うんこ大王とおしっこ王子(王子学校へ行く編)(11)
十一 うんこ大王登場
僕は山盛りのお腹を抱えたまま、ソファーに寝転がった。近くに転がっているマンガを手にする。
「あれ。おかしいぞ」お腹をさわる。なんか、痛くなってきた。少し、顔がゆがむ。
「大丈夫かい?」王子が心配そうに胸ポケットから顔を出した。
「大丈夫だよ」と言いながら、体がくの字になる。
もうだめだ。僕はソファーから起き上がると、体を折り曲げたまま、トイレに走った。
ドアを開け、ズボンと一緒にパンツを下ろし、座りこむ。おしりからお腹に溜まっていた物が一気に吹き出した。と、同時に、お腹はぺちゃんこになった。
「ふう」後から、ため息が出た。
「少しは楽になったかい」王子が僕の顔を心配そうに見つめている。
「ああ、ありがとう」
「だから、食べ過ぎはよくないと言っただろう。あれだけの量を食べたんだもの。大王や隊員たちが心配だな」王子の顔が曇った。
その時。
「ひゃひゃひゃあーん」
トイレのたまり水から何かが飛びだした。
「あっ。うんこ大王だ」
「大王」
僕と王子が同時に声を上げた。目の前にはうんこ大王がいた。
「食べ過ぎると、こうなるんだ。わかったか。おかげで、わしらの軍団の隊員たちは、疲労困憊で全員寝込んでしまったぞ」
確かに、大王の体はふらふらで、立っているのが精いっぱいのようだ。しかも、茶色い顔は赤く染まっていた。怒っているのだ。
「それに、王子。お前は主と一緒にいたのか。お前がついていたのに、主に食べ過ぎを止めることができなかったのか」 大王の怒りの矛先は王子に向いた。
「注意はしたんですけど・・・」王子は頭をうなだれる。
「まあ、今回はしょうがない。次からは、気をつけるんだぞ。さっきも言ったように、お前だけの体じゃないんだからな」
「はい」僕は素直に頷いた。
「じゃあ、わしは帰る。王子、お前も一緒だ」
「はい」王子は僕の胸ポケットから飛び出すと、便器の中にぼっちゃんと落ちた。
「それじゃあな。流してくれ」
「また、学校に一緒に行こうよ」王子が明るい声を出した。
「王子。今度は、勝手に行くなよ。わしに報告してから行くんだぞ。いや、待て。今度はわしが行く。わしも外の世界を見てみたいからな」
「大王が行くんですか。それじゃあ、消化活動の指揮は誰がとるんですか」
「王子。お前がやればいい。お前もそろそろ、わしの代わりができるはずだ」
大王と王子の親子の会話が続く。
「主よ。今度は、わしがお前と一緒に行くからな。それまで、期待して待っていてくれ」
「じゃあね」王子が手を振った。
「じゃあね」僕も手を振り返す。
水洗のレバーを回した。便器の中の水は渦を巻き、大王と王子は回転しながら消えた。
「今度は大王が一緒か・・・」
僕は胸ポケットから大王が顔を出している姿を想像した。
「おい、ハヤテ。いつまでトイレに入っているんだ。早く代わってくれ」パパの声だ。
僕がドアを開けると、パパがトイレに飛び込んだ。
「ちょっと、食べすぎたみたいだ」
僕がリビングルームに戻ると
「ほんと、パパもハヤテも親子ね。同じように、食べ過ぎるんだから」
ママがあきれ返っていた。
うんこ大王とおしっこ王子(王子学校へ行く編)(11)