冬馬君の夏休み
「夏休みが始まる」
冬馬君の夏休み
『夏休みが始まる』
「ただいま」冬馬君は家に帰ると嬉しそうに叫んだ
明日から小学校は夏休みに入るからだ
冬馬君は小学校三年生。
この休みの前のなんとも言えないワクワクする気持ち
そして冬馬君を更に喜ばせる事は、
同い年で従兄弟の大喜が今日の夜から泊りにくるのだ。
大喜は冬馬君の家から歩いて三十分くらいの所に住んでいる
しかし小学校はお互い違う学校だ。
早く大喜こないかな、何して遊ぼう
冬馬君は待ちきれなかった
その時となりの部屋からお母さんの正子が言った
「今日の夜台風来て天気荒れるかも知れないんだって」
冬馬君は一瞬大喜が来れないんじゃないかと心配したが、
次の瞬間には台風が来て荒れてる中、部屋で遊ぶのにワクワクした。
冬馬君は大喜の家に電話した
「もしもし、大喜のママ 大喜に代わって」 大喜はちょうど帰ってきた所だった。
「もしもし大喜、今日夜台風くるみたいだよワクワクするね」 2人とも喜んでいた。
「今から支度して向かうよ」と大喜も嬉しそう。
「暇だから歩いてそっち向かおうかな」
冬馬君は待ち切れなくなり思いついた。
「分かった待ってるよ」
冬馬君は暑かったので、アイスを食べてから向かう事にした。
夏はサッパリ味のアイスに限るソーダ味のアイスを食べながら思った
「いってきま~す」
雨は降っていなかったが空は少し暗くなり、いかにも荒れそうな天気だった
明日から一ヶ月も休みだし本当に最高だな。夏休みにやりたい事や行きたいとこなどが頭をめぐっていた
冬馬君はあまり学校が好きではなかった 暫くの間でも学校というものから解放されるようで嬉しかった。
前に同じクラスの人達がいた、
あまり仲の良い人達ではなかった冬馬君は少し気まずくなり会わない様に違う道を通った。
そして大喜の家に着いた。
「いらっしゃい」大喜のママが出迎えてくれた。
二階に大喜いるから、あがって!
「おじゃまします」
部屋を覗くと大喜は泊りにいく身支度をしている
「よっ、冬馬ついに始まったな」
「昨日の、夜からワクワクしてたよ」
2人は支度をしながら話たりしていて
気付けば17時になっていた
「そろそろうち行こうか」冬馬君が言った
その時下から大喜のお母さんが
「あんたたち、行く時言って車で送ってあげるよ」
「ハーイ」二人は返事をした。
車に乗りこんで向かっている途中、雨がポツポツ降り始めた
そして二人は冬場君のうちに着いた
空は真っ暗だが、二人の気分は最高ワクワク
ウキウキ
待ちに待った夏休みがいよいよ始まった。
「恋愛を助けるの巻」
「恋愛を助けるの巻」
昨日の夜の天気が嘘のように空は青色になり外では蝉が鳴いている
大喜が目を覚ました
「冬馬下に行こうよ」
冬馬君は眠かったので無視して寝ていた 大喜は目を覚まして眠くないので
下の階に降りて行った
時間は8時20分
隆はもう仕事に向かい
正子は二度寝していた。
「あーこの瞬間たまらん」
父母の部屋も二階にあり
二階は全部で三部屋になっている
冬馬君の部屋の奥側が父母の部屋になっていて冬馬君の部屋の向かいに一つ和室がある
冬馬君は暫く寝ていたが、朝のアニメがやってるのを思い出し下に降りて行った。
「大喜もう起きてたのか」
二人は暫くテレビを観て、台所においてあったパンを食べて外に飛び出した
「大喜近くの川に行こうよ」
「良いね」
二人は歩いて10分くらいの所にある川に向かった
すると誰かが冬馬君の肩をたたいた
「何処いくの?」
それは同じクラスの親友の慎司であった
三人は顔なじみでお互いに良く遊ぶ仲なのだ
慎司はひょうきんで面白い奴だ
「川に行くんだよ、一緒に行く?」
冬馬君は言った
三人で川に向かう事になった
川に着くと三人は履いていたサンダルを脱ぎ、足を浸けて遊び始めた
水の中はとても気持ちよく
夏休みの始まった初日だということもあり気持は最高だった
まだ一ヶ月も休みなんだ!!
みんな水遊びに夢中になっていた
川の中の生き物を探したり
石を投げたり
今の瞬間瞬間を思いっきり感じていた
「今何時くらいなんだろうね?」
お腹がすいたのか大喜が言った
慎司はポケットから時計をだし時間をみた 「13時20分だよ」
思ったより時間はたっていた
「あの人面白いよ」
川辺に座っている男の人を指さして
慎司が言った
一人の男の人がうつむいて体育座りをして川辺に座っていたのである。
その男の人の携帯電話がなりなにやら男は話始めた
三人は気になって近くに行った
話聞いちゃおうぜ そんな好奇心を三人持っていた。
どうやら女性と話してるみたいだ
話をきいているとどうやらその人は話相手の女性がすきなようなのだが、それを伝えたいけど言えないそんな感じ ああ気持ちを伝えられないんだと冬馬君は思った
慎司は「何?どうしたの?」
全く分かってない様子だった
大喜も冬馬君と同じように理解していた
電話が終わった、男はため息をついて川をぼーっと眺めていた
冬馬君は急に立ち上がり
そして彼に話しかけたのである
「好きなら言っちゃえば 相手の人は絶対気付いてるよ」
何故そんな事を言ったのか分からない
ただ気付いたらこうしていたのである。
男はハッとして自分が急にそんな事を言われているのに驚いた
「子供には分からないよ、言った後ふられてもう会えないとか考えると恐くなっちゃうのさ だらしがないだろ」
男は笑った
しかし見ず知らずの自分に話しかけてくれた事が嬉しかったようだった。
「それはそれだよ、言わないでモヤモヤしてるなら気持ち伝えちゃったほうがいいよ」大喜も続けて言った
慎司も「そうだ そうだ」と言っていたが何のこっちゃ分かってないと冬馬君は思った。
「子供に心配されるなんて、ええいっくそっ」
彼は急に電話をした
「もしもし すっ すっ 好きだ」
間髪入れずに彼は叫んだ
シーンと全てが止まったような、なんとも不思議な一瞬にある 永遠 今にある永遠 とでも言うのだろうか?
