第5話 リンク・インストール
隆乃介は夢を見ていた。幼少時代の夢だ。
隆乃介は幼少時代、施設で育った過去がある。
それがフラッシュバックしたのだ。
「……!!」
夜中3時。隆乃介は目が覚めた。
夢見が悪かったせいか、寝汗が尋常じゃない。
「…シャワーでも浴びてくるか…」
シャワーを浴びながらさっきの夢の事と、希美子が話した不思議な夢の話を思い出していた。
育児放棄され、腹を空かせていた時の記憶がよみがえる。
親は、大人は信用できない…誰も信じられない…そう思った幼少時代。
あれは確か12歳のころだ。
母は交通事故で亡くし父は蒸発。助けてくれる者などいなかった。
「ふぅ…さっぱりした…。」
シャワーから出てきた隆乃介。どうしても希美子の話していた夢の事が気になる
「きっと今も夢を見てるんだろうな……。」
どうしても眠ることはできず、希美子のことが心配でならなかった。
「柴田先生~おはようございます~」
「あぁ、おはよう…」
朝の学校の風景。いつもと変わらない光景が広がる。
しかしいつもと違うのは希美子が欠席したことだった。
電話連絡があり、熱が出たので休ませてほしいと。
何となく覇気がなくなってしまった隆乃介。
それでも時は流れ、仕事もあがりの時間になった。
何となく、酒を飲みたい気分になり、家でビールを飲む。
普段酒を飲まない隆乃介がビールを5本も開けてしまい
そのままソファで眠ってしまった。
そして夢を見る。
施設に入る直前の、すっかり忘れてた記憶が夢として甦ったのだ。
今度は17歳の隆乃介が現れ、一人の少女が自分の前に現れた。
見たところ、5~6歳の少女が心配そうに自分を見ている。
一番荒れていた頃で、自分はこの世界に必要とされてないとすら感じていた頃だった。
なんだか同情されてるような気がして、少女を邪険にした記憶が再現された。
「来るなっ!!」
頭を壁に何度もぶつけ、顔面に血をしたたらせながら少女に叫んだ、というより脅した。
「こっちに来るんじゃないっ!!」
少女は涙を流しながら
「もうダメだよ…そんなことしちゃ…」
そんな最中に目が覚めた。
午前6時。やはり寝汗が尋常じゃない。酒の飲みすぎもあって頭がひどく痛む。
「佐伯さんに影響されたかな…俺まで変な夢を見るようになったな…ともかく酒は抜かないとな…」
シャワーを浴びる隆乃介。
その時はまだ、希美子と隆乃介の夢がリンクしていることなどまだ知る由もなかった…。
第5話 リンク・インストール