ふたりの絆⑳

同級生とアカリの話

「すいません、生ビール4つね。」

ここはヒカルの地元にある居酒屋である。

ヒカルは久しぶりに中学時代の同級生3人と飲んだ。

メンバーは、ヨッチ・カズマ・トシオで・・・皆、独身である。

男が4人集まれば、出てくる話は当然女の話だ。

「誰か、彼女できたのか?」

ヒカルが口火を切って尋ねた。

「出来るわけないやろ、こんな田舎で。」

ヨッチとカズマが口をそろえて言った。

「あほ、田舎は関係ないやろ。」

「田舎娘の方が、おとなしくていいやろ。」

ヒカルは地元を強調した。

同級生の女の子で、独身がまだ数人いるのを知っていたからだ。

「明美ちゃんまだいるぞ、カズマもらえや。」

「俺はその気でも、相手に気がなければ、しゃあないぞ。」

そうだ、そうだと相づちを入れるヨッチである。

そんな中、ひとり蚊帳の外なのはトシオである。

「こいつはあかんぞ、飲むのが生き甲斐だからな。」

そうなのだ、トシオは女に興味がないのだ。

好きなお酒さえ飲んでいれば幸せな男だ。

その証拠に、4人の中で1番腹が出ている。

「お前は気楽でいいな。」

ヒカルはトシオにつぶやいた。

しかし、後にトシオの一言に救われることになるとは、予想していなかった。

「お前はその後どうなんだ。」

カズマがヒカルに聞いてきた。

実は前に一度飲み会をしたときに、アカリとのことを話してあった。

「さあ、どうなんだろうな。」

「福井へ一泊旅行に行ってきたけどな。」

カズマとヨッチは真剣な顔で聞いていた。

「当然手は出してきただろうな、お前のことだから。」

「当然は余分だ、あほ!お前と一緒にするな。」

ヒカルは反論した。

「期待に添えないで悪いけど、何もしてないよ。約束していたから、手を出さないと。」

冷静にヒカルは答えた。

「お前はくそ真面目な男やな。そんな子と付き合うのはもうやめろや。」

カズマがあきれた顔で言った。

さらにヨッチも口を出してきた。

「その子はお前のことを、ただの友達としか思ってないんやろ。お前が利用されているだけやろ。」

ヒカルにとっては痛い処をつかれたのである。

確かにアカリとは仲の良いヒカルだ。

それでもキスの一つもさせて貰えないのが現実であった。

「2人の関係は何なんだろうか?」

時々考えていた。

「もうやめとけや。」

「忘れるなら今しかないぞ。」

酔いの廻ったカズマとヨッチが言った。

果たして忘れることが出来るのか、自問自答する。

いくらお酒に酔っていても、ヨッチもカズマもヒカルの性格はよく知っている。

これ以上、傷が深くならないうちにと、ヒカルのことを気遣ってくれているのもよく判るのである。

「忘れたほうがいいのかな・・・やっぱり。」

「忘れろや、他に女はたくさんいるんやぞ。」

酔っ払いの男2人が、ヒカルを攻めた。

そのとき、それまで沈黙を通してきたトシオが口を開いたのである。

「別に無理して忘れる必要はないだろう。好きならそれでいいんじゃないの。」

まさに救いの一言だった。

「アカリのことが好きやで、もう少し様子を見るわ。」

カズマとヨッチに告げたヒカルである。

「好きにしろや。」

「おお、好きにさせてもらうわ。」

お酒の進む4人であった。

同級生とはいいものである。

                                       →「2人の夢」をお楽しみに。  1/12更新

                                       ホタル:男4人の飲み会で、ヒカルはアカリに対しての
                                           気持ちを再確認することができましたね。
                                           そのことが、次の話の展開にどう影響してくるのか
                                           見所ですね!

ふたりの絆⑳

ふたりの絆⑳

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-12

CC BY-NC-ND
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