僕達は息をのんだ
慎司はやっと理解したみたいだった
彼は直後にこう言った
「そう ありがとう」
声のトーンで子供ながらにも僕ら三人は結果がどうだったのか理解した。
彼の目には涙が流れていた
とても綺麗な涙だった
僕達は自分達のせいだという後悔の思いがあった
その男は僕らに向かって「ちょっと待ってて」と言って走って何処かに行ってしまった
すぐに戻ってきた、手には三つお菓子を持っている コンビニで買ってきたらしい
「結果は振られちやったけど自分の気持ちを伝える事がきちんと出来た 自分の気持ちから逃げずに向き合えた、君たちのおかげだ ありがとう」
そう言って彼は僕らにお菓子をくれて歩きだした 。
瞳の中には今にも溢れんばかりの美しいガラス玉が綺麗に揺れ動いている。
でもその瞳はしっかりと先を見据えて歩きだしているように見えた
冬馬君には目の前に居る人がさっきと違う人の様に思えた
きっと全く別人なんだ
不思議とそう感じた。
「何だかあったかい気持ちになったね」慎司が言った
「僕らも言って良かったね」と大喜
三人の中に何とも言えぬあったかい感覚が芽生えた
この気持ちを三人で共有出来てる事も何より嬉しかった。
「さあ そろそろ帰ろうか 」
冬馬君は言った
心があったかくなってるのが嬉しくて
外の暑さは全く気にならなかった。
みんなは仲良く家に向かった
心ポカポカ夏の午後
続く
「夏の嵐の日」
『夏の嵐の日』
二人は冬馬君のうちに着いた
「ただいまー」
雨はまだポツポツ降り始めたくらいだ
「お邪魔しまーす」大喜はこれから冬馬君の家に泊まれる事が嬉しくはしゃいでいる
二人は二階の冬馬君の部屋に行った
「明日から夏休みだし最高だね」なんともご機嫌冬馬君である
「最高だ」と大喜
これから休みが始まるという前日などは妙に休みに入ってる時よりも嬉しいものである
二人は部屋越しに外を見た
「真っ暗だよ外、こりゃ荒れるね」窓の外を見た大喜はビックリ
下の階から大喜のお母さんが言った
「私帰るからちゃんと良い子にしてるのよじゃよろしくね」
大喜のお母さんは帰って行った。
二人は下の階にテレビアニメをみに降りて行き 夏休みの始まりのウキウキの気分とともにテレビを楽しんでいた。
18時過ぎに玄関のチャイムがなった
「ただいま」
冬馬君のお父さんが帰ってきた
「雨強くなってきたよ、良い時に帰ってこれたよ」父の隆は言った
隆は部屋に入って来て子供達をみた
「大喜いらっしゃい、良いなお前達は明日から夏休みか~」笑顔で言った
「うん、そうだよ」
子供達はテレビに夢中である
「ご飯出来たわよ!みんなでそっちで食べるから運ぶの手伝って」母正子が言った
台所にはテレビがないからリビングで皆で食べる、これは何も今日に限ってではなく毎日こうしてるのだ。
子供達と隆は行ったり来たりオカズを運んでいく
隆はさっそく冷蔵庫からビールをとりだしさあ始めますかと言わんばかり嬉しそうだ
皆でご飯を食べている
依然子供達はテレビに夢中である
ザザーッ
外の雨の音が激しくなってきた
隆 「雨凄いな」
正子「今日パパはやくて良かったね」
子供達が観ていたアニメが終わり隆がチャンネルを回すと夏によくやっている幽霊などの恐い番組がやっていた
ちょうど始まった所みたいだ
「観たい観たい」子供達は声を揃えて言った
正子「寝れなくなっても知らないわよ」
外の嵐と怖い番組まさにベストマッチであった
子供達は布団にくるまりながら怖い番組を観ている
ザザーッ ザザーッ
ガタ ガタガタ ザーッ ガタッ
風の勢いで雨戸が揺れ
雨の音もいっそう激しくなってきている 冬馬君はこの状況を楽しんでいた
大喜「いやー今の話恐かったね冬馬」
冬馬「全然恐くないよ」布団をかぶりながら言った
何故だろう布団や毛布などにくるまって観る不思議な心地良さ
番組も終わり二人はお風呂に入った
そして眠るために二階に向った。
雨は依然強いままである
布団に入ってもちろん二人は眠るはずもない、二人は布団の中で怖い話でもしようと盛り上がっていた
大喜が俺トイレに言ってくるよと下の階に向った
冬馬君はしめたおどかしてやろうと
大喜がおりていってから暫くして下に向った。
トイレの前で驚かす為に隠れてる間大喜が驚く顔を想像しては笑いがこみあげてきた
ジャー さあっ出て来た
「わあーーーーっ」
「ぎゃーーーーー」
トイレの中でひっくりかえってるのは
父だった
「やばい」冬馬は二階に走って逃げていった
大喜は誰かがトイレを使っていたので台所にいたのだった
二階の布団の中で二人は大爆笑
二人は気付けば寝てしまっていた
雨も二人と仲良く呼吸し合っているかのように静かになった いよいよ夏休みが始まる。
「みんな泊まるの巻」
「みんな泊まるの巻」
三人は川辺からうちに向かって歩いていた。
「良かったら慎司もうち来なよ」冬馬君が言った。
「悪いよ」
慎司は親の前では結構気を遣うのだ。
「せっかくの夏休みだし良いじゃん」大喜も誘った。
「じゃ行かせてもらう」
慎司は本当はまだみんなで遊べるのが嬉しくてしょうがなかった。
みんなで冬馬君のうちに向かう事に
「ただいまー」
「慎司も連れて来たよ」
正子「あらいらっしゃいどうぞ」
「お邪魔しまーす」
正子は三人の足が汚れてるのをみて川に入って遊んでたのに気付いた
正子「待った 二階にあがる前にシャワーであしだけ洗ってね」
シャワーで足を洗い
みんなは二階の冬馬君の部屋に向かった
部屋ではさっきの川辺などの話で盛り上がっている。
下から正子が「みんなお昼食べてないでしょ支度出来たから食べに来なさい」と言った
いつものようにリビングに行きクーラーを付け昼飯はソウメンだった。
冬馬「いやー夏のクーラーのきいた すずしい部屋は最高だ 慎司は夏どっか行くの?」
慎司「うちのお父さんの実家の群馬に行くよ」
大喜「良いねーそれ」
慎司「そっちは?」
冬馬「まだあんまりきいてないよどっかに行くとは思うんだけど」
涼しい部屋が心地良く川で遊んだ疲れもあって暫くするとみんな寝てしまっていた
外では蝉の大合唱があちらこちらから聞こえてくる。
冬馬君は夢を見ていた知らないおじいさんと話ていた 何処か懐かしい何とも不思議な夢だった。
夢は不思議だ一体何故みるんだろう?
