白と黒

しろ

目を開けると、そこは辺り一面、真っ白だった。どこまで続いているのかも分からない。ただただ真っ白な何もない場所で、自分一人だけが立ち尽くしていた。不思議と怖さは感じない。むしろ少し安心できるくらいの場所だ。体ごとその場で一周して、もう一度良く周囲を確かめる。するとさっきまではなかったはずの物が目に入った。近づいてみると近くにあると思ったそれは、意外と距離があった。目の前まで来て足を止める。その足元には直径5㎝くらいの黒い穴がある。膝をついて覗いてみるが真っ暗で何も見えない。穴に指を入れてみても何もない。真っ白な空間に突如現れた黒い穴は、唯一の手がかりだ。自分はなぜここにいるのか。果たしてここはどこなのか。少し歩いてみたいと思ったが、ここから離れると穴が消えてしまう気がした。しかしここでじっとしている気分でもなかった。ここから離れる前にもう一度、穴を覗いてみる。しかし先程と全く変わらず、除いた先には黒しかなかった。黒以外、何も見えないことを確認して、立ち上がる。そしてゆっくりと、前ともつかぬ前を見て歩きだした。

くろ

 意識がはっきりしてきて目を開けたつもりが、何も見えない。ここは自分が目を閉じているのか、それとも目を開けているのかも分からない程の暗闇なのか。かろうじて分かるのは、自分が今、背中を下にして寝転がっているということだけだ。とりあえずその状態のまま手を上にあげてみる。そしてそれを左右にも伸ばしたが、手や腕には何も触れなかった。次にゆっくりと体を起こす。何かがある気配はない。座ったまま体を捻って手を伸ばしてみても、特に何もない。今度も同じにようにゆっくりと立ち上がる。手を上に伸ばす。小さくジャンプをしても、何にもぶつからないことを確認して、だんだんとジャンプを大きくしていくが、自分の限界に達しても上に何かがある気配は全くなかった。自分以外が何もない、真っ暗な場所であると仮定するが、それが余計に恐怖を煽った。何も見えず意味のないことと分かってはいたが、首を左右に振って何かないかと探してしまう。案の定、何も見えることはなく、いよいよ頭を抱えてしまう。目を閉じみれば暗闇に慣れるのではないかと考え、そのまましばらく目を閉じる。そしてゆっくりと目を開いた。しかし黒は黒だった。もう成す術はないと諦めかけた。しかしその時、先程までは絶対になかった物が現れていた。それはそれは真っ白な小さな穴だ。恐る恐る近づいてみる。暗闇という場所で動きがゆっくりなせいもあるだろうが、自分がいた場所から穴までの距離は意外と遠かった。やっとの思いで穴の前に立つ。その穴は近くで見ても小さく直径5㎝程の大きさしかない。またその穴は光は差しているわけでも何でもなく、ただ白いだけの穴だった。向こう側はあるのかと覗いてみるが、穴と同様、真っ白が広がっているだけである。すると途端に穴が消えた。思わず「え」と声を出してしまう。ここで唯一見える物が消えてしまったのだ。焦らないはずはない。しかしそんな不安も束の間、穴は再び出現した。 見えるものがあることへの安堵と同時に、声を出すことが出来るという事実を思わぬ形で発見した。とりあえず、やれることはやろうと考え、大声を出してみる。誰を呼ぶわけでもなく、しかし確実に誰かの返答を求めて声をあげた。しかし声はびっくりするほど響かなかった。ただただどこかに吸い込まれるように消えていった。体の向きを変えて何度も大声を出してみても、それは変わらなかった。大声を出しすぎて、だんだん疲れてきてしまった。何が起こるか分からない、この場所で体力を完全に消耗するのは危険な気がして、穴の近くに腰を下ろす。この真っ黒な空間は一体何なのだろう。どれくらいの広さで、形はどんなものだろう。想像するしかない空間で、しかし想像を膨らませてくれるようなものは何もない。歩いて探してみようかとも考えたが、まともに歩けるような場所ではない。そもそも全く何も見えない状況で、歩こうと思える気力はなかった。唯一の手掛かりは真っ白い穴だけだ。これがあるだけで少しは精神の状態も落ち着けることが出来る。腰を下ろしたまま、そこから動くことは出来なかった。

白と黒

 

白と黒

意識がはっきりとして、目を開けた先に見たものは、一人は真っ白、一人は真っ黒な世界。対象的でもあり同一的でもある二つの空間に二人の人間。果たしてそれぞれの空間で、二人はどのような行動をとるのだろうか。そんな疑問から書き始めました。あくまで私の思う行動です。何の参考文献も使用していないので、拙すぎる程、拙いです。お見苦しい文章にここまで目を通していただけたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます! このサイトで小説を投稿するのは初めてです。そしてこのような形の小説?を書くのも初めてでした。いつもは割と恋愛物でした。それでも何か、自分の内にあるものを言葉として排出してみたかったのです。これから違うサイトで書いたことのある作品をベースとした物や、また新しい作品も書いていくつもりです。宜しくお願いします。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-16

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