ポンポコ
私が小学生時代に授業中頭の中で考えてたストーリーです。初めに言っておくと、遠い遠い宇宙の話です。これからどんどん(勉強の合間にね)話を追加していきますのでよろしくおねがいします。
ポンポコ
その空間にたたずむ私は言葉を発することが出来なかった。いや、もしかすると何かを言ってたかもしれない。しかし、その言葉がどんな感情を表していたか、何と言っていたか思い出すことは出来ない。喜怒哀楽では表せない感情。それが何なのか。何者かに脳をハッキングされたように何も考えることが出来なかった。心地よくなど無かったはずだ、でも逃げ出すことはなかった。
なぜか。
妙な暖かさがそこにはあった。母親の優しさのような暖かさが。私はその暖かさに酔っていたのか、酔うという言葉が適切かどうかも分からないがとにかく私はその場を動けなかった。
そして、気がつくとそこには焼け野原にたたずむ「俺」がいた。
船出~シンジ~
「若君!考え直してはくださりませんか。」
我がキツ家に代々仕えるヤマシは声を荒立てながら頭を掻き毟る。相変わらずうるさい奴だ。歳なんだからあんまり大声出すと倒れるぞヤマじい。
「何言ってんだ。もう決めたことだぞ?それに、父上だって了解をくださったのだ。いい加減くどいぞ。」
「その事ではございません!旅のことは古よりキツ家に伝わることですから致し方ないでしょう。しかーし!いいですか若、よくお聞きなさい。カン家の者をお供に連れていくなど前代未聞ですぞ!ましてや、あのバカン家...バカなカン家の中でも過去最高にバカと言われてるあの者を連れて行くなど... 私は許しませんぞ!」
「またそれか。いいかヤマシ、あいつはバカだが腕は...そこそこだ...。とりあえず役には立つ、それに、カン家の者を連れていってはいけないという決まりはないんだろ? なら俺は幼馴染みであるあいつを連れて行く。それだけだ。」
「しかしですねぇ...若...」
おいおいおい、泣きそうな顔するなよ。みっともないぞ?
「心配するなヤマシ。すぐに戻る。父上によろしく伝えといてくれ。」
「承知しました...若、いや、シンジ様、どうかお気を付けて。」
ヤマシに別れを告げた俺は待ち合わせの場所へと向かった。
船出~ポコタ~
家の中には俺とじいちゃんのポコろうがいた。
「いやぁ、でもな、じーちゃんの時には考えれんかったぞ?あのキツ家のご子息のお供に連れて行ってもらえるなんて、まぁ幸せな奴じゃのぉお前は、うん。」
「そんなに凄いことじゃねぇよぉ。あ、サインいる? まぁ俺とシンジは幼馴染みだし、あいつは抜けてるところがあるからなぁ、俺がいないとダメなのかしら? ぬふふふふ。」
「がはははは!全く。流石はわしの孫じゃわい。カン家の名に恥じぬようしっかりと戦い抜くのじゃぞ。」
(ドダダダッバタッ)
「にいぢゃん...はぁ......ごれを...ごふっ。」
「まて、とりあえず落ち着こう、ボコ。」
騒々しく部屋に入ってきたのは3つ年下の弟ボコタだ。
「はい、深呼吸。すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、おいボコー...深呼吸は息を吐かなきゃ成立しないぞー...」
こいつやっぱり俺よりバカだ、バカのくせに勉強は出来るなんてずるいよなぁ。
「よし治った!」
「何で!? 」
「あのね、兄ちゃんにプレゼント! ほら、これ。僕頑張って縫ったんだよ。」
ガン無視かよ!
