【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 8(3500字)

「何かコツがあるはずなんだよな。私ももう少しパワーアップしそうだし。」
そう言って杏子は考え込む。
「創造命令:敵、影の魔女。敵の状態、活動を停止。位置、エアーズロックが見える荒野。OK。」
さやかが命令する。
「行ってみたかったんだ。」
「懐かしい・・」
マミがつぶやく。
「・・さやかさ、電車好き?」
杏子がさやかに訪ねる。
「別に。・・何で?」
「・・そっか。・・もしかすると・・」
杏子はしばらく考え込んでいたが、やがて
「確かめてみるか。」
槍を構える。
「・・佐倉流火槍術・・。」
さっきまでの青い炎ではなく、赤い炎が槍を包む。
「・・紅蓮の炎で焼き尽くす!豪炎っっ!」
「攻撃威力、28万。」
「なるほどな。」
杏子はうなずく。
「どういうこと?」
さやかが首をかしげる。
「さやか・・車輪のイメージだ。車輪をイメージして攻撃しろ。」
「?いいけど・・車輪、車輪・・」
さやかの目の前に、ママチャリぐらいの車輪が現れる。
「もっと大きく!」
「えっと・・」
直径が3メートルぐらいになる。
「もっと重く、太く。」
「うーん、と。」
重量感のある、鉄の車輪。
「よし、それを魔女にぶつけろ。」
「わかった。」
車輪は魔女をあっさり切り裂いた。
「攻撃威力、9万。」
「うわっ、何これ?」
「さやかすげえじぇん!」
杏子が右手を上げたので、さやかはそれを叩く。
「よし、次は合体攻撃だ。」
「合体って・・」
「いいから。」
杏子はさやかに手を差し出す。
「試してみようぜ。」
「・・わかった。」
さやかは杏子の手を握る。
「私の言葉を繰り返して、合図をしたら車輪を出して。いい?」
さやかがうなずく。
「車輪だ、車輪だ、大きな車輪だ。」
「車輪だ、車輪だ、大きな車輪だ。」
「貴様は、貴様が利用しようとしていた、この巨大な車輪に踏みつぶされるっ!」
「貴様は、貴様が利用しようとしていた、この巨大な車輪に踏みつぶされるっ!」
「今だ!」
空に、さっきよりもずっと太く、大きな車輪が現れる。
杏子が右手で車輪を指さす。
「佐倉流火葬術・・地獄の炎が咎人を焦がす・・」
車輪が膨大な炎の塊に、どす黒く覆われる。
「さやか。」
杏子が、さやかの手を強く握る。
「行け。」
さやかが宣告すると、弾かれたように車輪は転がり、魔女を溶かした。
「攻撃威力、120万。」
それからしばらく、3人とも何も言わず魔女がいたあたりを見つめていた。


****


「暁美ほむらだ・・この空間を解除するよ。」
ハチべえが言う。
「創造命令。仮想戦闘解除。OK。」
部屋は元に戻り、入り口にほむらが立っていた。
「よう。おかえり。」
杏子がほむらにいう。
「・・まどかは?」
辺りを見回し、ほむらが訪ねる。
「さあ。そのうち来るだろ。」
「あなたたち、ここで何をしているの?」
「見りゃ解るだろ。バーチャルゲームだよ。」
「杏子、見ても解らないよ。」
さやかがつっこむ。
「確かに。」
杏子は何度かうなずいた後
「いいか。これから起こることはゲームで、死んでも別に問題はない。」
ほむらに言う。
ほむらが首をかしげる。
「創造命令。仮想戦闘。参加者、全員。敵、なし。位置、見滝原市上空3000メートル。OK。」
4人は空に投げ出された。
と、同時に落下しはじめる。
さやかとマミの悲鳴は風切り音にかき消された。
バランスを失い、くるくる回る体。
杏子は声を上げて笑っていた。
やがてはるか下にあった地面が、しっかりとした輪郭を持ち始める。
ビルの形が明確になり、もう地面にぶつかると思ったのと同時、
さやかは服をつかまれ、同時にものすごい力で引っ張られる。
轟音。
杏子が槍をビルに突き刺し、切り裂きながら落下を止めた。
槍にはマミのリボンも巻き付いており、すぐ下にマミがぶら下がっていた。
ほむらは?
目をやった足下に、光が溢れる。
「羽まで生えるのかよ。」
杏子が薄く笑った。


