空の彼方より
「明け告げる飛禽
青葉散りし
今日の冬いたるまで
幾年、夢臥す貴女を眺め
心中の言の葉を枯らしたであろう」
(送ることば)
夜明けを告げて
さえずることり
窓辺よりそれを眺めつつ
幾年へたのか
青葉散り
今日の冬いたるまで
幾歳、歳月をついやしたのか
夢臥す貴女を眺めつつ
心中の言の葉を幾度、ためらい殺したであろうか
手をとろうにも
遠い記憶の海底
その影もはやこの世にあらぬ人
手をとろうにも
眩く差し射る光のなか
目覚め優しく微笑むかつての御身
あなたにもはや、伝えることは叶わず
もてあますこの感謝の言の葉を
どこへ伝えればよい?
(かえることば)
「引き潮は やがて満ちゆく その理をば忘れなさるな
胸に手を当てて」
悲しいこともありましたなら、嬉しいこともありますゆえ、その理を貴方は胸に手をあてて忘れないでください
命あるものはいずれ天に昇るもの その運命(さだめ)にありし薄命致しかたございません
私はいつも貴方を天よりお慕い申しております
輝く月が夜の帳をさけ、貴方の家屋が僅かでも光染み入りますようにと
引き潮は やがて満ちてゆきます
そのように必ず春は貴方に訪れますゆえ
人の手に季節の変わり 変えれぬこと
その理をば忘れなさるな
「胸に手を
幾夜瞳を閉じたなら
降雪溶けて 春いたる」
貴方のなかの私の影は
いつしか、蜻蛉のよう
夕を待たぬまに消えてゆきますでしょう
さすれば、新たな道を貴方はあゆみ
新たな恋の芽を、愛の芽を、育むのなら
私は再び、貴方の経験としていき、空にかかる月となって再び貴方の家屋を照らすでしょう
空の彼方より