本当はこの瞬間こそ夢なんじゃないか何とも不思議な感覚が夢から覚めた後一瞬感じられた しかし眠かったのでまた寝た、このまた寝れる瞬間幸せな気持になった。また眠れる 学校もない 冬馬君は勝利の笑みを浮かべまた眠りについた
そして起きるとすでに2人は目を覚ましていた 時刻をみると17時をちょっと過ぎたところだ
「そろそろ僕帰るよ」慎司が言った。
それをきいていた正子が「せっかくだから泊まって行ったら?」
慎司は一瞬嬉しくて飛び跳ねそうになったが持ち前の遠慮性格が「悪いですよ」と言った
勿論、冬馬と大喜が泊まってってーと蝉にも負けない大合唱
正子「お母さんに電話してきいてごらんなさい」
慎司はすぐに電話をしに行った
親達が電話を通して話ている
交渉成立
慎司は泊まる事になった
三人は手を繋いで
「やった~やったー」
と飛び跳ねている
かくして今日の冬馬家はいっそう賑やかになるのだった
じゃ今から車で夕飯のオカズ買いに買い物行くよ 正子は早速車のキーを手にした
子供達はますますおおはしゃぎ
夏の夕暮れ時
買い物出発~
近くのショッピングセンターに向かった
子供達は車の中でアニメの歌を色々歌っている
冬馬君は外の景色を眺めた 何とも心地良かった 皆がうちに泊まるという嬉しさもあったからかも知れない
今眺めてる景色を一生忘れないだろうなそんな感じがした。
気分は始まったばかりの夏休みということもあり更にウキウキだ。
車内は子供達の歌で盛り上がっていた
そうこうしてるうちに到着
正子は食品売り場に向かい
子供達は二階にあるゲームセンターに向かった。
しかしここで一つの事件が起こる事をその時はまだ誰も知る由も無かった
5に続く
『ゲームセンターの事件』
「ゲームセンターの事件」
三人はゲームセンターに行き
コインのゲームなどをして遊んでいた。
すると慎司が「おい見てよこれ、一つの機械が空いてあって上からコインたくさん取れるよ」
冬馬君も凄い良いねと言って二人でそのコインを掴んでとって、コインゲームをしていた、二人は悪気はなくただコインがたくさんとれるのが嬉しくとって遊んでいた 大喜は一人違う所でゲームをしていてた。
二人が、コインを掴んではとっている時突然後ろから「あんた達なにやってるの」 と声がした。
二人はビックリして振り返った
「ここからコイン盗ってゲームして泥棒 お店の人呼んで来るわ」
ゲームコーナーに遊びに来ていたおばさんらしかった
冬馬君は心臓の音がバクバクするのを感じたどうしよう
慎司の顔を見ても青ざめていた
言い知れぬ不安に包まれる
そのおばさんはお店のスタッフを呼んで来て、この子達がここからコイン盗って遊んでいたんですとスタッフに説明した。
冬馬君の足はガクガク震えている
とても嫌な気持ちになり
怒鳴られ怒られるんだろう 二人は覚悟した
しかし、スタッフの人は優しい人だった
悪意を持ってやっていたわけではないというのが見て分かったらしく怒鳴って怒るような事はしなかった。
「今日は警察に言うような事はしない けど二度としちゃいけないよ」
軽く注意されるだけですんだ
おばさんはキツイ顔をして腕を組んで二人を見ていた まるで地獄の門番のよう。
大喜は二人が怒られてるのに気付いて
後ろで見ている。
二人は解放され
恥ずかしいのと嫌な気持ちで振り返らずに足早にゲームコーナーから去った
「どうしたの?」と大喜
慎司がなにがあったのかを説明した。
三人は食料品売り場の方に向かい
正子が買い物をしているのが目にはいった。
勿論三人はその事があったことを正子には黙っていた。
冬馬君はさっきのおばさんにまた会うんじゃないかと恐れて辺りをキョロキョロ見まわした。
冬馬君は少し落ち込んでいる
それをみて大喜がまあ気にしないで 大丈夫だよと元気づけてくれた。
慎司はもうあまり気にしていないようだ。
買い物を終えて 駐車場に戻り
冬馬君はさっきのおばさんがいないか辺りをまたキョロキョロ気にしていた。
車に乗り込み家へと出発した
車の中で冬馬君はさっきの事を考えていた まあ過ぎた事だもう良いやと何故か慎司を見て思った。
いつまでも過ぎた事にとらわれて、この楽しい瞬間を無駄にするのがもったいないや
冬馬君は外の景色を車からぼんやり眺めていた。
車は家に着き 家には父の隆がすでに仕事から帰ってきていた
「みんなに良い報せがあるよ」
明後日キャンプに行こう、もちろんみんなで!!
慎司が良いんですか?
「もちろん」
やったーみんな嬉しくて飛び跳ねた
ご飯を食べ 三人でお風呂に入って大はしゃぎだった 一人ではいるお風呂よりよっぽど面白
い、賑やかなお風呂タイム。
夜の九時には三人は布団に入っていた
もちろんすぐには寝ないで話したりおもちゃで遊んだりした。
部屋の中はじきに静かになり
みんな疲れたのか気付けば寝てしまっている。
冬馬君は起きていた ゲームコーナーでの事件を思いだした。
冬馬君が今不思議に思う事は慎司は全く気にしていない事だった
同じに怒られたけど人によって受け取りかたが違うんだなぁと今更ながらに思った。
自分は人に言われたりする事を気にしてしまうけど慎司はあまり気にしないんだな
冬馬君はそんな慎司を羨ましくも思った。
冬馬君は明後日のキャンプなどを考えながら眠りについた
時刻はちょうど日付の変わる頃
蒸暑い夏の夜だった。
つづく
『キャンプ前夜の夜』
朝目を覚ますと二人はまだ寝ている
どうやらまだ朝早いらしい、時計をみると5時だった。
冬馬君は二人が気持ちよさそうに眠るのをみて また目をつむり眠りについた。
明日はキャンプに行くんだと考えたら気分は更にワクワクしてきた。
しかも、夏休みは始まったばかり最高の時だ。
ミーン ミン ミン ミーン
外では朝からセミが元気に鳴いている
騒がしくもあるけれど夏のセミの鳴き声は大好きであった。
ああ今年も夏が来たんだな、セミの合唱は冬馬君をそんな気分にさせる。
冬馬君にとって夏は最も好きな季節であった もしかしたら休みが一番長い季節だからかもしれない
でも、それ以上に夏の雰囲気が好きだった
海水浴や祭りに花火大会
