かざしことば

ぼくをきみに差し上げるのは大変おこがましいことだ。
きみはきみで親から名前を与えられて、言葉を与えられるうちに喋ることができるようになった。
その中で様々なことを考え、いろいろなことを選択してきた。
だから、きみがぼくを選ぶこともきみの自由だ。
でも、ぼくがきみを褒めることもぼくの自由だ。
きみは時に自己嫌悪に陥っている。
一度悩みを聞く機会があったはずだが、それを逃したのはどちらの選択か。
ぼくは素直になれない。
だから、真っすぐにきみを見ることも褒めることもできない。
それもまたぼくの自由だ。
自分がわがままであるということにきみは悩んでいる。
そのわがままの意味がわからず、ぼくは問うてみたが、理解できなかった。
理解することを選んだはずだが、少ない文字数では足りない。
だから、何度も飲みに誘ったのだが、きみは断る。
それもまたきみの選択で、きみのわがままだ。
それにいつも僕から誘うのもぼくの選択だが、僕のわがままをきみに申し上げたい。
ぼくはきみのかざしことばになりたい。

かざしことば

初出:即興ゴルコンダ

かざしことば

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-11

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