第10話 リンク~繋がる~

第10話 リンク~繋がる~


2時間続きのホームルームにやっと途中参加できた希美子だが、その顔色は芳しくなかった。

教室では3か月後に迫った修学旅行の行き先を決めるべく、
話し合いやらおしゃべりでガヤガヤしていた。

希美子の学校では修学旅行先は3つに分かれており
東北・北海道班、京都・大阪班、九州・沖縄班のどれかに行くことになり、
クラス委員会によって選挙が行われ、行き先が決定する。


3か月後となると、産休中の担任松岡が帰ってくるので隆乃介は学校を去ることになる。
希美子にとっては修学旅行のことなど、どうでも良かった。


なんだかんだの末、
希美子のクラスは沖縄希望という結果になり、ホームルームも終了し放課後となった。

「草間、佐伯さんは?」
「あぁ、希美子なら…具合が悪いから先に帰りましたよ?」
「そ、そっか……」

今までそこまで意識してないつもりだったが、保健室へ行ったことで、
希美子を一人の女性として見てしまった隆乃介。


これは…まずいよな……。


適度に仕事を切り上げ、隆乃介は帰路に着く。
ただ歩いてるだけでも、

佐伯さんの具合は大丈夫なんだろうか…

希美子のことが気になって頭から離れてくれない。


その夜、隆乃介は夢を見た。
17歳のころの自分だ…また現れた。同じように頭を壁に付け、
傍らで止めきれず涙している少女の姿があった。


またこの光景だ…あのころは誰も信じられなかったよな…って…え?

そう、それを現在の自分の視点で見ている隆乃介も存在した。
止めようにも止めることができない、夢の中では現在の自分は非力らしい。


そして。



その光景をまた別視点で見ているものがいることに気付いた。


……!!!
佐伯…さん?

希美子もまた同じ夢を見て、同じように現在の自分として現れたのだ。

ふと、夢の中の希美子が隆乃介に気付く。

『……!!』
『どうして……まさか……あなたが……』

夢の中の希美子も、隆乃介も驚きを隠せない。
同じ夢を見る、という話はあるが、夢がリンクするなんてことはあまり聞かない…。

『同じ夢を…いや、同じ夢の中にいるのか?…俺たちは…』
『先生…いえ、隆乃介さん……』
『えっ……』

手を差し伸べる希美子。
一生懸命手を伸ばし希美子の手を取ろうとするがなかなか掴めない。

『くっ……き、希美子……』

どれだけ頑張っても希美子の手までたどり着けない。


そして、朝が来て、二人は目が覚めた。

第10話 リンク~繋がる~

第10話 リンク~繋がる~

  • 小説
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  • 青年向け
更新日
登録日
2012-04-28

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