どれも冬馬君をワクワクさせるのに充分すぎる程の賑わいになる。
三人共9時にはみんな目を覚ましていた
今は布団の上で寝ながらキャンプのしおりをつくって遊んでいる
冬馬「持ち物で必要なの何かな?」
大喜「うーん 海水パンツ」
明日行くキャンプ場は去年も冬馬君と大喜は行った事があって、目の前には川があるのだった、テントを張ってそこで一泊過ごすのである。
みんなはしおりに海水パンツと書いた
慎司が「夜テントの中でやるトランプとかどう?」
良いね
みんなはどんどん盛り上がっていった。
この旅に行く前の支度してる時はなんとも気分をワクワクさせてくれる、この時が冬馬君はとても大好きだった。
しおりが出来上がる頃にはお昼近くになっていた
みんなで下の階に行き朝食終えた後
慎司は家の人に報告も兼ねて着替えや しおりに書いたもの水着などをとりに一回家に帰っていった。
大喜は冬馬君の家に荷物は大体あったので家には帰らず残った。
明日雨降らない様にテルテル坊主でもつくって遊ぼう二人は終始テルテル坊主づくりに没頭していた。
七時過ぎに慎司が戻ってきた遠慮してか夕飯はうちで食べてきたみたいだ。
隆は枝豆にビールで一杯やっている
大人が毎回美味しそうに飲んでるビールが気になり以前一口だけと言って冬馬君は貰って飲ん だ。
あんな不味いもの大人は
どうして飲むんだろうと冬馬君は思った 隆にきくと「味が好きな人ももちろんだけど中には酔いたいから飲んだりその雰囲気が好きで飲む人もいるんじゃない」と笑っていた。
「明日は、はやいからみんな今日は早く寝なきゃ駄目だよ」と正子
九時には布団に入り 明日は6時に出発する感じでいるらしい。
子供達はもちろんみんなでのキャンプが嬉しく、なかなか寝つけない
最初は静かに布団の中で話していたがついつい盛り上がってくると次第に声が大きくなってしまった。
「いい加減に寝なさい」
下から正子に怒られた
「やばい」三人はまだ小声でしゃべっていたが。
だんだんと子供達は夢の世界に入っていった。
窓には明日の晴れを祈るテルテル坊主が風に揺られ気持ちよさそうに踊っていた。
明日のキャンプ嬉しくてなかなか寝付けない
冬馬君であった。
つづく
『キャンプに出発』
窓のカーテン越しから光が
漏れていた いよいよキャンプに
出発の日。
昨日のテルテル坊主のおかげか天気は快晴であった
おもしろいもので学校などの時は起こされても起きないのに
こういう時は起こされる前にでも目が覚めてしまうのだった
子供達は着替え始め
その頃には大人達はもうキャンプの道具を車に積み始めていた。
みんなで軽く朝食をすませいざ出発
車の中、冬馬君は自分の聴きたいCDを持ってきたのでかけてもらった
もちろんこれは昨日のしおりにかいていた アニメのCD
車の中で子供達はまたも歌っている
隆も聴いた事があったのか知ってるとこだけ一緒にくちずさみご機嫌だ。
車の中は楽園にいるかの如く賑やかでみな心から今を楽しんでいた
冬馬君はずっとこういう時だけが続けば良いのにななんて思ったりもした
車は高速道路に入り
子供達はしりとりなどをして遊んでいる。
道は空いてるしこのぶんじゃ早くつきそうだ
キャンプ場はすいてるかな?
景色はだんだん変わりはじめ
高速から見える景色は山景色になっていた
日本は広いなぁ冬馬君はそんな事を思ったりしながら外を眺めてウキウキしている。
ここに来るまで沢山の家があり、すべての家の中でみなそれぞれの生活をしてるんだなぁと思うとなんだか感動した。
キャンプ場に近づいたみたいだ
車が高速を降りた。
キャンプ場に着く前にスーパー寄って色々食料買うぞ と隆。
辺りはもう自分達の住んでる所とは違う景色
周りは静かで 山に囲まれ、自分たちの近所と違い家が連なって並んでいるのではなく
ポツポツ並んでいる
そしてスーパーに着いた
大喜「去年もこのスーパー来たね」
正子「よく覚えてたわね」
スーパーの中は涼しく
子供達はすぐさまお菓子売り場に直行
冬馬君は、はっと思い出した
大好物のスイカを買わなきゃ
親達のもとに言ってスイカ買ってと言いに言った。
隆はきっと言われるだろうと思ったのか笑って、もうカゴに入ってるよと言った。
買い物を終えて車へ
慎司が空気がとっても美味しいですと親に言っていた
車はキャンプ場に向かい出発。もう辺りは山道という感じになり先程まで目にした民家もなくなっていた。
もう山の中だ
慎司が「夜はまっくらで怖そうだね」
冬馬君と大喜もそれをきいてテントの中で夜は怖い話しようと盛り上がっていた
着いたぞ
キャンプ場に到着
さてとテントを張って準備にとりかかるぞ
おーっ!!!!!
一同一致団結の返事をした
森のセミ達の大歓迎 大合唱に向かえられ
いよいよキャンプの始まりだ。
つづく
『キャンプ場での出会い』
みんなはそれぞれやる事を分担した
大喜は川の中に石などで囲いをつくりスイカなどを冷やす場所を作っている。
冬馬君と慎司は隆の手伝いでテントづくりをして、正子は料理などの準備をしている。
周りはあまり人がいなかった
キャンプ場といってもあまり知られていないのか結構穴場な場所であった。
ただ左に一組家族が来ている
お父さん、お母さんそれに一人同い年くらいの女の子、後女の子の弟であろう小さい男の子がいた。
慎司は必死にテントづくりを手伝っている
一生懸命だ。
大喜を見ると川で魚でも探してるのか遊んでいる
冬馬君も寝やすい寝床を作る為一生懸命やる事にした、親のテントと子供達のテント二つたてる予定でいた
森の中は何て気持ちが良いんだろう
虫の鳴き声に川のせせらぎ
冬馬君はまだまだ夏休みが始まったばかりなのも思い出し更に気分が高揚していた。
ああ最高だな、この休みが始まったばかりの頃の旅行最高の気分だ。
それに自然の中なんだか落ちつくなぁ 目をつぶってしばし山の空気を存分に味わって
生きてて良かったそんなことを思ったりしてニッコリ笑った。
おいそこ持ってくれ
隆の声でハッと我に返った
「分かった」
しかし今日は暑いな、最高のキャンプ日和だ 隆は言った。
冬馬君は休憩といわんばかりに大喜の方に向かった 魚いる?