「へぇ、なかなかうまく出来てる...」
目の前には弟が作ったマントがあった。本来ならば実の弟から貰うプレゼントは嬉しい。だけどね、
「お前この布どしたの。」
「兄ちゃんの部屋の床に落ちてたの。」
「...」
「どお?嬉しい?」
「え、あ、うん。嬉しいよ...ありがと。でもこれを付けると動きにくいから今回の旅では持ってかない事にするね。」
頑張ってくれた弟の前で俺は、このマントの正体(大事にしていた絨毯)を伝えることが出来なかった。
「うんうん。仲が良いのぉお前どんは。さてポコタそろそろ時間じゃないのか? 」
「うわ、やべえ。遅刻じゃん。とりあえず行ってくる。父ちゃん母ちゃんによろしくね。」
遅れたらシンジうるせぇよなぁ 。
俺は約束の場所に向けてひたすら走った。
宇宙ギルド
ここガカナ星は「惑星連盟」(その名の通り沢山の星が参加する連盟政府)の中枢星であり、他の星に比べて文明の進歩がめざましい。と、シンジにこの前聞いた。
だから、この星の建物なんかは凄いらしいんだけど、そんな中でも一際目立つ建物がある。それがここ
「宇宙ギルドセンタービル~ガカナ支部~」
この星を出たことがないからね、他の星の建物と比べることが出来ない俺でも流石に分かる。でけぇ、とにかくでけぇよ。
さて、アカデミーの校舎並にでかいビルのゲートの前に1人の青年が立っている。
話しかけたくない。
なんだよあの足踏み、おいおい、地面割れるんじゃない?怒ってるよねぇ、あれ怒ってるよねぇ。確かにね遅刻した俺も悪いと思うよ、悪いと思うけどさ、たったの1分だぜ?あんなに怒ることないわよねぇ。大体あいつはすぐ怒るし、俺がする事全てにケチつけるしさぁ、だらしがないだの、とろいだの、足が臭いだの...お前は小姑かっ!ってんだよホント。お前の方が足臭いじゃねえか!このバカハゲクソナスしん...
「バカハゲクソナスなんだって?」
「あらやだぁ♪聞こえてたぁ?」
「ああ、全部声に出てたよ。」
速攻謝りました〜♪
ゲートを通ると広大な中庭がある。誰だか知らないが有名なアーティストが作った庭らしいが、芸術性を感じないのは俺がバカだから?
とりあえず中庭の奥の自動ドアからビルの中へ入った。
「でもよぉ、旅をするだけなのに何でこんな所に来る必要があるのさ。」
「ん?ああ、それはな...」
「へーーいへーーい!それが何故だか教えてあげようか〜ボーイズ!」
「間に合ってま〜す。」
シンジと初めて心がシンクロしました。
「待ってー!まってー!うん、待とうか。ガン無視は良くないよ〜アカデミーの先生に習わなかった〜?」
「なんか暑苦しい男が話しかけてきた。どうする?①逃げる②一応話を聞く、仕方がない②を選んであげようか。」
あまりの暑苦しさにシンジのやつがボケだした。とりあえず会話はシンジに任せるか。
「まぁ、それは半分冗談として。いきなり何なんです?」
「半分なのね。そーだな、名も名乗らずにいきなりすまない。私の名は『ターゼ』という。知らないかな?」
「ターゼって、聞いたことある名だ。確か宇宙ギルドの...」
「そう!exactly!私こそ宇宙ギルド理事長の『ターゼ・ラス』なのだよ!」
「本物初めて見た...うわぁ、見たくなかったぁ...」
「ははは。皆そう言うよ!何でかな。そーそー、さっきそこのお腹に『ポ』とかいてあるボーイが言ってたことについてだが。」
「あ、ポコタっていいます。お願いだから名前で呼んで下さい。」
「OK!ポコタボーイ!そう、何故旅に出る前にギルドに来るのかだよね。それは...」
「理事長ー!!」
部下らしき男が大声で近づいてきた。
「理事長お時間です。」
「おお、そーか。すまないボーイズ、残念だがさよーならの時間だベイビー!このメモリーカードに僕の話したかったこと書いてあるから後で見ときなさい。それじゃあ!ぐっばい!!」
最後まで暑苦しいなぁ、まぁでも偉い人なんだな。うん。
「とりあえずメモリーカードの中見てみようぜ。」
俺とシンジはメモリーカードからデータをインストールした。
「理事長あの子達は?」
「新人さんだよ。ふふふ。非常に頼もしい子達が入るみたいだぁ、面白くなるぞ〜。」
2人の間に沈黙が生まれた。
「『碧の太陽』が動きを見せました。」
「そぉ。」
「奴ら着々と仲間も増やしつつあるようです。」
「我々も準備を急がないとねぇ。」
「はい。惑星連盟の『 』様と『 』様がそのために本部に来ております。」
「彼等が来てるのか、かなりヤバイ状況なんだねぇ」
「ですね...」
「...碧の太陽...か...」
ガカナの空に浮かぶ太陽が東に沈んだ。
「...(君もそこにいるのかい、グリンラー...)」
手元の端末にうつる写真に、4人の青年が笑顔で並んでいた。
先輩?
「ギルドのトリセツ」
ハローeveryone!宇宙ギルド理事長のターゼだ。冒険の前にこのビルに来る意味は分かっているかい?大体の者は分かっていると思うが、たまにsuperバカなボーイ&ガールもいるから説明しておくよ。惑星連盟によって、星営または民間の企業による星間旅行は別として、個人で旅・冒険をする際はこの宇宙ギルドに加入し、自らギルドを作るか、既に存在するギルドに参加しなければならない。詳しいルール等を書いておくから目を通してくれ!
