パターン
僕は手首に刃をあて、勢いよく引いた。
「ッ!」
手首から赤い血が流れ出る。僕は滴り落ちる血と新しくできた傷を見て笑った。
ぺロ
僕は流れる血を少し舐めてコップを下に置いた。血はコップの中に1滴1滴落ちていく。
「とーりゃんせーとーりゃんせー。」
僕はコップにたまっていく血を見ながら口ずさんだ。
「こーこはどーこのー・・・」
バン!
いきなりドアが開き、誰かが入ってきた。
「あんた!またやってるの!!」
母親が僕の腕をつかみ、立たせて下へと連れて行った。
「やめろ!!」
僕は母から必死に逃げようとしたが、首に何かを刺され、意識が無くなった。
目が覚めると、誰かが僕を覗き込んでいた。
「おや目が覚めたね。」
覗き込んでいた男は顔をあげ、看護婦らしき女性を呼んだ。
「誰だ・・・」
僕は男に聞いた。男は僕を少し見て言った。
「私は一条だ。先生とでも呼んでくれ。」
「先生…か。」
一条医師は腰を上げ、出口に向かって歩き出した。一条医師がドアに手をかけるとき、僕は医師に声をかけた。
「先生聞いてもいいですか。」
医師は振り返った。
「なんだね?」
「ここは精神病院ですか?」
医師はため息をついた。
「そうだ。」
僕は笑って言った。
「そうですか。」
医師は看護婦と一緒に部屋を出た。部屋には僕一人だけになった。
何も聞こえない空間。僕は分からなくなった。
本当に僕はこの空間にいるのだろうか?
僕はここにはいない、ただの意識なのではないだろうか?
だとしたら僕はなんだ?医師と話した僕は?手首を切った僕は?今ここにいる僕は?
全てが別人だとしたら…僕は誰だ?今この部屋でこの時間を過ごしている僕は?
……僕は右手首を見た。そこには切った跡がくっきりと残っていた。
「……よかった。」
僕は笑った。手首の跡だけが僕を僕にする。
僕はベットから降り、部屋を出て階段を上った。
屋上に続く扉をあけると、風が吹きこんできた。
「誰!!」
先客がいた。14から15位の女の子が屋上の奥の柵に座っている。
「そんなとこに座ったらあぶねーぞ。」
僕は椅子を引き寄せて座った。
「どうでもいいでしょう。」
女は体の向きを変えた。
「自殺か?」
僕は途中で買った缶ジュースを開けた。女の体が少し痙攣した。
「…そうよ。悪い?」
女の声は少し震えていた。僕はジュースを飲みながら言った。
「別に。ただ、死ぬんならよそでやれ。」
女は鼻で笑った。いらっとした。
「なにそれ。後でなんで止めなかったか怒られるから?」
「違う。胸糞悪くなるからだ。」
女は顔を横に向けて目の端で僕を見た。
「じゃあ止めなよ。」
「めんどい。」
女は笑った。
「そう。じゃあね。」
「行ってらっしゃい。」
女は手すりから手を離して落ちて行った。
「・・・・・・・・ジュースうめぇ。」
END・・・・かもしれない
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