うんいるよ、水が透き通ってるよ
足を水につけてる大喜の指先までハッキリ見えていた ああ水が冷たくて気持ちいい。
なんて冷たい水、水も本当に透き通っている。
「本当だ!綺麗な水」
川にはもうスイカが冷やしてあった
冬馬君は水に浸かってないスイカの部分に水をかけては冷やして満足していた
今度は大喜がテントづくりに興味がでたのかそちらに向かった
隣の家族の声がした
向こうも楽しんでるみたいだ。
冬馬君は隣の家族が気になったのか
偵察だと言わんばかりにそちらの方に何食わぬ顔して向かった
近くまで来ると気まづさもあり川にさも用事があるように装って歩いていた
すると こんにちわ これどうぞ
お母さんらしき人がメロンをくれた
どうもありがとうございます
冬馬君は何だか嬉しかった
とっても甘いよ
その声をきき声の先をみて冬馬君は何とも説明のしようがない気持ちを味わった。
胸を何かで打ち付けられたそんな衝撃的な気持ちである。
目の前にはショートカットの目がくりっとした色白の女の子がたっていた
冬馬君は緊張とドキドキのあまり何も言う事が出来なかった
メロンをその場で食べた方が良いのか
持って返ったほうがいいのか、どうしたいのかすら分からなくなっていた
一目惚れである。
とりあえずその場を離れ
自分達の家族の元に戻った
しかし頭の中はあの子でいっぱいなのだ
冬馬君にとってこんな気持ちは生まれて初めてであった
戻ると大喜と慎司は水切りをして遊んでいた、石を投げてはやーっと叫んでいた
冬馬もやろうぜ 慎司が言った
心の中でこんな子供っぽいとこあの子にみられてたまるかと思い
見られてないのを確認しては石を投げて遊んでる あはは、やっぱ楽しい。
しかしあの子何処から来たんだろう
まさか昼頃には帰ってしまうんじゃ
冬馬君は気が気でなかった
出来た 後ろから声がした
全くみんな二つめのテント手伝わないで 二つテントをたて終えた隆が言った。
隆は次は調理する場の準備にとりかかった ほらっ手伝ってくれ
みんな手伝いに行った。
みんながそちらに向かった後、冬馬君はちらちら向こうを見てはあの子を一目みようと必死だった。
すると 「あっ」という声が どうやら向こうのお母さんの声らしい
川から何か流れてくる
見ると男の子のサンダルが流れてしまったみたいなのであった。
冬馬君は走った 石をジャンプしてつたっていって あっという間にサンダルの所に辿り着いて サンダルを回収した
自分でも信じられない身のこなしに
驚いていた、こういう時は無心で動き自分でもビックリするくらいの動きをする。
あの子は見てるか?ハッと思い目をやった 全く見ていなかった
少しガッカリした
お母さんがこちらに来て随分身軽なのねどうもありがとうと言ってくれた。
いえとんでもないです
冬馬君は色々聞きたかったけど聞けなかった
戻ると正子がすでに料理を焼いて
隆がご飯を炊いていた。
おい何処行ってたんだよ 慎司が言った
ちょっとサンダル拾ってた
みんなで釣りやろう 大喜が提案した
三人で釣りをして遊んだやり方やコツは分からなかったが餌をつけて川に投げ込んでいた
魚は肉眼でも泳いでるのが確認出来る
釣りをしながら冬馬君はさっきの女の子の顔を思い出していた
可愛かったなあ
まさに天使を見た様なそんな気分だった あの笑った時の笑顔
思い出してはドキドキしていた
何か話すきっかけが欲しい
何かないか考えていた
やったー釣れた釣れたよ
大喜が嬉しそうに釣り竿を高く掲げた
すげー慎司も興奮していた
しばし魚釣りに熱中したがすぐに頭の中はあの子でいっぱいになった
ああ何か話すキッカケをつくりたい
料理出来たぞ食べよう
隆が呼んだ
冬馬君はひらめいたさっきのスイカのお礼にお肉をもって行ってあげよう
二人はまだ釣りをしていたので冬馬君はすぐに正子の方に行きさっきメロンをご馳走になった事を伝えお礼がしたいと伝えた
正子はお皿に焼いたものをのせて冬馬君にお礼言って来なさいと微笑んだ
冬馬君はそれを持ち向かった
深呼吸をし気持ちを落ちつかせたが
心臓はやはりドキドキしていた
でも今は緊張よりも喋れる事が嬉しかった
目の前にあの子がいた
「あの さっきの おへい」
おれい と言う所を噛んでしまった
はっ恥ずかしい
女の子はニッコリ笑って どうもありがとう と言った
冬馬君はまたあの子の笑顔が見れた
もう天にも昇る気持ちになった
「あのっ 何処から来たんですか?」
勇気を振り絞って話かけた
来た場所を聞いて更に嬉しい気分になった なんと同じ市から来ていたのである
「今日は何時までここにいるんですか?」
「明日までいるよ」
冬馬君は嬉しさのあまり失神しかけていた これを奇跡と言わず何を奇跡と言おうかそんな気分であった
「僕達も 明日まで」聞かれてもいないのに答えていた
「僕は冬馬 名前は?」
「私は清香」
よろしく
信じられなかった こんだけ自分が話せた事 そして 知り合いになれた事
冬馬君は何かに感謝しないではいられなかった
「僕達も明日までいるから後で遊ぼう」
「うん」
冬馬君は嬉しさのあまり走って戻っていた
やった やった やったー
心の中で幾度拳を振りかざして喜んだだろうか 自分程幸せものはいない
そう感じていた
戻ると二人は冬馬君のあまりの嬉しそうな顔をみて「どうかしたの?」
いや、別に。 特に何があったかは言わなかった
大喜はあれからもう一匹つれたよと誇らしげであった
慎司は一匹も釣れなかったらしい
諸君僕は魚など比較にならない程のものを釣ったんだよ
心のなかでそう思い またむふふと嬉しさ満タンの笑みを浮かべた
二人はあまりの冬馬君の嬉しそうなニタニタした顔の不気味さにあははと苦笑いを浮かべていた
さあこのキャンプ面白くなってきたぞ
冬馬君は胸の高鳴りを抑えられずにいた
つづく
『楽しいキャンプの時』
冬馬君は嬉しくてついつい顔がにやけていた
あんな可愛い子と知り合いになれた
嬉しい
大喜「やっぱ自然の中で食べるご飯は最高だ」
慎司「やばいねー最高」
隆はビールをグビッと飲んで肉をパクリ大満足の表情を浮かべた
正子も「美味しい」と皆自然の中で自分達でご飯をつくりゆったり過ごす事に大満足していた。
冬馬君も皆の満足気な顔を見て嬉しくなった
耳を澄ませば川のせせらぎや虫の大合奏
そして今や冬馬君には隣の家族の声であった。
