【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 4(3500字)

夏木は本当に毎日来て、イスに座って眠ったり本を読んだりしていた。
それとは関係ないが、リハビリの成果は目に見えて上がった。
「はやく学校にいけるようになるといいね。」
さやかは屈託無く笑う。
学校・・さやかにそう言われるまで、思いつきもしなかった。
それで、マミは自分が将来に絶望していたことに気づいた。
「・・うん。」

マミはさやかと同じ学校に行くことになった。
私立の名門校。編入試験の問題は全く訳がわからなかったが・・。
「バカがバカと一緒にいれば本当のバカになる。」
夏木は平然と言った。

「はい、それじゃ自己紹介いってみよう!」
「巴マミです。・・よろしくお願いします。」
同じクラスになったさやかが手を振る。

転校初日から、授業は編入試験以上に訳がわからなかった。
自分だけ間違って大学生の教科書が配られたのではないかと思えてくる。
「ねぇ、勉強わかる?」
「全然わからない・・」
「よし、じゃ一緒に宿題しよう。」
「え・・」
「大丈夫!私も全然わからない。」
さやかは何の心配もなさそうに笑う。

「まどか〜。勉強会、マミさんも一緒にやるって。」
さやかはマミを、まどかと呼んだ子のところに連れて行った。
「ほんとに?良かった〜」
「まどかは学級委員で、私たちの勉強の面倒を見てくれているんだ。」
さやかが紹介する。
まどかはマミを見て
「私、鹿目まどか。まどかって呼んで。」
笑った。
「え・・」
「いいって。」
「うん。」
「あと暁美さんも一緒だから。」
さやかは教室の隅のいすに座っている子を指さしていう。
ほむらは慌てて頭を下げた。何かこう、暗い感じがした。

4人は暁美の家の車で、まどかの家に向かった。
「暁美さんは心臓が悪いから、長くは歩けないんだ。」
さやかが説明する。
車を運転しているのは、お抱えの運転手らしい。

「やあ、こんにちは。」
まどかの家に着くと、気のよさそうな中年の男が出迎えてくれた。
「ただいま〜」
「こんにちは〜」
「こんにちは・・」
それぞれが挨拶をする。
「あの・・はじめまして。巴マミといいます。」
「こちらこそはじめまして。まどかのパパです。まどかをよろしくね。」
「は、はい。」
心が少し痛んだ。

宿題はとてもたくさんあった。
1つの問題を解くために必要な前提の知識があり、
その知識を理解するために必要な前提の知識があり、
・・それを1つ1つまどかが説明してくれる。
「ここで加法定理を使って・・」
「カホー定理?」
「・・えっとね。三角関数っていうのがあってね。」
宿題は遅々として進まなかった。

部屋の扉がノックされる。
「息抜きにケーキはどう?」
まどかのパパだった。
ケーキはとてもおいしかった。
「このケーキ、まどかのパパの手作りなんだよ。すごいよね〜。」
さやかがうれしそうに言う。
「う、うん。」
「遠慮しないで食べてね。私のパパ、こういうの好きだから。ほむらちゃんも。」
「はい・・」

マミの成績はぶっちぎりの最下位だった。
それと同じぐらいひどく、1つ上の順位のほむら。
多少はマシだが、さやかの順位はその1つ上。
つまりはぶっちぎりのバカトリオだった。
「マミさんや暁美さんはケガしたり病気だったから仕方ないけど、私はやる気がないからな〜。」
とさやか。
逆にまどかは1位。それと同じぐらいの成績なのが佐倉杏子だった。
杏子は明らかに、マミたちを軽蔑していた。
「佐倉さんは特待生なんだ。私たちみたいのが気にくわないのは当然さ。」
さやかが言う。

4人は毎日のように、それぞれの家で勉強会を開いた。
ほむらの家は絵に描いたような豪邸だった。
家政婦さんがいて、紅茶とケーキを出してくれる。
「この紅茶おいし〜。どこで買ったかわかる?」
「パパがブータンで買ってきたみたい。」
「ほむらちゃんのパパって何やってるんだっけ?」
「・・よく解らない。本人は探検家だって、インディージョーンズだって言ってる。」
「なにそれ〜。」
広い庭に置いた机で、4人は勉強した。
「これは抗力を求める公式に当てはめて・・」
「抗力って何?」
「・・えっと・・流体に働く力で・・」
さやかが池の鯉に、ケーキのかけらをあげていた。

さやかの家は、丘の上にある豪華なマンションだった。
さやかのママが、緑茶と和菓子を出してくれる。
「マミさんは彼氏いるの?」
マミは首を横に振った。
「最近恭介君とは?」
まどかがさやかに聞く。
「なんか最近忙しいみたいでさ〜なかなか会えないんだよね。」
「そっかぁ〜でもいいな〜」
まどかとさやかがファッション雑誌を開いて話し始めたので、
マミとほむらは2人で問題を出し合った。
「特許を許可する省庁の名前は?」
「・・東京特許許可局・・」
「ぶー。遅いからだめ。」
「え・・とうきょうとっきょきょきゃきょく。」
「ぶー。」
「とうきょうとっきょこきゃこきゅ!」
「ぶー。」
「東京特許許可局!」
「ぶー。」
「え?」

マミの家は普通のマンションだった。
家に誰もいないので、コンビニでジュースやお菓子を買っていった。
「お線香あげさせてもらってもいい?」
まどかの問いに、マミはうなずく。
仏壇には今よりもっと若い夏木と、夏木の妻、幼稚園ぐらいの娘の写真が飾ってあった。
「そういえば夏木さんは元気?」
皆で線香を上げた後、ポテチを食べながらさやかが聞く。
「とっても。」
「だろ〜な〜」
「夏木さんって?」
「・・パパの会社の友達・・」
「へぇ〜」
「あれは怖いね。教育パパだね。我が子を千尋の谷に突き落とすタイプだよ。」
「悪い人じゃないんだけど、ね。」
「まぁ、いい人よりはいいと思うよ。私は好きだな。」
「あ〜恭介君に教えなくっちゃ。」
「え?何で?何でそうなるの?」

そうこうしているうちに、マミとほむらの順位が入れ替わった。
さやかは相変わらずだったが、
まどかは杏子に抜かれた。
3人は申し訳なくなって、まどかに
「もう勉強会は止めよう。」
と言ったが、まどかは
「気にしなくていいよ。私は1番を取るために勉強しているわけじゃないから。」
と、取り合わなかった。

それから、勉強会の空気が少し変わった。


****


その数日後、マミとほむらが体育を見学していると、杏子がふらりと近づいてきて言った。
「世界には五体満足でやる気があっても、金が無くて勉強できないやつがたくさんいる。
  お前ら一体なんなんだよ。お前らみたいのを見ているとイライラしてくる。」
マミは何も言い返せなかった。
「お前らみたいのが大人になって権力握って・・だから世界はいつまでたってもよくならないんだよ。」
ほむらは隣で泣いていた。
「ほ、ほむらちゃん、大丈夫?」
息せき切って走ってきたまどかが、ほむらの肩をささえる。
「何々?どうしたの?」
教師が訪ねたが、誰も、何もしゃべらなかった。
次の日から、杏子は無期限の停学となった。


****


1週間後、朝の会で重い空気をまとった担任がぼそぼそとした声で言った。
「今日は・・みなさんに悲しいお知らせがあります。」
それから何秒か、担任は下を向いて沈黙したが、やがて
「美樹さんが・・亡くなりました。」
ぼそっと言った。

マミの心は、その言葉の意味を捉えられなかった。
何かが凍り付き、全てを拒否した。

周囲の時間がものすごい勢いで早回しされる。


****


何日かの後、朝の会で重い空気をまとった担任が震える声で言った。
「今日は・・みなさんに悲しいお知らせがあります。」
マミは、あまりのデジャブに、また同じ知らせを聞くことになるのかと身構えた。
・・が、担任はこう言った。
「佐倉さんが・・亡くなりました。」

心の中を何かが駆け抜けた。実体の無い、熱さも冷たさもない何か。
特に親しい関係ではなかったが、
直感的に失ってはいけない人間を失ったことに気づいた。
そしてもっと重大な事実。多分マミが殺したということに。

また、周囲の時間がものすごい勢いで早回しされる。

マミは大声で叫ぼうとしたが、声にならなかった。
次に起こることが解った。


****


ぴたりと時間が止まる。
「・・悲しいお知らせがあります。」
担任の声は、死人の声のように生気が感じられなかった。
「暁美さんが亡くなりました。」


****


あらん限りの叫び声。
それがマミ自身の声だと気づくまで数秒かかった。
気がつくと、宇宙船のベットの上だった。
声が出なくなって、荒い息をする。
しかし、叫び声は続く。
叫び声の元は、モニターだった。
・・・・あれは、魔女。

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 4(3500字)

【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 4(3500字)

マミは学校でまどか、ほむら、杏子と出会う。 そして3人が死んだ。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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