【ルール】
1.旅・冒険に出る際はギルドを作る、またはギルドに参加する。
2.冒険者にはランクがあり、上から「レインボー」 「ゴールド」 「シルバー」 「ブロンズ」 「レッド」 「ブルー」 「ブラック」となっている。初めは皆「ブラック 」で、ランクは試験を受けるか、ランクに見合った功績を残すことで上げることが出来る。ただし、「レインボー」に関しては、素晴らしい功績を残した者にのみ理事長より指名される。ランクが高いほど手当・支給も良くなる。
3.ギルドの責任者は「親方」と呼ばれ、ギルドを作り親方になれるのは、「ブロンズ」以上の冒険者のみである。
4.冒険の際、星に迷惑行為をするべからず。
ルールはこれだけしかない。以上を守れぬ者は即刻除名となり、一生旅・冒険する事を禁ずる。
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「こういう事だ。分かったかポコタ?」
「おう、何とか。」
てか文章でもテンション高いんだなおっさん。
「でもさ、俺達は今からギルドに登録しに行くわけだろ?どーすんの?誰かのギルドに入るの?」
「それは無いな。他人のギルドに参加するなど俺には無理だ。」
「じゃあ、どーすんのさ。」
まぁ答えは分かってるけど。
「勿論、今から試験を受ける。どちらかがブロンズ以上の冒険者となれば良いんだろ?容易い!実に容易い!」
とりあえず俺とシンジは受付で宇宙ギルドメンバーに登録、同時に試験の申し込みをした。シンジは自信満々なんだけど、俺はペーパー試験とか苦手中の苦手だからお腹が痛くなる。
「さっさと終わらせてすぐにでも出発しようぜポコタ。」
「あいよ。」
待ち時間にロビーで漫画を読んでる隣のおっちゃんが声を出した。
「ふん。気楽なものだ。お前ら新人か?あの試験がどれだけ厳しいのか理解していないようだな。」
いきなり話しかけてきた来たおっちゃんは自分が20回も昇進試験に落ちてることを鼻高々に語り始めた。
「とりあえず厳しいのだ、お前らみたいなヒヨッコがすぐにブロンズに上がれるわけなかろう。」
「ふん。それは貴様が弱いからだろ。俺には関係ない。」
「なんじゃと...」
「はい!すとーっぷ!!悪いねおっちゃん、こいつ試験前でピリピリしてるのかも。うん。待ち時間もな〜がいしね〜あはは。全くイライラには牛乳ですよねぇ〜って感じ.........だからその拳下げて?」
「ちっ。」
不満げな顔でおっちゃんは拳を戻す。
あー恐い。シンジも機嫌悪くなってきたしなぁ。もう。めんどくさい。
「すまん少し熱くなりすぎた。」
少ししておっちゃんはシンジと目を合わせず呟いた。
「ほらー!シンジ君も!先生怒っちゃうわよ!」
「...すまん。」
一件落着。ふぅ。
そーだ。ずっと気になってたこと聞かなきゃ。
「ねぇおっちゃん、試験内容はなんなの?」
「ん?ああ、試験内容はな...」
試験
「はぁ、やめたい。」
目の前には試験官が立っている。いや、もはや俺には鬼にしか見えない。この人生まれてから1度でも笑ったことあるのかな。ロボットみたいに表情が変わんないのね。
目の前の鬼ロボットにボコボコにされた俺は少ない脳みそをフル回転してみる。
少し整理しよう。俺は今何してたんだっけ?戦闘中だよな。なんで?旅に出るためにギルドに来てそれから......
「はぁ、やめたい。」
考えても考えてもこの言葉が俺の頭の中を巡り巡る。くるくるくるくる人の頭の中を回りやがって。言葉に文句言うようになった俺はホントにバカになったのか。いや、元からか...
めちゃくちゃ強いよこの人、久々の運動の相手にしてはきつい。
「お兄さん強いですねぇ。強さの秘訣は?」
「くだらない事を言ってないで早くかかって来い。」
「コミニュケーション力も必要だったり...」
「必要ない。かまえろ。」
あーあ。冷たい冷たい。
どうすれば勝ちなんだっけ...
