ふたりの絆⑥

第3章 運命の言葉

アカリが発した言葉とは、何なのか?

それは、ヒカルがアカリを2回目のデートに誘った時のことだ。

アカリを、ヒカルの地元にある谷汲山のお寺に連れて行き

そこで、アカリに初めてホタルの話をしたのだ。

「そうだったの、それであんなに元気なかったんだ。」

アカリは、ヒカルの気持ちを察するように言った。

「まあ、死んでしまったものは仕方が無いけどね。」

ヒカルは、空元気を出して笑って見せたのだ。

「そうだね、仕方のない事だもんね。」

アカリは少しの間を置いて、ヒカルにこう話した。

「私はホタルの生まれ変わりで、貴方と出会う運命だったのよ。」

アカリは真顔で言った。

(何を言っているんだ、この子は・・・頭の中大丈夫なのか?)

普通の男なら、こう思うのが当たり前だろう。

でも、ヒカルは違ったのだ。

ホタルの話をした矢先に、生まれ変わりとか出会う運命だったなどの

言葉を出してきたアカリの感性に驚いたのだ。

アカリには申し訳ないと思うが、あの場面でこんな言葉が出てくる女の子は

100人に1人、いや1000人に1人でもいないだろう。

ヒカルの心理状態とアカリの言った言葉が上手く重なってしまった。

そういってしまえば、その通りだった。

ヒカルは、自分の頭の中に電気が走ったのを覚えた。

それほど、アカリが言ってくれた言葉が嬉しかったのだ。

「ありがとうな、アカリ。」

御礼を言うヒカルの手は、いつの間にかアカリの両手を握り締めていた。

この瞬間を境に、ふたりの絆が生まれたのです。

口では上手く説明できないが、それまで他人だった2人が

以前から知っていたような感覚。

そう、ちょうど幼馴染に会えたように、仲良くなったのです。

それからの2人は、自然に手を繋いだりして、まるで恋人同士に見えたことだろう。

ヒカルはアカリを時間の許す限りデートに誘っていた。

2人にとってのデートとは、時間が長ければいいに越したことはないのだが

たとえ10分、いや30分でも2人だけの空間があればよかったのだ。

「アカリ、何いつもの場所で待っていてね。」

ヒカルは、慌てて車を取りに行く。

会社の近くのコンビニで待つアカリを迎えに行く為だ。

そこから、ヒカルの行きつけの喫茶店に行くのである。

これが、2人の昼休みの日課になっていた。

しかし、楽しいときは続かないものである。

6月の初めのことだった。

いつものように会社の昼休みを利用して、ヒカルはアカリを喫茶店に連れて行ったのだ。

何かアカリの様子がおかしいことに気付くヒカルだった。

                                  →「第4章 突然の別れ」をお楽しみに。  12/24更新

                                  ホタル:アカリの感性にはすごい力を秘めていそうですね。
                                      ヒカルは本当にアカリのことが好きだということがとても
                                      強く感じる場面だと思います。でも、この後悲しい展開に・・・
                                      
                       -6-

ふたりの絆⑥

ふたりの絆⑥

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-24

CC BY-NC-ND
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