【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 9(3400字)

「どう思う。」
杏子が言った。
「どおって・・」
マミがつぶやく。
「私は、ハチべえの言っている事に嘘はないと思う。」
杏子が言ったが、誰も何も言わなかった。
杏子は少し考えたあと
「ほむらは、なんで一人で助けにいこうとしたんだ。」
と、ほむらに尋ねた。
ほむらは答えられなかった。
「足手まといだから、か。過去に何度やっても無駄だったから。」
杏子が言うと、ほむらはうなずいた。
「どういうことだよ。」
「さやか。」
杏子が止める。
「・・なるほど。・・ところであんた、ビルは好きかい?」
杏子の問いに、ほむらが首をかしげる。
「都庁やランドマークタワーを見て、何か感じるものは?」
ほむらは首を横に振った。
「どういうこと?」
「ワルプルギスの夜がビルで攻撃してきたろ。そういうことだよ。」
マミの問いに杏子が応えたが、誰もその意味が理解できなかった。

「まどか、か・・。」
杏子がつぶやく。
「私はまどかと会って、いろいろ変わったよ。それまでは回りはぶっつぶさなきゃいけない敵だった。
  味方なんかいないって。でもまどかは違った。」
「私も。」
ほむらが続ける。
「この世界は弱い人間に厳しい。隙をみせればどんどんつけ込まれる。蹴落とされる。
  だけどまどかは違った。人の心の痛みが解るみたいに。」
「私は・・・」
マミは言い淀んだ。
「・・魔法少女の私の、友達・・。」
どれだけ救われただろうか。
しかし、第8世界での記憶がよみがえるにつれ、第9世界での感情が薄れていく。
第8世界のリハビリ室で助けてくれたのも、勉強会に誘ってくれたのもさやかだった。
・・今ではまどかよりさやかのほうが、大切な友達だった。
「まどかは私の親友だよ。辛いときに助けてくれた。あの世界でも、元の世界でも。」
さやかが言った。
「マミさん・・リハビリ室で、私と初めて会ったときの事、覚えてる?」
さやかがマミに尋ねる。マミは頷いた。
「あれ、最初にマミさんに気づいたのは、まどかなんだ。つらそうだけど、がんばってる娘がいるって。
  ・・ほら、私は恭介のことしか見てなかったからさ。」
驚いたマミが何も言えずにいると、さやかは
「マミさんを勉強会に誘おうって言ったのもまどかなんだ。
  『マミさんは転入生だから、きっと勉強についていくの大変だよ。一緒に勉強しようよ。』って、
  私と暁美さんに言ったんだ。」
と続けた。
「そう、なの・・・・。」
何も気がつかなかった。
「とにかく、私とほむらは、まどかを助けに行く。それでいいな?」
杏子の言葉にほむらがうなずく。
「私も。」
さやかが言った。


****


広い空間にハチべえはいた。
「それが、君たちの結論・・」
3人がうなずく。
「・・僕には、君たちが死ににいくとしか思えない。」
「勝てる確率は?3人いれば0じゃないんだろ。」
「・・そうだ。」
「十分だ。」
「・・わかった。・・1つだけ条件を出させてくれ。
  24時間以内に、バーチャル戦闘で1回でもいいからワルプルギスの夜に勝つこと。・・いいかい?」
「楽勝だ。いくぞ。」
杏子の言葉に、ほむらとさやかがうなずく。
3人はバーチャルルームに向かった。
「君は?」
ハチべえがマミに尋ねる。
「・・よく解らないの・・」
「・・命をかけてまでやるべきことなんてそうはない。まどかは命をかけてみんなを救ったけど、
  3人は命をかけてそれを否定しようとしている。」
「・・・・」
「君たちは、なんでそんなに死にたがるんだい?」
マミは答えられなかった。
急に現実があやふやになり、意識が第8世界での記憶とつながる。
さやかと、杏子と、ほむらが死んだ後の世界。


****


「少しでいいからお金を貸して欲しい。」
父親の親戚を名乗る、中年の男はそう言った。
確か、葬式で会った気がした。
事業が行き詰まっており、当座の資金が必要だということだった。
マミは夏木に相談をした。
「あんな放漫経営の会社に出す金など1円もない。」
夏木は断言した。
夏木は父親の親戚に、お金を貸せない事を伝えた。