「ん?ああ、試験内容はな...試験官と実際にバトルして、試験官を倒す。これだけだ。」
「それだけ!?試験官とバトルすればいいの?」
「そーだ。バトルして勝つんだ!」
なんだ簡単じゃん。
「お前...簡単だと思っただろ?そんなに甘くはないぞ。宇宙ギルドが誇る試験官だ、果てしなく強い。」
「...倒す以外に勝つ方法ないの?」
「ない!とにかく倒せ。まぁ記念試験だと思って頑張れや。」
倒さなきゃいけないのよねぇ。あーやだ。やだやだやだやだ。
「やる気がないのなら俺からいかせてもらうぞ。」
物凄いスピードで試験官が迫ってくる。
右。左。左。
試験官の攻撃を紙一重で避ける。
「おお、あぶねっ。」
「リタイアしてもいいんだぞ。」
「え!」
この人今シンジの声を真似したな!!
油断した俺は首の後ろに蹴りを喰らった。おっもいよ!鉄かよ。
ったく本気でやめよーかな...
左手を腰に当て、右の拳を地面につけた。
「でもさぁ、やらなきゃいけないよね。」
窓一つ無い室内に風が吹いた。
「!?」
試験官の目の前からポコタが姿を消した。
「消えた...どこだ。」
「ここだよここ。」
試験官は360度周りを見渡す。
「いない...気配すら感じ取れぬ。どこに消えたというのだ...」
「こっこだよここー!さぁて、ぼこぼこにしてくれたお礼をしなきゃなぁ...」
「(くそっ、どこだ。)」
「ひっさぁぁぁつ!!」
「(こいつ、ただの弱い新人じゃなかったのか?)」
「ぽぉぉぉこぉぉぉたぁぁぁぁ...」
「ちぃぃ!」
「お前、どこに隠れてたんだ?」
試験を終えた俺は結果を待ちながら試験官と話していた。
「ひひひ。そ!れ!は!そこっすよ、そこ!」
人差し指で試験官の耳を指さす。
「我が一族に伝わる技で、体を小さくするって訳の分からん技があるんですわ。その技を使ってお兄さんの耳に入り込んだってわけですたい。」
「そおか、全く。変な技にやられたもんだ俺も。」
「いひひ。」
「まぁなんにせよ、勝ちは勝ちだな。結果もそろそろ出るだろ。」
「あー、そーだった。」
「なんだ!気にならないのか?」
「まあ、俺がブロンズになってなくても相方が絶対ブロンズ以上になってますから。あいつが『おやたか』になってギルド作ればそれでいーかなーって...」
「やっぱり変なやつだな、なんていうか、バカだろ?」
試験官が笑顔を見せた。なんだ笑えるじゃないかお兄さん。
「お!結果が出たみたいだ。今メールで転送してやる。」
『ポコタ殿 レッド級への昇進を認める』
「ははは、ブロンズにはなれなかったな。そんなもんさ。お前の功績が認められればこれからランクが上がることもある。しっかりと頑張れ。あ、最後になるが俺の名は『ルー』また会うことがあるかもしれん。その時はよろしくな!」
ルーさんにさよならを告げ俺はシンジの元へ向かった。
基盤
先の2人が住むこの星は「多民族惑星」である。多民族惑星とはその名の通り様々な種族が共存する星であり、今ほとんどの星が多民族惑星となっている。ここ「ガカナ星」はその先駆けとなった星でもある。
およそ数万の一族が生活するこの星の中で、「五大貴族」 と呼ばれる5つの一族が存在し、一族の当主はそれぞれ「惑星連盟」で重要な役職を与えられる。
惑星連盟は宇宙の平和を目指すために作られた連盟政府であり、テロ組織や紛争の対策等に力をいれている。
さて、この時代、ガカナ星だけではなく、数多くの星で「冒険者」達が未知のフロンティアを求め旅をすることがポピュラーとなっている。若者から大人までが「ギルド」を組み、冒険者の数はおよそ32兆。そうして出来たのが「宇宙ギルド」。多くの冒険者への補助や、行き過ぎた行動の取り締まりを目的とした組織である。
この2つの組織が世界の大きな基盤なのだ。
おもい~シンジ~
俺は何故旅に出るのか。家のしきたりだからか?答えは「半分正解」だ。ならばもう半分の答えはなんだ?
俺はキツ家の次期当主として育てられた。次期当主となるに相応しいか、力試しをするために旅をする。そんなカッコイイ理由じゃない。周りのプレッシャーから逃げたくて旅に出た。これも違う。
答えなど俺にも分からない。だが、俺を旅に駆り立てる「なにか」が必ずある。ポコタを連れに選んだのもただ単に幼馴染みだからではない。そこにも「なにか」が働いていた。
胸に空いた穴に「なにか」を埋めなければいけない気がする。でも今はまだ......
どこからかオルゴールの音が聴こえる......
兄さん......
