そしてハヤブサは流れ星になった

地上では十円玉をもちあげるのがやっとのイオンエンジンで
地球の手を借り太陽系の彼方にジャンプして
トラブルばかりくりかえしたあげく
右に左にきりきり舞いしながらも
何億キロも飛びに飛び
なんとかイトカワの上に降り立って
ままならないあの手この手のサンプル採取
帰りのみちがこれまた青息吐息、苦難の連続
とうとう音信不通におちいって
だれもがあきらめかけたとき
宇宙のまっ暗闇のなかから
「まだ、くたばってない」
の返事をよこす
それからもまた
燃料漏れバネルの破損
その他ありとあるミス、失敗をなめつくし
帰るめどもたたずに孤独に耐え
だれに八つ当たりすることもなく
ころんでからの杖の修復装置をこころみて
わずかに動いたものだけにすがりつき
ついにおまえはみんなの見上げる空の上にもどってきた
お疲れさまとかご苦労さんなど
ねぎらいの言葉をかけるまもなく
きらめく光となって飛び散っていたおまえに
見とれるみんなはお祈りをあげることさえ忘れていた

そしてハヤブサは流れ星になった

そしてハヤブサは流れ星になった

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-24

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