第6話 仕組まれたデート

この日の朝は気持ちよく目覚めた。

「熱が、あったせいかな…んんー」
と伸びをして窓を開ける希美子。
制服に着替えようとして、ふとカレンダーを見る。
今日は土曜日、学校は休みだ。

「あっぶなっ!危うく学校行くところだった…恥ずかしい…」

午前8時。
私服に着替えリビングへ向かう。

「あら、熱はもういいの?」
母の声がした。うん、と頷きテーブルに座る。
母は希美子のつけているペンダントに目を付ける。

「あら?あなたそんなもの持ってたっけ?もしかして…彼氏でもできた?」
ニヤニヤしながら希美子に言う。

「いないいないっ!でも…大事なものなんだ…」
ちょっと神妙にものをいう希美子に、母は何かあるなと感じ取りこれ以上は聞かなかった。

朝食は目玉焼きとトーストに焼いたウィンナー。
「いっただきまーす」と手を合わせた瞬間、希美子の携帯が鳴った。
着信元を特に見ず電話に出ると電話の主は薫だった。

「10時に駅前来れる?希美子が前から見たいって言ってた映画のチケットが懸賞で当たってさー。一緒に行こうよー」
「ぅん、分かったぁ、ありがと。じゃ、10時に駅前で。」
電話を切って朝食をほうばる。

9時55分。
いつも5分前集合という模範的な待ち合わせをする希美子。
何気なく携帯をいじりながら薫を待つ。今、誰もがやっているSNSのつぶやきを眺めている。
自分でつぶやくより、有名人のつぶやきを眺めている方が好きで最近入ったばかりだ。

10時10分。
約束の時間から10分過ぎたが、薫は来ない。
「遅いなー…なんかあったのかなー…。」
遅いことに対して怒るより、逆に心配になってきた希美子。

「…佐伯さん…?」
不意に声をかけられた。
声の主に希美子は驚いた。それもそのはず、声の主は隆乃介だったからだ。

「え、せ、んせい…?今日はデートかなんかですか?」
「いや、草間さんから映画のチケット2枚渡されて、10時に駅前にいてくれって言われて…」

あぁ…薫に仕組まれた…。
チケットもしっかり二枚持っている。
何考えてるんだろう…薫は…と希美子は頭に手をやる。

「へぇ、制服と違ってなんか大人っぽい感じだね。」
隆乃介が感心する。

「いや、そんなことないですってっ!!今日は薫と会う約束してて…それで…」
テキトーな格好してきた、なんて言えるわけないでしょ…。
今日の希美子は、黒のロングスカートにグレーの5分丈トップスにインナーは白のレースをのぞかせている。
高校生というより、大学生でもよくいそうなそんなファッションである。

「とっても似合ってる…あ、そうだ熱はもう大丈夫なの?」
「あ、はい…お陰様でなんとか下がりました。あの、もしよかったら…」
と希美子は口ごもる。

「…一緒に行く?」
にこっと笑って見せる隆乃介。

「…はいっ!」
二人は駅近くの映画館へ入っていった。

第6話 仕組まれたデート

第6話 仕組まれたデート

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-04-28

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