偽りの樫の木

偽りの樫の木

憧れられることに。。。憧れた

どんな逆境にも耐え忍び
     決して折れることはない

風雨をも耐え抜く

重く硬く…強い樫の木


<あなたのようになりたい>

羨望の眼差しが

樫の木になれたと浮かれさせる

疑うなんて有り得ない

だってあたしは強いのだから。


【なんて愚かな事だろう】


言葉は摩訶不思議なものだ

誤った賛辞は

あたしの愚かさを助長させる

―不条理なことにも耐えられる

―打ちのめされる言葉も怖くない

あたしは更に強固になった

女であることが悔しくて仕方ない

唇から真っ赤な雫を流し

前へ前へ…歩み続けて行った


いつしか見失った道

立ちすくむのが精一杯

心地よいそよ風にさえ
   細く朽ちた根っこは折られてく

所詮、
  偽りなんてそんなもの

虚像は今も苦しめる

ボロボロと崩れ落ちてくあたしに

手を差し伸べる者は誰もいない

【あなたなら大丈夫!】

笑顔と共に渦巻く
    ガンバレ!コール

立ってる事さえ奇跡なのに

何故気づいてくれないの?


あたしは偽りの樫の木

空洞だらけの惨めな樫の木

安らげる椅子にはなれやしない


強さを誇示することが弱さの証

ようやく知った偽りの樫の木


気づくのが遅すぎた

今日もゆらゆら揺れている

倒れ土に還る日を
      憧れに変え

愚かな日々を
   認めきれずに

偽りの樫の木

【樫の木】
材質は非常に堅い。
粘りがあり強度も高く耐久性に優れている 。
その特性から道具類、建築用材などに使われる。
ただし、加工がしにくい、乾燥しにくいといった難点がある

偽りの樫の木

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-20

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