朝
今日もTVのアナウンサーは無表情で喋っている。
「昨日、〇〇星と✕✕星が突然消滅しました。同じような事件は今月に入って7件確認されており、惑星連盟と宇宙ギルド本部による調査がつづいております。次のニュースは...」
俺はパンを食べながらTVを見ていた。
「なぁシンジ。消滅した2つ星ってさ、この星に近くない?」
巧みにチョップスティックを扱い、明太子の皮を切るシンジは答えた。
「確かに近いな。」
会話終了。
シンジ君ったらご飯食べてる時に話しかけるといつもこう。
俺とシンジは昇進試験を受け、俺は「レッド」、シンジは「ブロンズ」級の冒険者となった。
もちろんシンジは親方となりギルドを作った。俺はそのギルドのメンバーとなった。
その後、俺達はガカナを出発し、ここ「スターベル」に到着した。
「スターベル」は宇宙でも有数の貿易星である。ガカナを出た冒険者はみなここに来て、それから目的の星へと向かうのが常識らしい。
昨日シンジに聞いた話によると、俺達はスターベルの近くの「ミズ星」に行くらしい。
「なんか聞いたことある名前だよなぁ。」
呟くも、その星の正体を思い出せないまま俺の朝は終わった。
クモタ
アカデミー生時代、俺とシンジを慕っていつも後ろをくっついて来ていた男がいる。
「クモタ」それが彼の名だ。
クモタは、「ウェザ族」という天気を自在に操ることが出来る一族の王子であった。
ウェザ族はかつて自らの星をテロ組織に破壊され、星の修復が行われる間ガカナに移住していた。だから、修復が終われば俺達の前からクモタがいなくなる事は当然の事だった。
え?なんで王子であるクモタに俺みたいなバカが慕われてるのかって?
まぁそれはね、色々あるの。当時の話とかはまた今度。
とりあえずクモタとはあの時別れてそれっきりだったのだが
今目の前にクモタがいます。
そう、「ミズ星」はウェザ族の星だったのだ。
俺とシンジは今ミズ星の王宮にあるクモタの部屋にいる。
「アニキィ〜!久しぶりっす!!どーしたんすか?旅行っすか?いや〜言ってくれたらそれなりのもてなしをしたんすよ〜!」
昔から思っていたがコイツはほんとに王子なのか?なんかこう、上品さとかが感じられないのな。
まぁ、正直言葉づかいも昔のままのクモタにホッとしている自分がいる。
って、あれ?
「シンジこの星がクモタが住んでる星って知ってたの?」
「当たり前だ。今日はクモタに用事があって来たんだぞ?それぐらい知ってろ。」
「...」
初めて聞いたんだけど、クモタに用事あるって初めて聞いたんだけど。
まぁ何言っても論破されるのわかってるし言い返さない。
「相変わらず仲いいっすねぇ〜!」
さっきの会話のどこに仲の良さを感じたのだろうか。
「まぁそんなことはどうでもいいんだ。今回俺達が来た目的は観光などではない、実は...」
(バンっ!)
勢いよく開いたドアから男が出てきた。
「王子!いつまで遊んでいるつもりですか?勉強の時間です。急いで準備なさい。」
「あ...うん.....分かった。あ、という事なんでアニキ達また後で、すんませんせっかく来てもらったのに。」
「いや、いいんだ。すまんな忙しいのに。それじゃあまた改めて。」
俺とシンジは王宮を出てホテルへ向かった。
「なぁシンジ。」
「なんだ?」
「クモタの家にいたあの男誰だろ?」
「さぁ、俺も知らんが、まぁ宰相とかそんなところだろ。」
「さいしょーか...クモタのやつさ、なんか怯えてたように見えなかった?」
「そーか?いつもあんな感じだっただろ?」
「いや、違うんだ、あの男が部屋に入ってきた時だよ!」
「そんなこと無かったよ。考えすぎだって。小さい脳みそで考えすぎて疲れたんじゃないか?」
いや、もし疲れているならそれはお前だよシンジ。普段のお前ならクモタの表情の変化を見抜けないはずがない。あいつは確かに怯えていた。理由は分からないけどこれだけは確かだ。
そういや、旅が始まったあたりからシンジの様子もおかしい。どこかピリピリして、余裕が無いようなそんな感じがある。まるであの時の様に...
俺はシンジが何の目的でこの旅を始めたかを知らない。キツ家の伝統だとあいつは言ってたが。必ずそれ以外の理由がある。俺はそれを知っておきたい、いや知っておかなければならない。しかし、俺には聞くことは出来なかった。
今それを言及すると、シンジが壊れてしまう気がした。
ポンポコ