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人には言えない性癖を持っている二人のおはなし。
本文
ついに欲望に負けて、ベットに押し倒したものの――
彼女は熱い眼差しを僕に向け、アノことを懇願する。
「ねぇ……首を。……絞めて欲しいの」
話には聞いていたが、彼女は特殊な性癖の持ち主で。
見た目は清楚なお姉さんなぶん、ギャップというか。
白い喉元に手をかけると、艶っぽく頬が染まる。
いいんだろうか、引き返せなくなってもいいのだろうか。
「でも、待って……やっぱ怖いよ……」
つい心にもないことを言っていた。
「意気地無し……でも、やっぱり嫌だよね、こんなの」
まさか、そんなことはない。
僕のこの手は、彼女に快楽をもたらせることも、彼女の命を奪うことさえ思うままにできる。
そんな状況に僕は、これ以上ないくらい興奮していた。
「……そ、そんなことない。頑張って、みるよ……!」
「ほんとに? ……ありがとう」
ふんわりとした笑みを浮かべ、目を閉じた彼女に、じゃあ始めるよと声をかけ、両の手に力を入れていく。
「くはっ……はぁっ、あぁ……」
彼女の体が苦しそうに跳ね、空気を求めて喘ぐ。
甘美に酔い痺れながらも、瞳には涙が溜まっていく。
恍惚の表情で僕は彼女を目に焼き付けながら、絞める力を加減し続ける。
もう僕達は戻れない。
――歪んだ僕を受け入れてくれた彼女に、これからも愛を与え続けようと思う。
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