる。お前の死は無駄などではないと。
そうだな、きっとそうだ。あんなに愛した30年ぽっちだが、あれは大切だ。わすれたくない。妻も子もきっと胸深くに刻んでくれるだろう。悲しみという傷になりえないが。
そうだろう、そうだろう。だいたいなんだ、神がいないとはよく言い切れるものだ。可能性は捨てきれないだろうに。
そう思うだろう、お前も。私だってそう考えたさ。たくさんなぁ。
でも私は気付いてしまったのだ、人間がいつもそうやって生きてきたのだとね。私は何もかもに絶望してしまったのだ。軽蔑してくれるな。お前だって私のようになんていくらでもなるんだからな。本当だよ。脅しじゃない。警告してるんだ。気をつけてくれよ、頼むから。どんなに気をつけていたって、穴はどこにでもあるんだから。ちょっと覗いたら、ほらお前どこにいるんだ?
砂漠で水を語るのはエイリアンか人間か?
目前に広がるバイオーム砂漠は水平線を推し広げるばかりで気温の変化をいっそう激しく思わせるだけだ。
気温に順応な風は水平線の果てからはるばる運んだであろう砂を俺の白く薄い木綿製の服の繊維に刷り込んでは去っていく。
気がつけばどうだ近現代の自然に還る美徳の如くなんと自然な、原始的なようそうだろうか、右手の水の入ったぷらすちっく容器だけが時代を近現代たらしめている。近現代の美徳、いや悪くいえば所詮退化。泣く泣く退化せざるおえなかった生物が絶滅するセオリーは猿人となった今となってはそれこそ砂漠の一輪の夢でしかない。
べこべこな近現代的ぺっとぼとるの中で三分の一ほどに減った水は軽く振ってみたところでちゃっぷちゃっぷと原子と原子の結合を、宇宙の絶対的定理を、人間の偶発的発生を残酷に告げるだけだ。
頭上の地球の女神様は近しい人間には厳しいらしい。到底敵わない俺は身を隠すしかなかった。適当な岩陰は女神の足元を地球と仲良く媚売りチョロチョロと走り回る例の衛星が地球を頼もしく思う理由を教えてくれる。
理不尽な怒りを許してくれよ。
地球の裏は静かだ。水平線の果てからやってくる風は女神と同類案外馬鹿らしい、猿人の横を気づかずに通りすぎていく。まぁ、この猿人の骨を運ぶようになるかもしれないのであまり馬鹿にはできない。
理不尽な怒りを許してくれよ。
そっと岩陰に座り込んでからどれくらいたっただろうか。三歩ほど前で緩く盛り上がっていた砂山が二度ほど平らに還り山に還りの繰り返しを終えた。
…あぁ、手の中のぺっとぼとる、猿人の進化を記録する無機質な塊よ、おまえの抱えるそれはなんだ、静かにうごめき女神の笑顔を映し出すそれは本当に宇宙の定理の産物か?こんなに豊かであるはずがない。しかしどうして飲むと減るんだ。ふざけるな。本当に宇宙の定理の産物なのか?感情がまるでこもっていない。この嘆きがどうして三つの元素に化学変化しないのか、全ては俺を貶める宇宙レベルの陰謀なのか。
…あぁ、そうだ今は現実的打開策を思考するべきだ。冷静になれよ。キャップをあけて、二口だけちびっと飲む。うまいかは分からない。蒸発なんてさせるかくそが。宇宙なんてくそくらえだ。失礼、急いでキャップを閉める。
べこべこボトルを持つこの細い骨のような腕が脳に自発的危機感知を促す。
メーデーメーデー
脳という宇宙で旅をする俺の宇宙船思考は瞼の裏でメーデー発信を繰り返す。近距離に食物船はないか。
メーデーメーデー
助けてくれ。誰か豊富なミネラルを!この思考が生き延びる、宇宙に対抗できるだけの熱い感情論を!
ジリリリリリリ
臨時の自動着陸操作に切り替わります
地球から三十億光年を共に旅した相棒思考はすでにボロボロだったのだ。
ガタガタと大きく揺れる思考。
着陸?墜落?無重力に落ちていくのが分かった。
宇宙を知りたい臆病な男(仮)