Forgot-me-not

花を調べていたら書きたくなったものです。

読んでも意味がわからないと思います。
「Forgot-me-not」とは、とある植物の英名らしいので、検索してみてください。
ハイフンなしで直訳すると、「私を忘れないで」ですねぇ。

あなたが残した最後の言葉を胸に、私は今日もあなたを思う。

老いた体に不似合いな薄青色の花のブローチ。
もう、半分萎れてしまっているけれど、私が織り成す全てのものよりも輝いている。
下女の子たちには申し訳ないけれど、また新しいのを採ってきてもらわなきゃ・・・。
これは、あの人が最後に残した言葉。それと同じ名の花だから。
侍従たちには、いつまでもそんなものをといわれているが、この年になっても決してはずす事は許されなかった。
あの日、あなたが逝ったあの日から、これは私にかけられた呪いなのだ。
「ベルタ様、そろそろお部屋に戻られてください。お体に障ります」
ほら、来た。いつもと同じ理由で私を呼びにくる。私が50をすぎたあたりからだっただろうか。
まったく、年寄り扱いして。
あのころがまるで昨日のように思い出せるのに、今ではただの老人でしかないのね。
それでも、あなたのことだけは忘れはしませんよ。



とある騎士と、その恋人が作り出した伝説は、その真実こそ語り継がれてはいないものの、今もなお、その残り香を漂わせて現代に在る。
ドナウに沈んだ騎士の心は、その花と共にあることを願おう。

Forgot-me-not

Forgot-me-not

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-14

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