招霊機 「逝く処」 6章ササキリモート応用編

 ぶおん。
 美月渾身の一振り。
 十六夜丸の軌道から光が溢れだし、光は動物霊たちを一変にまとめて真っ二つにする。
(凄い・・・)
 まだ、刀の神通力についていけず一振りごとにふらつきながら美月は心底、十六夜丸の威力に驚いていた。
(複数・多量の霊魂に対抗できるんだ)
「美月」 
 いつのまにかJが傍にいた。
「どうですか、気分は」
 美月の黒目がちの瞳が招霊機を睨みつける。
「なんで最初からこれを渡してくれなかったの、アンタ」
 直ちに返ってきた、思わず耳を疑ってしまうJの返答。

「あなたが死にかけるのを待っていました」

「は?」
「私のこの判断は、霊能力者が力をワンランク上げるには臨死状態の時点が最も効率がいいというデータに基づいています」
「・・・そこまで放っておいて本当に死んだらどうするつもりだったんだ?」
「ご安心を。巫女を追い詰めるのは仮死の状態までです。それ以上の状態になれば救出・救命作業に移る予定でした」
「ざけんな!トンデモロボットが!」
「トンデモロボットではありません。私は『招霊機』、役目は霊能者を護ることです。霊能者の能力向上の介助もまた仕事の一環です」
 思わずJの脳天を狙って刀を振り上げる美月。
「標的が間違っています、美月」
 美月の手首を軽く握って、ぐいと強く捻じるJ。
「斬るべきは、佐々木の蟲毒です」
 まだ大量に放出されている動物霊軍団。
 マッド・ロボットを真っ二つにしたい欲求を押し殺して美月は彼らを斬り倒す。
「エクセレントです、美月。刀に力が追いついてきている」 
 自分も素手で動物霊軍団に対戦しているというのに人の評価をする余裕を見せつけるJ。
 一方の美月はすでに息が上がり始めている。
「・・・っ、斬っても斬っても金太郎、か!どんだけ動物を殺したんだ、この一家は!」
 美月の美しい形の両眉が逆ハの字になっている。
「大体、蟲毒って、造り方からして気に入らない」
「同感です。生き物をオモチャにしてはいけない。幸い初期の段階より、彼を取り巻く彼以外の霊体エネルギーが67%減少していますね―残りの23%全部取り上げましょう」
「そんなこともできるの?ってか、それなら最初からやれよ!」
「あなたが十六夜丸を扱えるまで私なりに辛抱していました。あくまでも美月の修行の方が優先です」
「辛抱していた・・・?じゃ、こいつら私のスパークリングの相手扱い・・・?」
 開いた口が塞がらない。
「そういうところです。だが今、彼らは役目を終えました」
 彼の視線が佐々木に真っ直ぐ向けられ、その片手が挙げられた。
 ばしゅっ!
 目もあけていられない強い光が彼の掌からほとばしり、網となって動物霊達を捕らえた
「うわ。」
 一瞬にして動物霊達はの手のひらに光の網ごと吸い込まれる。
 その鮮やかで滑らかな光景に美月は心の底から感心した。
(よくそんなに呑み込めるー)
 果たして自分にこれだけの量の悪霊を収容できるか。そのまま、正気を保ちながら自分の内に留めておけるだろうか。
 できない。おそらく自分よりも上級の霊能者でもできないだろう。
 生身の人間でこんな芸当をすれば体も精神も『破裂』してしまうだろう。
 だからこそ造られた招霊機だと頭で解っているのだけど、己の力との差を思い知らされて悔しい。
「佐々木君」
 美月の心の内の評価やら嫉妬やらなど知る由もないロボットはそれこそ追い詰められた獣の表情の少年に歩み寄った。
「―あなたは何度か蟲毒に失敗している」
 佐々木はは驚いたというような、殺気が抜けたというような、今まで美月達が見たことのない顔になった。
「あなたに殺された動物達の一部の記憶が、あなたは自分達の声を聞いてくれた、と教えてくれました」
 連続する佐々木の、極普通の少年の表情。
「たった数体ですが―あなたが助かって欲しいと望んでいます。誰を恨むではなく、ただ自分達と会話できた主人を信じて殺されていった動物が蟲毒になれるわけがない」
「・・・・・・。」
 佐々木の眼球がうろうろと動いた。
「彼らはあなたを許しています―蟲使いの家に生まれた故に可愛がっていた動物を我が手で殺さざるを得なかったあなたを」

 長い沈黙が続いた。
「はあーあっ」
 そして静寂を引き裂く佐々木の溜息。
「・・・ほんっとお前、どっかのオバチャン霊能者かよ・・・お涙頂戴的な霊視ばっかりしやがって」
 
 がしっ。
 佐々木の手がJの胸倉を掴んでひきよせた。
「このっ!」
 それまで緊迫した面持ちで事を見守っていた美月が足を踏み出す。
「お構いなく」
 抵抗する様子も見せずJは軽く手を挙げて二人を制止する。
「ホント、おまえって紳士的だな」
 Jに顔を近づけ佐々木はニヤリとした。
「その鉄腕ア○ムぶった清純フェイス、崩壊させてやる」
「どのように」
 Jの表情は変わらない。
「さっき、おまえ俺の蟲毒たっぷりと喰ってやがったな」
「喰ってはいません。お預かりしているだけです」

「どっちにしろ一緒だよ―おまえの体の中にはたっぷり霊体が詰まっている」

「あ・・・!」
 美月は声をあげた。

 佐々木が大きく息を吸い込み、叫んだ。
「ササキ・リモートォ!俺を締め殺せ!」
 
(Jの体内には佐々木に忠実な蟲毒が詰まっている!)
 美月は地面を強く蹴った。
(それらをJが再現したら―)
 その前にコントロールセンターである佐々木の意識を消失させない限り―。
(Jが殺人機になってしまう!)
 さっきまでの木村杏奈のように。

 しかし、間に合わなかった。
 佐々木の顔面を狙った美月の拳は、Jの腕によってはじかれた。

「J!」
 地面に叩きつけられても尚、身を起こして叫ぶ美月。
「ボケるな、J!」
 美月は再び飛び出した。
 無表情で人間の首を絞めているロボットに向かって。
「J!あんた佐々木に操られてるんだってば!」
 美月はJにとびつき彼の指を引き剥がそうと試みた。
 だが、人間の女子の力がロボットにかなうはずがない。
 佐々木の首に喰い込んでいるJの指は1ミリたりとも動かない。
 美月は唸った。
「あんた最低ね!」
 罵倒の言葉に佐々木の苦悶の表情の中に笑みが浮かんだ。
「・・・だから死ぬに・・・値、する」
 まだ、意識がある。
 佐々木リモートは終わらない。
 彼の意識が消失するか、Jの指が佐々木の息の根を止めるか、どちらが先かで生死が決まってしまう。
 美月は二人から離れた。
 その手に月光に照らされる十六夜丸が握りしめられていた。
「ごめんっ、J」
 美月の狙いはJの前腕―切断は出来ないだろう、だけどダメージを与えれば・・・。

 しかし、一歩遅かった。
 
 最後に、へっ、と笑ったきり、佐々木の呼吸が止まった。

「あーっ!」
 美月の絶望の声。


「ホントウ、ハ」

「え?」
 突然、沸いて出た、音声。
 美月は耳を澄ませた。

「コノママ、アナタヲ、シメ、コロシテモ、イイ」

「・・・J・・・?」

 美月は視線をJの横顔に移した。

「今の・・・あんた?」
 馬鹿な。ロボットに殺意なんて。
 ありえない。
 いや、あってはいけない。

「J・・・?」
 彼女の呼びかけにJは視線すら返さない。
 佐々木の気管を圧迫する指の力も全く緩んでいない。
「J!」
 美月は叫んだ。
「駄目よ!」

「ダケド」

「アナタノ、オソレテイルノハ、生命ヲ 断タレル事デハナイ」

 Jの唇が動いた。

「アナタノ恐レてイることは」
 
 ふっとロボットの指の力が佐々木の首から離れた。
 それを見届けた美月はJから離れる。
 
 なぜか、彼らの傍にいてはいけない、そんな気がしたのだ。

 真夜中の公園の真ん中、Jと佐々木だけが月明かりの元にいる。
「この世に生き残って法に裁かれ刑に服す事―これがあなたの真実の地獄です」

「ゲホッ!」
 佐々木が激しく咳き込んだ。

 意識の戻った佐々木の目がうっすらと開いている。
「おまえ・・・、まさか」
 ガシッ。
 Jの手が佐々木の腕を掴んだ。
「あなたに返さなくてはいけないものがある」
 佐々木の顔を覗き込みJは微笑んだ。

 Jのボディの周辺が紅い光を帯び始めた。
 美月は息を呑んだ。
 光はだんだん強く揺らめきながら、その範囲を拡げていく。
 やがて、それは燃え上がる炎と化しJの体を包み込んだ。
「あ・・・」
 美月の目は熱も煙も出さない不思議な炎の中に現れだしたモノを見逃さなかった。
 顔―佐々木に生命を奪われ使役された罪のない動物達の顔。
 紅く白く煌きながら、無数の動物霊達の視線は総てJの下敷きになっている佐々木に突き刺さった。
「あ、あ」
 数え切れない動物霊達の憎悪の邪視に気おされ佐々木は彼らしからぬ怯えた声をあげた。
「彼達にかけられていたコントロールを解除しました」
 紅蓮の炎の中、Jが微笑んだ。
「どうぞ、しっかり受け取って下さい」
「あ!あ!」
 佐々木は腕をぶんぶんふるった。
 しかし、ロボットの手は離れない。
「あなたのことを許している動物は全体の1・4%です。残りの98・6%は・・・お解り戴けますね」

 ズッ。

 一瞬で燃え上がる炎がJの腕を伝い、佐々木の腕へ体へ流れ込んだ。

「うわあああ!」
 目にもとまらぬ速さで全身を痙攣させる佐々木。
 彼の網膜は、すでに目の前のJの姿を映してはいなかった。

 紅い―。
 ―次々になだれこむ動物霊達が彼の内臓を精神を喰いちぎる。
―破れた内臓の血液がどくどくと流れ出る。
 血液の色は怒りの炎の色と混ざり合い、これ以上はない紅い色と疼痛となって彼の脳内を支配した。
「うわあああ!」
 紅い紅い色彩の中に、佐々木の意識は消失した。

「何だったの?今のは・・・」
「さっき、捕獲した動物霊を注入しました」
 些細なことを話すような口調でJは答えた。
(それって・・・人工的で確実な『呪』・・・)
 美月は、白目を剥いて大量の泡を吐いて倒れている佐々木から手を離し立ち上がったJに近づいた。
「・・・死んだ?」
「気絶しているだけです。」
 Jはいたって真顔でつけたした。
「殺せば私がロボット省の工場でスクラップにされてしまう」
 ・・・ロボットジョーク?
「聞きたいことがあるんだけど・・・J」
「何でしょう」
「さっき、本当にササキ・リモートってやつにかかってたの?」
 それはロボットとしては致命傷な欠陥だ。
「『試作品』なら簡単にコントロールされるでしょうね」
 Jは首を振った。
「しかし、私のような正真正銘の『招霊機』に『お預かり』された霊魂は、他のいかなる力が働こうとも影響されることはありません。あなた達人間の霊媒と同じです」
(じゃ、何故かかったフリしたんだよ) 
 美月は心の中でつっこんだ。
 まさか、こいつ、人間をおちょくったとか・・・。
 だけど、あのJがつぶやいた台詞が脳裏から離れない。

