幸せな娘
幸せって なんでしょう。
おまえは 世界一 幸福な 娘
わたしは 世界一 幸福な 娘
今日、わたしは花嫁になる。
世界一 幸福な娘。
結婚相手は 隣の村の 庄屋の息子。
学力も、経済力も、圧力も兼ね備えた
権力者の家の息子。
わたしは、世界一 幸福な娘
牛が三頭、豚五匹 それがわたしの価値
わたしは 世界一幸福な娘。
幸福な娘になる少し前、
父は 庄屋の息子の父親に頭を下げた。
なんども なんども、感謝の言葉を口にして。
母は泣きながら わたしに よかったね、と言った。
庄屋の息子の父親が去った後、両親は言った。
おまえが清らかな娘で 本当に良かった、と。
幸福な娘になる今日、家に、隣村から迎えが来た。
籠に入ったわたしを 屈強な男たちが四人で担いだ。
両親は泣いていた。幼い弟たちが、黙って見ていた。
顔も知らぬ男のもとへ 運ばれるわたしの姿を。
愛したかったひとの面影が 瞳の中で滲んで痛んだ。
もう帰っては来れぬ生まれ故郷の空気は
男たちの歌声に震えていた。
おまえは世界一 幸福な娘
おまえは世界一 幸せな娘
わたしは 籠の中で小さく口ずさんだ
わたしは世界一 幸福な娘
わたしは世界一 幸せな娘
幸せな娘
じわじわ来る感じに仕上げたかった