無の視界
プロローグ
現代社会、それは非常に億劫だ。勝手に作られた時間というものに縛られ。時計を見ながら暮らす。人間それが時にものすごく嫌になる。大建大学2年生の東山哲司その一人だ。彼は大学での生活に嫌気を感じていた。彼は勉強はできるほうだった。おかげで高校もいい高校に行けた。大学も地方だが割と有名大学へ行ったほうだ。だが、不満だった。彼はプライドが高かったのだ。そのくせ所詮地方の大学
だ。そもそも大学に入ったのも、今の多くの若者と同じで世間体とプライドのためだ。「はぁ・・・」哲治は大きくため息をついた。理由はない。ただため息をついたのは不安だったからだ。やはり理由はない。いつものように大学近くのアパートから、大学へ猫背のなりながら歩いている途中だ。毎日同じこの光景を見て、毎日同じような人を見る。ただその人たちも、周りの光景も頭の中へは入ってこない。なぜならその人たちと自分は何の関係もなく、頭に入れても意味がないからだ。というより頭に入ってこない。今日もそうなると思っていた。だが普段とは違う、甘い誘惑する香りがした。
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