****


「わりぃわりぃ、ちょっとおどろかせてやろうかと思ってさ。」
空間を解除し、杏子があやまる。
「別に・・。」
ほむらが首を振る。
「いきなりはやめてほしいな。」
とさやか。
「だからゲームだって言ったし、助けたじゃん。」
「それはそうだけど・・」
「ま、こんな感じで魔女とかワルプルギスの夜と戦ってたわけ。」
杏子がほむらに説明する。
「よく解ったわ。・・それで、まどかは?」
3人は顔を見合わせる。
「・・私たちも良く解ってないのだけれど、ハチべえは『そのうち来る』って言ってる。」
マミは、自分が受けたのと同じ説明をほむらにする。

「あれ?ハチべえは?」
さやかが辺りを見回した。そういえばさっきから見あたらない。
と、部屋のドアが開いて、ハチべえが入っていきた。
どこか元気がない。
「どうかした?」
「・・君たちに伝えなければならないことがある。」
ハチべえは重い口調で言った。
「・・まどかは戻ってこない。」

空気が凍り付く。まるで時間が止まったかのようだった。
「どういうことだ?」
杏子がつぶやく。
「・・説明する・・」
ハチべえの目の前にキーボードが現れ、ハチべえの耳がキーを叩く。
少しの間を置いて大きなディスプレイが現れ、たくさんの動画が表示される。
動画はそれぞれバラバラな映像を流していたが、共通点があった。
「これは・・。」
ほむらが驚きを隠しきれない声でいう。
映像はどれも、ほむらを映したものだった。
青いカーソルが、一番下の動画を指し、その動画が画面全体に表示される。
「暁美ほむらの第9世界での記憶を、ワルプルギスの夜との戦いから再生する。」
ほむらとワルプルギスの夜の戦い。
まどかの決意。
魔法少女になったまどか。
魔女を消し去り。
魔法少女を救い。
絶望を消し去った。
そして、世界の概念となった。
「な・・」
杏子がうめく。
「鹿目まどかの精神は、あまりに深く第9世界に入り込んでしまった。・・・・もう回収できない。」
「・・それで?」
「君たちは君たちだけで第8世界に戻ることになる。」
「まどかはどうなるの?」
ほむらが発する何か。
「第8世界の鹿目まどかは・・精神を失った抜け殻として生き・・死ぬことになる。」
ハチべえはそれに気圧されつつも、言った。
「とうてい納得できないわ。まどかを助ける方法を教えなさい。」
「ダメだ。そんな方法はない。」
「あなたは嘘をついている。本当に方法がないなら、単に私たちを第8世界に戻すだけ。
  あなたは、まどかを助けないことについて、私たちの了解を取る必要があった。」
「そんなことは・・」
「なぜ教えられないの?」
ハチべえはしばらく考え込んでいたが、やがて言った。
「・・リスクが高すぎる。」
ハチべえの目の前に、CD が現れる。
「これは概念を実体化するプログラムだ。つまり、神を具現化するプログラムだ。
  元々は新興宗教の洗脳を解くために作られたんだけど・・
  概念の強さや、それが実際の人間かどうか、死んでからの期間にもよるけど、まず間違いなく機能する。」
「それを使えば、まどかが戻ってくるのね。」
「うん。・・だけど、副作用があって、周辺概念も実体化する。
  ・・今回だとワルプルギスの夜が復活するから、それを倒す必要がある。」
「問題ないわ。」
ほむらは言い切ったが、ハチべえが
「まどかの協力なしに、ワルプルギスの夜に勝ったことがあったかい?」
と静かに言うと顔をしかめた。
「しかも、この戦いに負けると、今度は君たちが第9世界に取り込まれる。」
「・・なんとか、するわ。」
「信じる必要はないけど、君一人で戦って勝てる確率は0%だということは言っておく。」
ほむらは押し黙った。
4人と1匹を沈黙が包む。
ハチべえはしばらく4人を見回していたが、
「じゃ、これから君たちを・・」
「なんだよ。」
ハチべえの言葉を遮って、口を開いたのは杏子だった。
「うちらに手伝ってもらうって発想はないのか?まどかが死んでもいいのか?」
「でも!」
「だめだ。」
ほむらとハチべえが同時に否定する。
「まどかがなんであんな選択をしたかよく考えるんだ。君たちを助けるためじゃないか。」
とハチべえが続けた。
「君たちにも、元の世界に大切な人がいるはずだ。
  君たちが死んだら、その人がどれだけ悲しむか考えて欲しい。」
誰も、何も言えなかった。
「・・今回のことは僕たちのミスだ。だから強制はできない。
  ・・君たちに24時間、考える時間をあげよう。それでも死にたければ・・言ってくれ。」
ハチべえは部屋を出て行った。

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 8(3500字)

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 8(3500字)

3人はほむらと再開する。 そしてまどかが神になったことを知る。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-29

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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