cheerful person.5

テスト②

「おいしい・・・。おいしくて、もう泣けそう・・・。」
「大袈裟だよ、シユ君。」
今俺は、秋風が作ってくれたオムライスを食べている。その反応を見て、秋風はクスクスと笑っている。しかし、それも当然のことだろう。
俺が自分の家族以外の人と食事をするのは、実はこれが初めてだったりする。親戚の人などは例外だが、これは家族の付き合いだ。
俺個人の知り合い(しかも女子)が、自分のためにご飯を作ってくれることが、もう嬉しくて嬉しくて仕方がない。
「シユ君、午後はどうするの?」
「う~ん・・・どうしよっかなー?」
昼食まで作ってくれたのだ。どうせならもう少し居ようと思うのだが、じゃあ午後もひき続き勉強、というのもどうかと思う。
せっかくなのだから、パーっと遊びたいのだが、肝心の中身がないのだ。
「秋風さえ良ければ、俺はまだ居るけど・・・することが思いつかないんだよなー。」
「あ!じゃあさ!!」
あ、なんか秋風特有のトンデモ発言の予感。なんかこう、俺が考えてた予定が全て狂うような。
「私、シユ君の家に行きたい!!」
ほら、きた。
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「じゃあ、行こっか。」
俺の猛抗議があったものの、秋風は結局、俺の家に行くことになってしまった。
もう、不安しかない。なんか母親あたりが「士愉にもとうとう春が来たのね!!」とはしゃぎ、
あのバカ(父親)あたりが「あひゃひゃひゃひゃwwwwwww!!!ヤベっw不釣り合いすぎwあひゃひゃひゃひゃwwwwwww!!!!」
とか言いそうだ。母親は自信ないが、父親は自信がある。ムカつくが。
「シユ君の家、結構学校に近いんだね。」
「まあ、近さで選んだ学校だったからな。」
俺の家に行くには、電車に乗るのが手っ取り早いので、一緒に電車に乗っている。秋風は定期があるので、いつでも乗れるのだとか。
「そういえば、ずっと気になってたんだけどさ・・・」
「どしたの?」
電車に乗ってる間は何もないので、前々から気になっていたことを聞いてみることにした。
「秋風はさ、俺以外の人とはどうしてんの?」
「どうもしてないよ。」
・・・・・・・は?
「いや、俺以外にもいるだろ。友達。」
「たまに話すくらいならあるよ。でも友達って感じなのは今のところシユ君とリンちゃんくらいかな。」
なんだ、いるじゃん。
「いるじゃん。そのリンちゃんって子。」
「同じ学校じゃなくて、別の学校の子なの。今シユ君が聞いたのは、同じ学校の子についてでしょ?」
なるほど。どうやら秋風には、リンちゃんなる友達がいるらしい。おそらく、中学のとき一緒だったとか、そんな感じだろう。
色々話している間に、電車は目的の駅に到着した。
さて、家族はどんな反応をするのやら・・・憂鬱だ。
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「士愉にもとうとう出会いが・・・。がんばりなよ、士愉!!」
「あひゃひゃひゃひゃwwwwwww!!!ヤベっw不釣り合いすぎwあひゃひゃひゃひゃwwwwwww!!!!」
やっぱり。来ると思ったよ。
俺が秋風を家に上げた途端、両親が押し寄せてきた。父親は、こちらを見た途端に吹き出したが。
「あの、おじゃまします・・・。」
さすがの秋風も、両親(父親)の反応に面喰らったらしく、少し困惑気味だ。どうやら、フリーダムさでは、ウチの父親の方が上らしい。
「きみ、ブフッ名前は、クハハ何ていうのひゃひゃひゃひゃひゃwwwwwww」
いつまで笑ってんだこのオッサン。
「あ、秋風 華っていいます。ど、どうも。」
「秋風、それとまともに会話しない方がいい。延々と笑ってるだけだから。」
そう言って、俺の部屋に連れていく。そういえば、俺の部屋って見られてマズイものってあったっけ?と、思ったがまあ、あの父親を見せ続けるよりはマシだろう。
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「あ、ps3だ。」
俺の部屋に入ってすぐに、探索を始める秋風。別に何もないのだけれど。