次の日、親戚は、家の前でマミを待ち構えていた。
親戚は、なんとかマミを懐柔しようとしたが、
マミの意見が変わらないことを知ると、マミをさんざんに罵倒した。
自分は最大限の努力をしたのに、マミがそれを少しも理解していないこと。
従業員が路頭に迷うのに、マミがそれを気にしない利己主義的な人間であること。
妻や子供に愛想を尽かされているのに、マミがその痛みを感じられない人間であること。
マミは何も言い返せず、ただ泣いていた。
やがて親戚は罵倒にも疲れたのか、日が暮れる頃には肩を落として帰って行った。

次の日、親戚の男の娘を名乗る、マミとおない年ぐらいの娘が、家の前でマミを待ち構えていた。
「父は死にました。自殺です。」
感情の感じられない声でそういった。
「あなたが、ほんの少し手を差し伸べていてくれれば、父は死なずにすんだのに。」
それだけ言うと、きびすを返して帰って行った。

もう耐えられない。
そう思った。
家族も、友達も亡くした。
マミのせいで、たくさんの人が死んだ。
部屋に飾られた、バレエの発表会の写真。
もうあの頃は戻ってこない。
・・もう・・疲れた。
マミは収納から登山用のロープを取り出し、それをフックにかけ、首を吊った。


****


暗い宇宙船の部屋の中、マミはベットに横になっていた。
泣いていたが、なぜ泣いているのか自分でもよく解らなかった。
部屋の扉がノックされ
「・・・大丈夫?」
おそるおそるの声が聞こえる。さやかだ。
いそいで涙を拭き、
「・・ええ。」
答えたが、大丈夫な自信はなかった。
「入っていいかな?」
「うん。」
廊下の明かりが漏れる。
「マミさんが倒れたって聞いて。」
入り口に立ったまま、さやかが言う。
「・・私は大丈夫。さぁ、入って。」
しかし、さやかは部屋には入ってこなかった。
「私さ・・マミさんにあやまらなきゃいけないことがあるんだ。」
「え?」
「・・ほら、もう会えないかもしれないし、言っておこうと思って。」
マミには、さやかに謝られる覚えなどなかった。
「私さ、元の世界でマミさんの事、死ねばいいと思ってた。殺したいと思ってたんだ。」
「な・・」
「私は恭介を好きになったけど、恭介は幼なじみで、自分でもなんで急に恭介を好きになったか
  よくわかってなかった。ほんと、魔法をかけられたみたいに好きになって・・・。
  で、マミさんと暁美さんは死ねばいいって毎日思ってた。本当に毎日。」
さやかが部屋の中に入ってきて、扉が閉まり、部屋が暗闇に包まれる。
「でも、急に解ったんた。全部が繋がったっていうか・・・・私はまどかが好きだったんだ。
  まどかはずっと私の勉強の面倒を見てくれていた。
  勉強はあんまり進まなかったけど、まどかとの時間は楽しくて・・
  それがマミさんと暁美さんが転入してから、まどかは2人につきっきりになって・・
  私が恭介を好きになったのもその頃。」
暗闇の中で、さやかの目がにぶく光った気がした。

「恭介とはしばらくうまくやってたけど、ある時言われたんだ。『もう別れよう』って。
  高校からドイツの音楽学校にいくことになったらしいんだ。
  私はそんなこと全然聞いてなかったし、すごく悲しくて頭が混乱して・・
  ・・部屋にあった花瓶を割って、恭介の腕を切って・・
  バイオリンを弾けなくなれば、恭介がドイツに行かないと思ったのかな。
  でも、すぐにとんでもないことをしたって気づいて、それで・・・・。」
「美樹さん、もう・・」
さやかは首を横に振る。
「私は、陸橋から電車に飛び込んだんだ。・・あれ、あんまりマミさんと関係ない話しちゃったかな・・
  でも、全然無関係じゃないし・・まぁ、そういうこと。
  私は私よりまどかが大切だし、だからまどかを助けに行くんだ。」
さやかは納得したようにうなずく。
「だから・・私が死んでまどかが助かったら、私の分もまどかに優しくしてあげて。それだけ。」
さやかはマミの答えも聞かず、部屋を出て行った。

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 9(3400字)

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 9(3400字)

3人の決心。マミの過去。さかやの過去。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-29

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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