自転車

友達にさようならを言った。
夜の10:00、女子高生の私は交差点に背を向け自転車を走らせた。
まっすぐの道だったから、そうじゃなくても、きっとそうだったと思うけど。
私は、淀んでいった。
誰かに電話をする理由が欲しかった、なんて。
私から発せられた声は、下品で卑しくて、
笑顔はきっと醜かった。
みんなも私と同じように思考し、感情があるなんて信じられない。だったら、みんな私じゃないの。
ゴキブリ一匹一匹を区別しないように、人間だって。
死ねって思うよ。人を殺したいっていう気持ち、わかるかな。
殺したいよ、みんな。
なんて、ちょっと爽やかな、晴れ晴れとした気分で
信号を渡ろうとした。
向かい側には男子高校生が、多分7人くらい、いた。
ちょっと、ドキドキして、渡ろうとした。
道には何もなかった。
何もなかったのに、転んだ。
男子高校生の集団から「大丈夫かな」っていう声が聞こえた。大丈夫じゃないよ。なるべく平静を装って、ちらばった荷物を集め、信号が赤になってしまった、逃げられない、恥ずかしい。
私は首を彼らから180°反対の方向へ必死にそらした。
それなのに、私の顔をマジマジとみて通り過ぎて行った。
なかったことにしよう、忘れよう。
そう思って、再び自転車に乗った。
膝が妙に痛かった。すごく、すごく、痛かった。
自転車も歪んでしまったようで、なかなか前に進まなかった。
なんで歪んでしまったのか分らなかった。
前に進む足が重かった、痛かった。
歪んでしまった自転車が、どうしようもなく悲しかった。

自転車

自転車

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-23

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