キリマンジャロの雪

わたしのことどれくらい好き?って
これぐらいって
手を拡げる姿がなさけず
ポケットに手をいれたまま
富士山くらいかなって
そうなんだ、それなら日本一わたしのこと好きかもしれないけれど、世界のどこかではきみよりもっと私のことを好きな人がいるかもしれないねって
こりゃ一本とられた
そういうスケール感はきみには似合わないけれど
その小さな手足は実にきみをきみらしくしている
じゃあ俺のことどれくらい好きなのって
そうだなあって
その後何も言わなかったけれど
その続きは聞かなくてよかった気がする
俺の課長は監査上がりでね、やたら文章の書き方にうるさいんだ
でも、この間、その基準についてわかった気がする
この方がゴロがよくないですかって
言ってたから、論理性だけじゃなくてゴロも大事なんだって
今度きみに
わたしのことどれくらい好き?って
聞かれたら
エベレストかな
チョモランマかな
でも
キリマンジャロかな
ゴロがいいから
なんて
でも
きみの返事が聞けなかった後味が
いつまでも融けないキリマンジャロの雪のように
胸の内に残っている

キリマンジャロの雪

初出:即興ゴルコンダ

キリマンジャロの雪

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted