声

男は扉の前にいた

遮る壁のない無限にひろがる暗闇のなかに


身の丈を遥かに越えた大きな木製の扉がある



「これは、夢であろうか?」


そんなことはさして問題ではない


過去の亡霊たちが、青白く闇に浮かび


なんのことはなく、男のまわりをさ迷い歩く


目ざとさを感じつつも


「開けてみたい!」との一声


そう!それが肝要なこと



ここにあっては

おまえだけが、それを開く鍵をもっているのだから


「お開けなさい」

誰かがそっと彼の耳元で優しくそう囁く

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-27

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