冬馬君にも全く予想外のこの出来事
こんなにも胸がドキドキするなんて
でもこれは自分でもどうしようも出来ない事だった、胸はひとりでにドキドキバクバク。
本当に好きになってしまったようだ。
今日、明日でもう二度と会えない
そんな関係で終わりたくないのが正直な気持ちだった。
「乾杯しよう」
みると大きなコーラのペットボトルを
持った慎司が紙コップにコーラを注ごうとしていた
冬馬「よしっみんなで乾杯だ!!」
三人は食べていたお皿を置いて
水着に着替えて川に飛び込んだ
本当に体の芯から冷たさが伝わるそんな感じだった 水も透き通っていて
周りを見渡せば森
本当に心からすがすがしくリラックス出来るそんな気持ちだった。
冬馬君は二人に気になる子が出来た事を言おうか迷った
ただ何故か恥ずかしくやはり言うのをやめた、でも後で向こうに行く時にみんなで行くのも良いなと思った。
二人もあの子の事が好きになっちゃうんじゃないかと少し心配もあったのだった。
隆も水の中に入ってきた、隆は子供達を川の中に持ち上げて投げたりして遊んでくれた
子供達はおおはしゃぎで隆に向かって行ってはつかまって投げられてを繰り返し遊んでいた。
冬馬君はその間も隣が気になってチラチラ何度も確認をしていた
行きたいのだが、理由もなしに何回も向こうに行くのが恥ずかしかった。
とても歯がゆい気持ち。
隆は少し休憩と行って正子の方に行った
子供達も川からあがりテントで遊ぼうと体をふいてテントに向かった
ヒグラシの鳴き声がやけに耳に残った
時刻は16時を過ぎた頃だった
皆でテントに入ってトランプなどをして遊んでいた
気づくと大喜も慎司も疲れたのか眠っていた
冬馬君はテントを出た
居ても立ってもいられなくなり親達の目にもうつらないように隣の家族の方に向かった
しかし冬馬君は話かけには行けなかった 恥ずかしかったのだ。
隣の家族の居る所の近くの川辺で
なにか、いかにも用があるようにして
歩き回っていた
すると 楽しそうだね
後ろから声がした 清香だった
冬馬君は顔が真っ赤になるような感じがした
心臓はドキドキバクバク 呼吸をするのすら忘れていた 「はふっ」
「三人兄弟なの?」
「ううん友達と従兄弟」
「良いな、それは面白そう」
二人は川辺に座り色々話した
冬馬君はくりっとした眼を長々と直視する事は出来なかったが
夢のような時だった
本当に時間なんてものがないような何とも言えないゆったりとした瞬間の中に身を委ねているような気がした
景色が本当に今までと違って見えてるそんな気がする
ずうっと一緒にいたい 素直にそう感じていた
夕陽が上から2人を照らしている
光が川の水に反射してキラキラ輝いていた まるでオレンジ色の細かいガラスの破片達が川の上でダンスして2人を祝福しているようだった
2人は気づかないでいたが
その後ろでは遠くから正子が2人を夕陽と共に微笑ましく見守っていた
冬馬君は清香に自分の家の電話番号を教えた
清香もまた自分の家の番号を冬馬君に教えた
また会おう
そろそろ戻ろうか
後ろを振り向き冬馬君はビックリした
正子と清香の家族達が一緒に居たのだった。
二人は顔を見合わせビックリして
そっちに向かった
正子はさっき冬馬君がお世話になったのをお礼がしたいと言い隣の家族に話かけていた、そしてみんなで一緒に夕飯をつくって食べませんかと提案したのであった
冬馬君は知る由も無い事だったが
きっと正子は二人が仲良くやってるのをみて何かしてあげたいと思っていたのであろう
「それは良いですね 是非」
かくしてキャンプはより賑やかな幕開けとなったのである
冬馬君は事情を話にテントにいる二人をおこしに行った
隆も子供達の隣のテントで寝ていたので正子がおこしに行った
さあ面白くなってきたなぁ
冬馬君のテンションは最高潮である
時刻はちょうど五時をまわった所であった
夕暮れの森ではセミやヒグラシなども
声をあげて宴会の真っ只中であった
まるでみんなを祝福してくれてるようにやけに心に響く音
っづく
『キャンプ交流』
冬馬君は大喜と慎司に事情を話て二人を清香の家族に紹介した。
「初めまして」
二人は照れながら挨拶した
大人達はさっそく真ん中に火を焚いて
キャンプファイャーのようにした
母親達は料理の準備をし始め
冬馬君は清香と弟を
大喜と慎司に紹介した
二人は清香は女の子だったからか少し照れているよう。
弟とはすぐにうちとけたようだった
辺りは夕暮れ時の暖かいオレンジ色に
包まれて気持ちも何だかホカホカ暖かい気分
「お~い 明るいうちにスイカ割りしよう」
隆が子供達を呼んでいる。
大喜は川から今朝冷やしたスイカを持ってきて地面に置き
清香のお父さんが持ってきた木の棒で
さあいよいよ始まった!!
「僕やるよ」冬馬君が言った
目隠しをしてさあ割るぞ
目隠しをした時に視界が遮られる事によって音というものを一段と意識した
みんなの声 清香の声も聞こえる
川の流れる音
虫の鳴き声
自分の歩く音
今キャンプに来てるんだ
しみじみ感じていた
「そこ そこ」
みんなの声が聞こえる 「このへんかな」
冬馬君は思いっきり木の棒を振りかざした
目隠しをとると
慎司の頭が割れていた。
らどうしようと思って笑ってしまった
スイカは割れずに残っていた。
次に清香の弟が挑戦するも
こちら側に向かって来ては棒を振りかざすので、あまりの危なっかしさに
清香の母がとめていた
次は清香だった
冬馬君は大きな声でスイカの位置を示した
冬馬君の胸のトキメキは再び激しく上昇した
ああ、どうしよう僕本当に好きだ。
清香が棒を振りかざした
パコッ 当たったものの力が弱くてヒビが入ったくらいだった
みんな「良くやった」と大喝采
清香は照れ笑いを浮かべていた
冬馬君は心の中であの笑顔がまた見れるなんて最高に幸せだと今目の前に広がる幸福を噛み締めていた
続いて慎司
「左 左 左 左」
慎司は皆が左と言ってるのに何故か右に向かっていた見るかぎり緊張していた
「左 左 あっ!!!」
慎司は川に落っこった
一同大爆笑
皆に笑われたのが嬉しかったのか慎司は小走りで戻ってきた
みんなとハイタッチ
続いて大喜
すごい 大喜何も言われず一人でにスイカの前にそして有無を言わさず
棒を振りかざし
ガンッ
やったあースイカは見事に割れた
すごい一体なんで分かったの?
