第8話 別視点~シャットダウン~
薫に仕組まれたデートから2週間が経過した朝、希美子は月に一度の生理に悩まされていた。
「いつもはこんなにひどくないのに…なんで今回に限って…」
思い当たる節はあった。
毎晩の様に見る不思議な少年の夢で寝不足…それが夕べは違った視点から見ていたからだ。
現在の希美子が見る、幼少時代の希美子。
壁に頭を打ち付ける少年が、自分を苛む様に自分を責め続けている姿。
それを止めようにも幼すぎて涙するしかなかった幼き希美子。
今回ばかりは視点が違っていたのだ。
しかしながら、少年の顔は鮮明ではない…いまだに謎が残る。
あの少年は一体誰なんだろう…そしてなぜ少年は自分をあそこまで責め立てるのだろう…。
未だに手がかりという、手がかりはなかったが…正直希美子の体調的にそれを考えてる余裕がなかった。
「希美子ー!朝ごはんよー!早く食べないと遅刻するわよー!!」
「……いらない……行ってきます……。」
夢についての考え事と生理痛で朝食をスルーし、そのまま学校へと向かう。
登校途中、隆乃介と遭遇した。まぁ、家が隣同士なのだからどこで会っても不思議ではない。
「おはよう。」
隆乃介がさわやかに声を掛けるが、反応がない。
「あ……おはようございます……じゃ……。」
もはや生きる覇気すら感じない希美子。
隆乃介が心配そうに見送る、があまりにもいつもと違って覇気がないので守るように後ろについて学校へと向かう。
噂になっていることは正直気にしてないし、何かあったとしても自分の責任。
必ず希美子を守ると決めた隆乃介。
それに対し、噂が気になってしょうがないし、自分の気持ちが隆乃介に向いてる、なんてバレたら大問題だと、距離を置こうとする希美子。
あのデート以来、希美子は隆乃介から遠ざかっていくように距離を置いていた。
そんな希美子が心配でならない隆乃介。
二人の思惑はちぐはぐになっていた。
世界史の授業が終わり、次は体育の授業だ。
隆乃介は教室を出て職員室に向かう途中、薫が声をかけてきた。
「柴田先生っ。あとで話があるんだけど……いいすか?」
「あぁ、構わないよ。昼休みにでも聞こうか?職員室で。」
「ぁ、職員室はまずい…資料閲覧室とかだめですか?」
ものすごい小声で
「希美子のことで話があるんすっ。」
「佐伯さんのこと?」
「絶対っ!!来てくださいね~~~!!!!!」
と言い、体育着を持って走り去っていった。
「な、なんだよ…気になるじゃんか……」
体育の授業はマラソン。
時間がたてば生理の痛みも治まると思って見学届を出さずにいた希美子…どうやら考えが甘かったようだ。
「め、めちゃんこ痛い……気持ち悪い……でも、もう…遅い……」
校庭トラック10周走ってタイムを計るという、よくありがちな風景だが、今日の希美子にはとてつもなく苦痛だった。
特に運動が苦手でもないのだが…今日の体調はあまりにもひどい。
薫が心配そうに
「今から先生に言ってこよっか?」
と言ってくれたが
「何とかなるよ…たぶん……」
と振り切ってしまった。
その手前、走らざるを得ない。
6周目に入ったところで希美子の体調の悪さは限界に達し、遂に倒れてしまった。
「希美子!!」
「佐伯さん!?」
校庭がざわめくが、希美子に反応がない。
希美子の意識は徐々に遠のいて行った……。
第8話 別視点~シャットダウン~