「へー、シユ君って結構運動できるんだね。」
そう言って秋風が見ているのは、小学校のとき運動会で取った賞状だ。
「これでも結構走れるんだぜ。今はあんまり本気でやることは少なくなったけど。」
「ホントだ。中学校からは今のシユ君の表情になってる。」
中学校の卒業アルバムを見て、なんか妙なことを言ってきた。
「・・・どんな表情?」
「だるそうな表情。」
俺、そんな顔してたんだ。
「シユ君、ゲームしよ!!ゲーム!!」
「別に良いけど、俺、あんまり対戦系のゲーム持ってないんだよな。」
ここに来て、ぼっちの特性が出てきてしまった。とりあえず、適当なシューティングゲームをすることにした。
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「シユ君、強いよ~。」
結果は、俺の圧勝。ぼっちは、こういうオンラインで対戦できるゲームが大好きなのである。
「ごめんごめん。秋風、あんまりゲームしたことないの?」
見ていると、あまりコントローラーを動かすのに慣れていないようだったので、聞いてみた。
「ウン。ゲームはケータイのアプリゲームくらいしかしないから。」
とのこと。確かに、秋風の家にはゲーム機らしきものはなかった。
「喉乾いただろ?飲み物持ってくるな。」
さっきから、碌なもてなしができていないので、とりあえず飲み物を持ってこよう。ウン。
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「ハー・・・。」
シユ君が部屋を出て、少しの間1人になる。
「男の人の部屋って、こんな感じなんだ。」
もっと散らかってるものだと思ったのだが、意外と綺麗なものである。
そんなことを考えていると、携帯電話のメールの着信音がした。見てみると、それは弟の和也からだった。
「和也、明日来るんだ。」
和也は、よく私から本を借りたりする。今回も、それが理由でこっちに来るらしい。
「まあ、なんか適当に貸せばいっか。」
そう言って、カバンに携帯電話を戻す。そして、ある重要なことに気がついた。
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俺が麦茶を持って階段を上っていると、部屋から「あーーーー!!!」という声が聞こえてきた。
なんだろうと思い、部屋に入る。すると、秋風がいかにも困りましたという表情で
「シユ君・・・どうしよう・・・?」
と言ってきた。
「どうした、秋風?なんかあったのか?」
見たところ、部屋には何の変化もない。どうやら、これは彼女の問題なのだろう。
「家の鍵・・・ない・・・。」
・・・・・・・え?
「ってそれ、どうすんだよそれ!!家入れないじゃん!!」
「いや、明日弟が来ることになってて、その弟が合鍵持ってる。」
なんだ・・・じゃあ大丈夫・・・ではないな。その弟が来るのが明日なら、今日はどうするのだろう?
「その・・・さ。迷惑かもしれないけど、」
「じゃあ泊ってくか?」
「泊らせ・・・って、いいの!?」
さすがに、この状況で彼女が何を言いたいのかは察したので、こちらから助け舟を出すことにする。
まあ、状況的にはあまりよろしくはないが。背に腹は代えられぬというやつである。
「ありがと、シユ君!!あ、でもご両親は大丈夫なの?」
「大丈夫、絶対に大丈夫。」
テンションは凄いことになりそうだが。主に父親が。
「えっと、じゃあ・・・よろしくおねがいします・・・。」
「別に、そんな畏まらなくてもいいよ。」
しかし、これから大変だ。なんせ、母さんとあの魔物(親父)にこのことを知らせるのだ。
穏やかにいくわけがない。俺の戦いは、どうやらここからのようだ。

cheerful person.5

最近、字数が増えて来ました。

cheerful person.5

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-31

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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