「だって下から見えてたんだもん」
この~子供達は笑いながら大喜をつっついた
お肉も焼けたので皆お皿にとって食べ始め
大人達はビール片手に楽しそうに語り合っている。
まるで遠い昔からの知り合いのようだ
人間の縁って不思議だなぁ
一日でも日がずれたり、キャンプ場所が違う所だったり、ましてや間に他の人達が居たりしたら
こうして清香の家族とは仲良くなっていなかった
そんな事言ったら 同じ時代に生まれて同じ国に生きる
もうこれは偶然なんかを越えたもっと深い繋がりがある
子供ながらに冬馬君はそんな事を感じていた
当たり前にいる周りの人達の大切さをあらためて実感した 大切にしなくちゃ
そして、ありがとう。
「みんなで食べると余計に美味しく感じるね」みんなニッコリ
大変賑やかな夕食時
お肉の良い匂い
虫達の鳴き声
風のささやき
みんなの笑い声
そこにいる皆一体感を感じていた
気付けば辺りはもう暗くなってきてる
すると清香のお父さんが思い出したかの様に
「この近くに歩いて行ける温泉があるんだけど皆で行きませんか?」と言った
隆「へーっ知らなかったな是非行きましょう」
わーい 皆喜んだ、清香も嬉しそうだった
さっき割ったスイカも食べ終えて一同少しくつろぎタイムに入っていた
隆と清香の父は
まだビールをのみながら語っている
子供達は川に石を投げたりして遊んで、清香の弟が随分 慎司になついている。
辺りは大分暗くなってきたもう夜である、時間は19時とそんな遅くないが山の中とあって辺りはもう真っ暗に近いのである
火と懐中電灯のランプを消したら何も見えないだろう、森の中の暗さ
ただポツポツと上の車を停めてある車道に外灯があった
じゃそろそろ温泉出発するぞー
「あの山道みんなで歩くのワクワクするね」慎司が言った
「確かに」冬馬君と大喜もニコッと笑って言った
「ちょっと恐いな」
清香が言った
「なあに大丈夫僕達がいるさ」
三人は頼もしげに言った
「僕もいる」
後ろから清香の弟も顔をヒョッコリだした
「そうだ僕ら四人いる」
清香はそれなら恐くないと笑った
じゃあ出発するぞー
隆が子供達を呼んだ!
子供達は暗い山道を歩く事になんだかワクワクしている
さあ行くぞー おーっ!!!!!
気分は探検隊だ
温泉に向け出発~~~ おおーーっ
つづく
『キャンプの夜』
温泉に向かう為一同テントの張ってある川辺から、車道の方にあがった。
辺りは真っ暗、大人たちもこれは結構暗くて恐いねなどと話している。
子供達はみんな離れない様にして固まって歩き、冬馬君は清香の近くにいれる事が嬉しくて恐いという気持ちはなかった。
慎司「本当に真っ暗だね」
大喜「怖い話してからこれじゃなくて良かったよ」
確かに怖い話した後にこの道を歩いたらそうとう歩くの厳しそうだ 冬馬君もそんなことを思った。
清香のお父さんがじゃあ怖い話でもしながら歩こうか?と笑いながら
「やだ」清香が言った
「冗談だよ」と清香のお父さん
「話してよ」 慎司にくっつきながら清香の弟が言った。
しかし辺りは本当に真っ暗で懐中電灯がもし消えたら何も見えなくなってしまうだろう
ガサッ 何か左の山の中から音が
「恐いよ」慎司にしがみながら清香の弟がデカイ声を急にだしたので
冬馬君も慎司も大喜も清香も
みんな体がビクッとする程驚いて大人達の真横にくっつきに行った
正子「動物よ」
清香の母「急に音なるからビックリしますね」
誰も気付かなかったが、実はさっきの物音を誰よりも内心驚いていたのは
他でもない隆だった
腰抜かすかと思ったよと心の中で腰ぬかさず
ホッとする隆。
しばらく真っ暗の山道を歩くと明かりが見えてきた。
子供達はほっと一安心
「あれが温泉です」と清香の父が指差した。
他に人が入ってる気配はなかった
どうやら無料で使えるらしい
男湯と女湯に別れていて
「さあ入ろう」
扉をガラッと開けると目の前は川が流れていた 暗くてよくは見えなかったが川の流れる音ははっきり聞こえていた
冬馬君「こりゃ最高だ」
皆温泉に飛び込んだ
大喜「いやー極楽」
慎司「生き返る」
清香の弟「なくすまー」
なくすまーとは全く意味が分からなくてみな大爆笑だった
隆「まさかこんなとこにこんな良い温泉があるとは知らなかったなぁ」
清香の父「24時間入れるんですよ」
素晴らしい、一同川の流れに耳を澄ませ
あったかいお湯に心も身体も癒されていた
あー極楽だ
お風呂からあがり女性陣を待っていたがなかなかでて来なかった
やはりこういうのは女性は長いなと大人達は話ていた。
温泉の入り口の所に自動販売機があったので、ジュースを買って飲んで待って居る男性陣。
自動販売機の明かりの回りにはたくさんの虫が飛び回っている
しばらくして女性達がでてきた
あー良い湯だった
髪の濡れた清香の顔は何ともまた美しかった
冬馬君がお風呂に入りながらずっと隣が気になっていたのは言うまでもない。
あの濡れた黒髪に大きな瞳
冬馬君はまだ目をじっと見つめる事は出来なかった
さあ戻ろう
帰り道 清香のお母さんが「ねえ空見上げてごらん」
空には満天の星
言葉を失うくらい綺麗だった
自分の住んでるところではこんな綺麗な星は間違いなく見れなかった。
広大に広がる青黒いキャンパスに星がこれでもかというくらい散りばめられて光輝いている
みんなでこの星を見てる
自分の大好きな人達と
あまりの美しさに一同足がとまっていた
星の光に照らされている
清香の顔も冬馬君には女神様のように見えていた
天には星 地上には清香そんな心持ちだったこんな事を大喜達に言ったら笑われるだろうと思う。
しかし本当に綺麗だ
「 一生忘れない思い出だ」冬馬君は言った
みんなニッコリ笑ってる
そしてテントの場所に戻ってきた
あー良かった
大人達はまた乾杯を始め
子供達はトランプをみんなでやろうと大人達に提案した。
その日は遅くまでみなでトランプをして盛り上がった 隆も清香の父もお酒を結構飲んで良いご機嫌である
途中清香の弟は眠ってしまった
さてそろそろ寝るか
そう言えば明日何時に帰るんですか
?隆がきいた
冬馬君はドキッとした
明日はお別れなんだ急に胸がしゅんとした さっきまでの時間が夢のように感じた さっきの温泉に行く前くらいの時間帯に戻りたいそう感じていた。
お別れの時が近づいてきてるそう感じずにはいられなかった
寂しい・・・
「そうですね、遅くとも夕方に家に着く様にはしたいですね、そちらは?」
隆「こっちも決まってはないんですが大体夕方には着きたいからそちらと同じくらいに出ようかな」
「そうですか」
冬馬君だけでなく大喜も慎司も清香も寂しそうだったこの楽しい時間が終わりに近づいてるのが、お別れが近づいてるのが寂しかった。
「さてそろそろ寝るよ」と正子
「はい」子供達は返事をした
冬馬君はチラッと清香をみた
「明日にはサヨナラか寂しいね」
清香が言った
向こうも同じように感じていたんだ、それは嬉しかった
「うん寂しいね、でもまた会えるよ
お休み」冬馬君はそういうと何だか元気がでた何ももう会えないわけじゃないきっと、また会える。
「うん」清香も笑った
お休み
みなテントに入って行った
時刻は1時をまわっている
森の虫は休みもせずまだ合唱をつづけていた
いよいよ明日は清香達とお別れ
楽しいキャンプは終わりに近づいていた。
つづく
『キャンプから帰る日』
陽の光がテントの中に差し込んできた
昨日の真っ暗な景色からは嘘のような明るさだ。
まだ横いる大喜も慎司も寝ていた。
冬馬君は清香達が居るのか心配になり勢いよく外にでた。
向こうのテントはちゃんとあった。
まだかなりはやい時間のよう
誰も外にいない みんなまだ寝てるみたい
外は少し霧がかっている。
冬馬君は清香が起きてこないかなと少し期待しながら外にいた。
一体今は何時なんだろう?
