第四話 接近2~リンク、始まる~

夜7時。
約束通りに隆乃介の家へ向かう希美子。
普段ならこの時間帯に出かける、となると両親は散々ダメだと言うくせに、
行き先が「先生の家」となるとなぜか快諾。
親ってそんなものなのかしら…といぶかしげに思う希美子。

考えても仕方がない、とりあえず行こう。

ピンポーン。

「はーい、あ、来たね佐伯さん。どうぞ入って。」
「あ、はい…お邪魔します…。」
部屋の間取りは隣同士なので分かりきっているが、
希美子の家と違っていかにも独身男性のスタイリッシュな部屋という感じであった。
黒を基調として、きちんと片づけられている。

「先生ってA型なんですか?」
「え?そうだけど…どうして?」
くすっと希美子は笑った。
「な、なんだよー、何がおかしいんだよっ!」
「ここまで几帳面だから、絶対A型だろうなーと思って。そしたら当たったからつい…ごめんなさい、ぷぷっ」
希美子の笑いはしばらく止まらなかった。
そんな希美子を見て、隆乃介もふっと笑みがこぼれた。

「んー、もう一品あったらいいなぁー…ちょっと待ってて。」
「あ、そんなお構いなく…」
という間もなく器用に包丁を扱う隆乃介。サラダをこしらえるようだ。
トマトを取って何気なく包丁を使おうとしたときに手が滑って

「いてっ!!」
指を切ってしまった。

「先生!?大丈夫ですか!?」
希美子は急いで救急箱を探そうとするがなかなか見つからない…人の家ってやっぱり分からないことが多い…。希美子はとっさに隆乃介の怪我した手を取って傷口を舐めた。

「さ、佐伯さん!?」

あまりにとっさの事だったので、隆乃介の動揺が止まらなかった。
動揺が止まらないまま、隆乃介もとっさに

「大丈夫だからっ!!」

と希美子のことを跳ね除けてしまった。

「ご、ごめん…きゅ、救急箱ならそこにあるから…そ、それに大したことないし…」

希美子は跳ね除けられたまま、夢でのことを思い出していた。
少年の事だ。少年が自分のことを跳ね除けて

「来るなっ!!こっちに来るなっ!!」
と言われ、涙していた夢の中の出来事とかぶって、呆然としていた。
なぜか分からない…希美子の目から涙があふれ、止まらなくなっていた。

「さ、佐伯さん!?どうしたの!?さっきの事なら本当にごめんっ!!でも…どうしたの?」
隆乃介はどうしていいか分からなかった…跳ね除けたことが悪かったのか、
よくわからないけど自分を責めた。とにかく責めた。

「……似ているの……」
「え…似ている…?」
「最近変な夢をよく見るようになって…」
希美子は最近見る夢の内容を隆乃介に話した。

「そうなんだ…でも不思議だね。ペンダントが突然本当に首元にあるって。
きっと、何かのメッセージなのかもしれない。」
隆乃介は希美子をなだめるように優しく言った。
「メッセージ…?」
「うん、夢には何らかのメッセージが込められてることが多くて、
誰かの念を背負ってしまっているとか言われてるんだ。
だからそのペンダントは大事にしておいたほうがいい。」
「え、でも…」
「現実でも何かしらリンクすることがあるかもしれない。その唯一の手がかりがそのペンダントなんだ。」
優しく話してくれる隆乃介に対して、不謹慎かもしれない…希美子は確実に好意を抱き始めていた。
隆乃介もまた希美子に対して好意を抱き始めていた、何かしてあげたい…守ってあげたい…そう思い始めたのだ。

「今日は本当にすいません、でもお料理は美味しかったです。ご馳走様でした。」
「うん…じゃあまた明日、学校で…おやすみ…」
「はい…おやすみなさい…」
二人は後ろ髪をひかれながら、各々の家へと帰っていった。

第四話 接近2~リンク、始まる~

第四話 接近2~リンク、始まる~

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  • 青年向け
更新日
登録日
2012-04-27

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