苦い昼

休み時間に鳴り響く電話機二台は
心優しいぼくの手にも負えないから
回線をぶち抜いてしまおう
代わりに糸電話でも机上に置いて
そうだ
せっかくだから赤い絹の糸でも買いに行こう
あ、ちがいます
あなたのための電話じゃないけど
心優しいぼくは困った人の相談を聞き続ける
試しにぼくの悩みを話し返してみようものなら
あなた新人?
とか言うんでしょ
そしたら自信を持って答えます
はい、そうですけど、って
事実を答えるだけです
そろそろお腹を取り巻く血液が足りなくなって
酸っぱい匂いを醸し出してしまうから
アルカリ味の給食的お弁当を食べに行きたい
あと五分
人間の視野は約二一〇度あるから
背中越しにきみの視線を感じているけど
あ、人の悩みを聞きすぎて時間がなかったから
糸電話は一時間遅れの昼休みの後にでもつくろう
と思い続けて半年か

苦い昼

初出:即興ゴルコンダ

苦い昼

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-10

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