―コノママ、アナタヲ、シメ、コロシテモ、イイ―

(このロボット、殺意の感情があるのか?)
 美月にうっすらとした恐怖の眼差しを投げかけられていることにに気づいているのかいないのか、当のロボットは視線をまっすぐに向けている。
「美月。お兄さんに連絡しました」
「・・・は?」
 会話途中での圭の名前の出現にを美月は戸惑った。
「佐々木を重要参考人として連行してもらいます」
「あ、ああ・・・」
 素直に、いや、ほとんど反射的に美月は小さく頷く。
「だけど、多分、木村さん殺しの犯人として立件できないんだろうな」
「手柄は手柄です、美月」
「それでもいいの?こいつはJ・・・あんたが捕まえたようなものよ」 
「手柄は私にとって何の意味がない。それに・・・」
 Jはちらと視線を下げた。
「私は非合法ロボットだ。表にでないほうがいい。それに、美月。これでお兄さんに、あなたに怪我させられたこと許してもらえればいい」
「え?何、今朝の話、聞いてたの?」
 Jは頷いた。
 美月は目を剥いた。
 ロボットにフォローされるなんて。
「ち、ちょっとJ?あれは怪我させようって思ってやったことじゃないわよ。何かと兄さんが憑けて帰ってくるからで・・・」

 かたかたかたかたかた・・・。

 美月の言い訳は突然聴こえてきた不審な金属音によって中断された。

 振り向くと、かつて杏奈を収容していた招霊機・試作品(プロト)が全身を細かく振動させている。

「て・・・」
 美月は体を強張らせる。

 この気配、忘れようにも忘れられない。

「『巨大容量の霊体(ビッグファット)』?」
 美月の母親を殺害した謎の霊体。
「なんで、今、ここに?」

「ここに、試作品(プロト)が存在するからでしょう」 
 Jが答える。
「『巨大容量の霊体(彼ら)』は魂のない器を目掛けてやってくる」

 全身をうねらせながら試作品(プロト)の体が起き上った。
 
 どごっ。

 鈍い轟音をたてて試作品(プロト)の頭が千切れて真っ直ぐ上空に飛んだ。
 ブシャーッ。傷口から黒い液体が勢いよく噴き出す。

 黒い液体が作り出す霧の中に、透明な形の定まらない黒い巨大な軟体なモノが映し出された。
「こいつ!」
 美月が鋭い刀先を軟体物質に突き刺した。
「くたばれ!」
 一気に彼女は刀を突き刺したまま下方へと引き下げる。
「ん?」
 刀を『巨大容量の霊体(ビッグファット)』に突き刺せたのはいいのだが、それきり押しても引いても動かせない。
 強烈な牽引感を我が手に感じる。
 柄を握りしめるのがせいっぱいである。
(神刀(かたな)を取られる!)
 焦る美月の耳にJの声が入ってきた。

「神刀から手を離してください」

「はあ?」
 美月は声をあげた。
「こんな訳わかんない奴に神刀渡したらどうなるか解らないでしょ!」

 ロボットの真意が掴み切れない。
「きゃっ!」
 Jはそんな人間に一秒たりとも考える時間すら与えなかった。
 美月の襟首を掴み、後方へとブン投げたのだ。
「何すんのよ!ロボットが人間に暴力を振るかぁ?」
 残された憐れな神刀はズルズルと『巨大容量の霊体(ビッグ・ファット)』の内部へと引き込まれていく。
「刀潰れたら弁償だからね!」
 美月の抗議を無視して、Jは片手を前方に突き出した。

 Jの掌が『巨大容量の霊体』(ビッグファット)に触れる。

 シュワッ。
 微かな音しか聞こえなかった。

ドゴーン。

「わあっ!」
 闇に慣れた網膜を突き刺す閃光、感覚を持つ者総ての細胞組織を揺るがすような振動と爆音。

『巨大容量の霊体(ビッグファット)』が破裂して高く上空へとぶっ飛んでいく。
 
「わあああっ!」
 次には間をおかず美月に耐えがたい衝撃が襲いかかる。
「もう大丈夫です」
 すぐにJの声と共に、爆風は止んだ。
 それでも、美月の体の震えと息のあがりは止まらない。
「・・・一体、何したの?J」
「衝撃波で破壊しました」
 首をかしげてている美月にJは説明してきた。
 驚きで声がでない。

