【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 11(4200字)

まどか続き12


4人はワルプルギスの夜と何十回か戦った。
明かに24時間以上経っていたが、ハチべえは何も言わなかった。
そして、
全員が生き残る形で何回か勝つことができた。
誰かが生き残る形で十何回か勝つことができた。
やがてもうこれ以上勝率が上がらないことを感じると、
4人はハチべえに、自分たちを第9世界に送るよう頼んだ。
「本当にいいんだね?」
ハチべえの問いに4人がうなずく。
「わかった。・・君たちは本当に訳が解らないけど・・僕は君たちのこと、嫌いじゃないよ。」
ハチべえはそう言い、命令する。
「特権命令:第9世界への送魂。モード、再開。
  対象者、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか、暁美ほむら。時空間座標、9SGJ4512。」
「・・特権命令実行確認。」
マサルの声。
「健闘を祈る。・・さよなら。」
ハチべえがつぶやく。
「特権命令:実行確認。OK。」

不意に重力も体の感覚も無くなり、周囲が無になる。
それらが戻ってきた時には、ほむら以外の3人は海沿いの開発予定地区にいた。
夜。周囲1キロに人はいない。

「それじゃ、予定通りに。」
そこから少し離れた港にいるほむらからの魔力通信。

ほむらは釣り船を見つけ、それに乗っていた男に言う。
「ちょっと沖合まで乗せていてもらえる。」
男は無表情にうなずいた。

30分後、波を切り分けて進む船の前方に、黒々とした大きな船が見え始める。
イージス2システムを搭載した最新鋭護衛艦、ゆうほうだった。
ほむらは翼を広げ、釣り船を飛び立った。
数秒で最高速度に達する。
はるか後ろでは、正気に戻った船長が慌てて船の針路を変えていた。
念のため結界を展開したが、迎撃される気配はなかった。
速度を落とし、護衛艦の甲板に降り立つ。
・・すぐに自動小銃をかかえた兵士に取り囲まれる。
「何者だ!」
「こんなことを言う柄ではないのだけれど。」
兵士の質問を無視してほむらは言う
「あなたたち、私の魅力に悩殺されなさい。」
「何?一体何を・・」
「・・テンプテーション、全開。」
ほむらはつぶやいた。
即座に、護衛艦の全域がほむらの支配下に置かれる。
「ちょうどいいわ。私を戦闘指揮所に案内しなさい。」
「イエス、マーム。」
「・・護衛艦の掌握に成功した。」
ほむらは魔力通信で3人に連絡する。


****


開発予定地区。
「了解。・・作戦を開始する。」
杏子は応えると、ハチべえから預かった"神を具現化するプログラム"の入ったCD を空に放り投げた。
・・CD はガチャガチャと機械音を発し、自らCD プレイヤーを生み出す。
「実体化する対象となる概念を音声入力して下さい。」
CD プレイヤーからの問い。
「まどかを・・この世界の神となった鹿目まどかをここに。」
杏子が言う。
「・・情報取得中・・概念再構築・・」
もどかしい時間。
「・・実体化準備・・」
シミュレーションよりずっと長い時間がかかったが、その時は訪れた。
「準備完了」
雷鳴のような轟音と共に、まどかが3人の前に現れた。
「実体化完了」
「鹿目さん!」
「まどか!」
マミとさやかが駆け寄る。
「あれ?・・ここは・・」
「来たぞ。」
杏子が鋭く叫ぶ。
暗い空の上、ワルプルギスの夜が浮かんでいた。
「鹿目さん・・あとでゆっくり話しましょう。」
マミはそう言って、リボンを構えステップを踏む。
「まどか、こっちだ。」
杏子がまどかの手をとり、安全な位置まで下がらせるためにマミから離れた。
「踊りましょう。パーティは始まったばかり。」
やがてマミのリボンに光が満ちる。
「・・ティロ・イニツィアーレ!」
マミの手から伸びた無数のリボンが、ワルプルギスの夜にからみつき、がんじがらめにした。
辺りにワルプルギスの夜の悲鳴のような、笑い声のような咆哮が響き渡る。
「捕獲完了。」
マミがつぶやく。
ワルプルギスの夜が周囲に発した炎。
最初はゆっくりと。やがて勢いをもってマミにおそいかかる。
「やらせない。」
さやかがその前に飛び出し、すべての炎を切り裂いた。


****


第8世界、宇宙船内での作戦会議。
それぞれの最大威力の攻撃、合わせ技の攻撃で戦う戦いを何度か繰り返したが・・
勝てるかどうかは運だった。
高い威力の攻撃を連続して当てれば勝てるが、大抵の場合はうまくいかなかった。
ワルプルギスの夜は防御結界をまとっており、ハンパな攻撃は通らない。
それなりの威力を持つ攻撃を仕掛けるしかないが、
ワルプルギスの夜は素早く、そのような攻撃を抜け目なくかわした。
そして、魔法少女にとってそのような攻撃は魔力消費が激しい。戦況は著しく不利になった。

一番最初に考えたのは、ほむらの能力で時間を止め、その間に3人の合わせ技を当てる案だった。
・・だが、1撃では仕留められず、3度目、4度目の時間停止は無効化された。
どうやらワルプルギスの夜には、同じ魔法効果は数回しか発動しないらしい。
ほむらとワルプルギスの夜の戦いで、
魔力が残っているにもかかわらず時間停止が発動しなかったのも同じ理由だと思われた。

「まずは奴の足を止めよう。」
杏子が提案し、マミがその役目を負った。
「その後に私が結界を破る。あとはさやかとほむらが攻撃してくれ。1撃で決めるんだ。」
杏子が言う。