時計を見ると6時
冬馬君は少し散歩に行こうと決め
川沿いを上流に向かってひとり歩いた
セミはこんな朝からもう元気に鳴いている
歩きながら清香の事を考えていた
冬馬君にとってこんな気持ちになったのは人生初めてだった
こんなに胸がドキドキしてこの子が存在するだけでこの場所が天国の様に感じられるそんな気持ちだった。
ハァー、何故だかため息をついた
苦しさではないのだが何かため息をつかせるそんなものが恋にはある
冬馬君は清香が今一緒にこんな短かに居るのが嬉しくてたまらなかった
だが今日の午後にはもう離れ離れ、
実際本当にもう会えるか分からない
そのへんが不安だった
昨日、今日限りの縁だったのかも
それが何より恐かった
慎司や大喜ならいつでもまた会うのは決まり切ってるだが清香達とは実際の所もう会わないかも、と言うより会えないかもそれが心配だったのだ。
みんなのテントが見えなくなった辺りで冬馬君は一人川辺に座って川の流れをボケーッと見ていた。
ひとはどうして恋に落ちるんだろうか?
フーッまたため息をついた。
なんだか胸が苦しいような変な感じ。
川の水は昨日と変わらず元気よく流れている。
さてそろそろ戻るか
戻ってみると清香達のテントの隣の方に新たな人達が来ていた、ちょうど今着いてこれからキャンプを楽しむ人達みたいだ
冬馬君は心の中で良いなぁと思った
後もう一日でもいたいな
まだ、誰も起きてなかったのでテントに入ってまたひと眠りする事にした
「ほら起きて、そろそろ片付けるよ」
正子が冬馬君達を起こした
三人は目を覚ましテントの外にでた
大喜「ぐっすり寝れた」
慎司「昨日の夜の山道歩き楽しかった」
清香達の方を見るともうテントが片付いていた
ドキッとした冬馬君
冬馬君はそれをみてとても切なくなった 本当にもう帰るんだ、もう帰っちゃうんだ。
楽しい時間は終わってみればあっという間に感じてしまう
冬馬君も色々片付けを始めた
向こうだけ片付いて先に帰ってしまうのがいやだったからなぜか焦って片付けていた。
すると清香と弟がサンドイッチを作っていたらしく持って来てくれて
「昨日は楽しかったね、これ食べて」
ありがとう
それは最高に美味しかった
冬馬君にとってはどんな高級料理を食べるよりも嬉しくおいしくかんじた。
片付けしてる最中綺麗な石を冬馬君は発見し
そうだこれをあげよう
大喜と慎司に見られるのは恥ずかしかったから見られてないのを確認して石を持って行った。
二つ見つけて一つは弟にあげた
そして清香にも持って行った
「これあげる、サンドイッチのお礼」
「綺麗 ありがとう」
「また会おうね、夏休み中また連絡する」冬馬君は最大限の勇気をふりしぼって言った
「うん、また遊ぼうね」
二人は約束した
冬馬君は少し安心した、またきっと会える
そして
いよいよ お別れの時がやって来た
「本当お世話になりました楽しかったです、またみんなで計画たてて遊びたいですね」
清香の両親が言った。
「こちらこそ、本当にありがとうございました、是非またみんなで遊びに行きましょう」
正子と隆もこの家族と過ごせて嬉しかった
ようだ。
冬馬君はこの会話をきいてとても嬉しかった
なんだかまたみんなで会える気がしたからだ。
そしていよいよ向こうの家族は車に乗り込んだ
「じゃあねー」清香と弟が大きな声で叫んだ
「じゃあねー」こちらも大きな声で挨拶した 慎司も自分になついた弟のお別れが寂しそうだった。
本当にもう行っちゃうんだ
お別れの時だ
胸がキュンとした。
プップ~向こうの家族はクラクションを鳴らし、そして窓からみな手を振ってくれていた
だんだん車が見えなくなってきた
そしてカーブを曲がり視界に車はもう
映らなくなった
隆「さあこっちも片付け終わらせるぞ」
冬馬君はさっきまで清香達の家族が居た場所を見た
今はもう何もなかった
テントを張っていた後などを見ては胸が異様に切なくなった
帰っちゃた
こちらも片付け終わった
「さあ帰るよ」
すると知らない人が来て
「この場所使っていいですか?」
「どうぞ」
さっきまで清香の家族とうちの家族達がキャンプしてた場所、今はもう次の人達が使い始めていた
冬馬君は山を見つめて言った
素敵なひと時をありがとう
大喜も慎司も山に向かって
ありがとうと叫んでいた
一同車に乗り、家に向かった
冬馬君「面白かったなー」
慎司「良い思い出になったね」
大喜「隣の人達との出会いもあったしね」
また来よう!!!
途中昼食をファミレスで食べ
道が混んでいたのもあって地元に着く頃には19時を過ぎていた
隆「慎司の家はこっちだっけ?」
慎司「いいですよ、冬馬の家で降ろしてくれたら歩いて帰りますから」
また慎司は遠慮していた
「何言ってんだよ」冬馬君と大喜は慎司をくすぐった
そして慎司の家に着き
家から慎司のお母さんが出てきた
「本当にお世話になりました、これ食べて下さい」
「すいません、また遊びにおいでね」
「慎司じゃあねー」
ブウゥーン
「慎司も帰っちゃったね寂しくなったね」
と冬馬君
「大喜は今日も泊まって行けば良いじゃん」
「もちろんそのつもり」笑みを浮かべピースをしていた
冬馬君は嬉しかった
さておうちに帰ろう
まだ夏休みは始まったばかり
つづく
冬馬君の夏休み