 時間にすれば数秒もなかったであろう、その短い時間に、あの衝撃の中で伝わってきてしまった絶望的な恐怖の感情。
(じゃ、あれは『巨大容量の霊体(ビッグ・ファット)』の思い―?)
 『巨大容量の霊体(ビッグ・ファット)』の残した感情に影響され、まだ止まらない震えを必死で押さえながら美月は思った。
(『巨大容量の霊体(ビッグ・ファット)』に感情というものがあるのなら・・・もしそうなら、何故、他の生命を玩具(おもちゃ)にするんだろう?)
 美月の前の地面に『巨大容量の霊体(ビッグ・ファット)』から解放された十六夜丸がぐさりと突き刺さった


「どうやって報告すればいいんだよ・・・」
 手柄を立てたというのに頭を抱える圭。
 Jからの連絡を受けて急いでここへ父を車に乗せて引き連れて飛んできたのだ。
 今度は『水月様』も邪魔をしなかった。
 そのお陰で、父・和夫は思い存分に美月の頭頂部にお仕置きの拳骨をくらわせることができたのだ。
「全部、お前がしたってことで正直に報告すりゃいいじゃん、圭」
 いつもの調子に戻った父、和夫が無責任きわまりないアドバイスをする。
「霊能刑事、水月圭、っスか?頭おかしくなったって思われるよ」
「たまたま、ここに犬の散歩に来たら、こいつが倒れていたとか、は?」
「ああーっ。うち犬いませんし!真面目に考えて下さい!」
 サイレンの音が聞こえてきた。圭の連絡を受けた警察がもうすぐ到着する。
 Jが両手に招霊機・試作品の残骸を抱えた。
「それ、どうすんの」
 父の問いに
「残りは私のメンテナンス用の部品においしくいただきます」
「・・・ロボットジョーク?」
 圭が呟く。
 そしてJは軽く頭を下げた。
「では」
 Jの言葉に草むらから美月が顔を出した。
 どさくさに紛れてどこかに放りっぱなしにした三日月丸を必探しているのだ。
 父が言うには新たな十六夜丸の出現に三日月丸がヤキモチを焼いてワザと隠れているらしい。
「J、どこに行くの?」
 その返答はない。
「俺さ」
 去りゆくJの背中に圭が呼びかけた。
「俺、あんたのこと覚えてるよ。美月を連れてきた人だよな」
 歩みを止め、少しだけJが振り向いた。
「覚えている?当時、学生だったんだ・・・あんたには色んな意味で感謝してる」
 しかし、わずかに見えるロボットの表情に変化はなかった。
「だからよ、ロボットさんよ。気が向いたらまた遊びにこいや」
 車にもたれかかり顔だけはよそ見して宮司・和夫が言った。
「サービスすっからよ」
「何のサービスだよ」
「巫女の接待」
「巫女って美月しかいねーじゃん。貧乳に接待してもらっても迷惑なだけだ」
「失礼ね。貧乳とて立派な1ジャンル」
 アホな台詞が飛び交う中、Jのぽつりとした声が侵入してきた。

「もう、お会いすることはないと思います」

 いっぺんに口を閉じる水月一家。

「美月」
 澄み切った青い瞳がこちらを見つめていた。

「生き残れてよかったです・・・健やかに」

誰の言葉の返りを待つこともなくJは公園の木に飛び上がり、あっという間に行ってしまった。

「もう会うことがない、ってか?」
 美月が呟く。
「私、ありがとうって一度も言っていないのに・・・」

招霊機 「逝く処」 6章ササキリモート応用編

お付き合い下さってありがとうございます。感謝、感謝。

招霊機 「逝く処」 6章ササキリモート応用編

『招霊機』ジェイソン・ミナツキモデル001―通称「J」。彼は霊魂を収容し再生し、また攻撃・破壊する機能を持つ霊能者守護用ロボットである。

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-04-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted