【二次創作】【魔法少女まどかマギカ】まどかを救うことにした 3(2300字)
宇宙船の中のマミの部屋。
マミはもやもやした気持ちを抱えつつ、モニターを見つめていた。
モニターの中では、さやかが魔法少女になっていた。
・・確かにマミがさやかを魔法少女に誘った。
・・さやかはまどかを救った。
けれど。
さっきキュゥべえの話を聞いたときと同じ・・いや、それ以上の。得体の知れない不安を感じた。
・・さやかが魔女に殺されるかもしれないから?
確かにそれも怖い。
が、死ぬよりもっとひどいことが起きそうな、嫌な予感。
・・確信はないが、今のマミが置かれている状況が、それと深く関わっているような。
・・いや、マミが置かれている状況そのもののような。
キュゥべえは、
「君は元いた世界に戻れる。」と言った。
ただ、「目的は言えない。」とも。
・・SF映画なんかだと、宇宙人に改造されて怪物になるパターンはよくある。
マミは自分のお腹を見つめた。
そのうちここからとんでもないものが出てくるのかもしれない。
多いにありえる。
・・だとすると、あの第9世界とやらは一体何だったのだろ。
単に改造するには手が込んでいる気がする。
そういえば生物保護がどうとか言っていたが、
あれは人間が環境を破壊しているのを止めにきたということなのだろうか。
そういえばそんなマンガがあった気がする。あれは・・・・
すぐそこまで出てきているのに結局思い出せず、
あきらめてベッドに横になった。
考えてもわからないなら、キュゥべえに聞いてみる。
・・とりあえず「元の世界の」マミについて・・
マミはいつの間にか眠っていた。
****
病院のリハビリ室・・マミはまた、夢の中にいた。
元いた世界での記憶。
体は信じられないぐらい、いうことをきかなかった。
手すりにつかまって立ち上がろうとして、そのまま崩れ落ちる。
車いすに戻ることさえできなかった。
「まぁ、あせらないことです。」
リハビリ担当医は感情の感じられない声でそういった。
暑苦しくないのが救いだった。
「恭介、がんばって。」
教育ママのような、暑苦しい声が聞こえた。
見ればマミと同じようなリハビリをしている男を、彼女だか姉だかが励ましていた。
年は2人ともマミと同じくらい。
なんとなく嫌な感じがした。
女のほうがマミの視線に気づいたので、慌てて視線をそらした。
その2人とはリハビリ室でたびたび会った。
2人の会話から、恭介は交通事故で右足を骨折し、そのリハビリをしていることが解った。
女はさやか。2人は幼なじみでマミと同い年。
「恭介すごーい。」
さやかが拍手している。
「あの人うるさいです。」
マミはリハビリ担当医に言った。
「・・ここは私語や雑談を禁止していないんだ。・・まぁ、いろんな人がいるから我慢してほしい。」
「・・・・」
恭介は将来有望なバイオリニストらしい。
一度ここで演奏を披露して以来、彼の評判はすこぶるいい。
彼の演奏は・・まぁ、うまかった。
もちろん、父や母と聞いた本物のバイオリニストの演奏とは比べるべくもなかったが。
「パパ・・」
その時を思い出し、涙がこぼれそうになる。
「今日はもう・・」
「わかりました。」
リハビリ担当医はうなづいて、マミの車いすを押す。
車いすは少しだけ動いて、すぐ止まった。
見上げると夏木が立っていた。
「調子はどうだ?」
嫌なタイミングで現れる。
「まずまずです。悪くはありません。」
マミがだまっていると、担当医が代わりに答えた。
「良くもないんだな?何が原因だ?こんなところに長くいたいわけじゃないだろう?」
なんて言い方。好きでこんなところにいるわけがない。
「医者の見立てでは杖をついて歩けるぐらいにはなるそうじゃないか。
だったらそれなりの努力をしろ。この部屋の中で一番腑抜けているのはお前だ。」
「そんなこと!」
そんなことわかっている。
「お前の父親は誰よりも努力する人だった。恥ずかしいとは思わないのか?」
涙が溢れた。
もう何をどうすればいいか解らなかった。
「まぁ」
「あんた何なんだよ。」
担当医と、若い女の声がかぶった。一瞬後にさやかの声だと気づいた。
さやかの声に、部屋が静まりかえる。
「いきなり来てえらそうに。怪我をしたのはこいつであってあんたじゃない。」
「・・私はこの子の保護者だ。君こそ何だ?」
「私はマミの友達だ。毎日マミと会ってる。」
夏木が渋い顔をする。
「マミが辛いときにそばにいてやれなくて何が保護者だ。」
「もうやめて!」
さやかに情けない姿を見られるのも、庇ってもらうのも耐えられなかった。
「もう・・」
「君がマミの友達だということは解った。君の気分を悪くさせたことについてはすまないと思う。」
夏木が淡々としゃべる。
「だが、私とマミの事に関しては、私たちの都合があることを理解して欲しい。」
夏木は誰からも反論がないのを確かめると
「行くぞ」
マミの車いすを押して部屋を出た。
「涙をふけ。」
テッシュを手渡す。
「そうしてほしいなら、毎日来てリハビリを眺めていてもいい。」
マミは涙をぬぐいつつ、首を横に振った。
「遠慮するな。というかもう決めた。嫌だと言っても毎日来る。嫌なら頑張れ。」
・・あきれた。知らずに笑ってしまう。
「友達、か。」
夏木がつぶやいたので、
「夏木さんは友達少なそう。」
と、マミは思ったままを口にした。
夏木が薄く笑ったのが聞こえた。
それから、さやかとはちょくちょく話すようになった。
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