しかし、さやかとほむらとの攻撃では、結界が無くとも1撃で仕留めることはできなかった。

「ミサイルを使うってのは?」
杏子の提案にほむらがうなづく。
「いいと思う。・・基地からミサイルを借りてくるわ。」

しかし、ミサイルでも1撃で仕留めることはできず、
複数回発射しようとしても、3度目、4度目には発射できなくなった。

「ミサイルは私の魔力で管制しているから、それを無効化されているのだと思う。」
ほむらが言う。
「要は魔力を使わなければいいのか・・・。」
杏子が考えこむ。
「管制装置も借りてくるわ。」
「・・いや、それよりも。」


****


第9世界。
護衛艦ゆうほうの戦闘指揮所。
大勢の兵士が、たくさんのディスプレイに向かっている。
彼らに向かって、ほむらが命令する。
「対艦ミサイル発射用意。」
「イエス、マーム。ハープーン2対艦ミサイルの発射準備を開始します。」
「目標設定、藤見原市臨海開発予定地区。」
ディスプレイに藤見原市周辺の地図が表示され、一点が赤く輝いた。


****


開発予定地区。
「・・お前を倒すために地獄から戻ってきた。」
杏子の槍が紅蓮の炎に包まれる。
「佐倉流火葬術・・絶炎」
杏子はワルプルギスの夜との間合いを詰めると、1つめの結界を切り裂いた。
ワルプルギスの夜は性質の違う、複数の結界で身を守っていた。
その性質を読み取り、解除していく。
魔力無効化の対象にはならなかったが、その発動には膨大な魔力を必要とした。
ワルプルギスの夜の攻撃・・無数の黒い槍・・をさやかが弾く。
魔力を防御に回す余裕はなく、さやかが頼りだった。
「いくらでもこい!」


****


護衛艦ゆうほう。
「発射準備完了。目標地点の映像、出ます。」
兵士が告げる。
ディスプレイにワルプルギスの夜の不気味な形状が表示される。
「1番、2番を即時発射。10秒後に3番、4番を発射。」
「イエス、マーム。」
兵士がキーボードを操作する。

垂直発射システムから射出されたミサイルはロケットエンジンに点火、
まさにロケットのように夜空に輝き、弧を描いて藤見原市の方角に飛んでいった。
3番、4番も後に続く。
「1番、2番の着弾まであと57秒・・」


****


開発予定地区。
ワルプルギスの夜が出現させた車輪が杏子とさやかに襲いかかる・・
が、さやかが出現させたレールにことごとく弾かれる。
「4つ!」
杏子が4つ目の結界を破る。
ワルプルギスの夜の周りに、たくさんのおもちゃの兵隊が現れる。
その銃口が狙うのはマミだった。
「マミさん!」
マミは避けたが、全てはかわせなかった。
「くっ・・」
「5つ!」
「着弾まであと30秒。」
ほむらの声。

辺りが一瞬静まりかえる。
やがて、何かが空気を切り裂く音が響き始める。
・・夜空に巨大なビル。
「・・私の本気を見せてやる。・・円環の理に導かれし鋼鉄の軌道・・」
ビルがゆっくりと杏子とさやかに向かって動き出す。
「始まりも終わりもなく永遠に・・山手線アターッック!」
出現した緑色の電車がビルとぶつかり、双方が粉々に打ち砕かれた。
「あと5秒!」
「7つ!」
何かが潰れて崩れるような、蒸気が噴出するような鈍い音が響き渡る。
ワルプルギスの夜の結界が全て解除されたのだ。
「さやか!」
「杏子!」
さやかが防御結界を展開し、杏子を抱えてワルプルギスの夜から離れるのとほぼ同時に、ミサイルが着弾する。
一瞬の後に爆発、ワルプルギスの夜が炎に包まれた。
数秒後にさらにミサイルが着弾、
ワルプルギスの夜は崩壊し、その破片は炎の尾を引いて地上に落下した。

マミの近くに2人が降り立つ。
3人はワルプルギスの夜の攻撃に備えて身構えた・・が、
ごう・・と圧力に満ちた風が吹き抜け、ワルプルギスの夜の破片すら消え失せた。
「勝った・・の?」
マミがつぶやく。
「ほむら・・作戦完了だ。」
杏子が言う。
「了解。引き上げる。」
ほむらからの短い返信。


****


開発予定地区の外れにまどかは立っていた。
「みんな・・なんでこんなところに・・」
「迎えに来たに決まってるだろ。」
杏子が応える。
「だって・・」
「いやー死んでも死にきれなかったって感じ?」
さやかが言う。
「そうそう。ちょっと未練が、ね。」
そう言ったマミの横に、ほむらが降り立つ。
「まどか・・」
ほむらは涙ぐんだ声で言う。
「ほむらちゃん・・」
しかしほむらは涙を拭い
「まどか。・・帰りましょう。」
泣き笑いの顔でそう言った。
この世界に来たときと同じように、5人の周囲が無になる。
やがて5人の中から、第9世界と、宇宙船での出来事の記憶が消え去った。


****


・・5人には知る由もなかったが、
護衛艦から対艦ミサイルが発射されたことについては、完全に情報統制がなされた。
軍内部でさえ、公式には発射装置の故障として扱われ、
非公式には・・まれに起こる「正体不明の敵との交戦記録」として極秘裏に処理された。

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 11(4200字)

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 11(4200字)

ワルプルギスの夜との戦い。

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-29

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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