お茶碗

お茶碗

上司 幾太

取れない、取れないどうしても取れない。お茶碗に付いたご飯粒・・・。

お茶碗のご飯粒、こびりつくと取りづらい

 「いただきます」夜も更けた遅い時間に一人の部屋で私はそう言って、自分の料理を食べていた。それはもう毎日のように・・・。

私の愛用しているお茶碗は随分と長いこと使っている。確か私が中学生のときぐらいから使っているものだ。社会人になるときにそのお茶碗がどうにも手放せずに引っ越しと一緒に持ってきてしまった。

 毎日、毎日、自分で炊いた白いご飯をそのお茶碗によそって食べる。ただ、それだけを繰り返す。とくになにかあるわけでもないのだが、どうしても一人の食事というものはどこか空しいようなような気がする。そんなことを感じながら、右手で握った箸で、ひたすら白い湯気が出ているご飯を口へ運ぶ。

お盆、大晦日、お正月、クリスマス、誕生日いろんな記念日や祭日、祝日があるけれども、私の食事はいつも一人だった。いつものお茶碗にいつもの白いご飯をよそって食べるただそれだけ。そんなことを考えながら今日もお茶碗によそわれた白いご飯を食べていた。

 私はお茶碗にはご飯粒を一つも残さずにいつも食べるのだが、今日はなかなかお茶碗に付いたご飯粒が取れない。いつもはこんなことないのに今日はなぜだが取れない。取ろう取ろうとするたびに、妙な焦りが心うちに出てきて取れない。何時しかご飯粒は擦りつぶされて、ベットリとお茶碗着いてしまった。そんな風になったお茶碗をただ私は呆然と眺めていた。

そして、もう取れなくなったご飯粒をなぜだが取ろうとまた右手で箸を動かしていた。もう取れはしないと分かっていながら・・・。

一人の部屋にカチャカチャと食器の音だけがただ響いていた。

お茶碗

お茶碗

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-15

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