兄弟(仮)

ここは・・・どこだ・・・?

僕は確か彼女のお見舞いに行って・・・彼女が花瓶を落として・・・それを拾おうとして落ちたんだっけ・・・

つまり俺は・・・死んだ?でも自分の家にいるし・・・

考えてるうちにチャイムが鳴った。誰だ・・・?

「はーい?」そこにいたのは見知らぬ女。俺よりちょっと大きめの・・・

「きゃっ!お、お前・・・泥棒やろ!出てけ!」

は?ここは俺の家だぞ?頭おかしいの?

「あたしは・・・こ、ここの娘や!」

「俺もここの息子だけど・・・」おかしい・・・

話を聞くと、この女?はここの娘で間違いないらしい。そして俺もここの息子で間違いないらしい。

かと言って隠し子って訳でもなく、今までのんびり過ごしていたらしい。そして年齢的に俺の姉だということが分かった。

「とりあえず中に上がらせてもらうよ!弟!」

いきなり弟呼びかよ・・・

* * * * * * * * * * * * * *

「弟!お茶持ってきてくれない?」この人はまだ俺を疑ってるようだ・・・お茶の場所を確認してる・・・

「はい。レモンとかいる?確かあったはず」俺も反撃した。

俺が偽物だと疑うのをやめると、姉は静かに言った。

「・・・本題に入ろうか。」

俺は早く始めて欲しかった。

「結論から言うと、私か君はパラレルワールドにきたんだよ。」

・・・・・・・・は?何言ってんだ?

「まあよく聞きなさい、弟よ。私は間違いなくここにいた。君もここにいた。ということはこれしかないじゃないか!」

わかんない。俺が馬鹿なのか?それかこいつが意味不なのか・・・満足げに言うこいつを見て俺は思うのだった・・・

「何終わらせようとしてんの!でね・・・・あんたはどっかから落ちたとか心当たりない?」

落ちた・・・?あっ!

「落ちた!病院から!」「やっぱり!?」

「てことはあんたがここに来たんだよ!」

「まあそっちの世界のことも知りたいし、違うことがあったら言って!」

そして違いを探している時に一つ見つかった。祖父が企業家ということだ。

こっちの祖父は祖母がなくなったダメージですぐ入院してそのまま天国に旅立ったのに・・・

マキ(姉)のほうは今や立派な企業家になって会社を持っているという。

「う~ん・・・おばあちゃんが死んだときなんていった?」

「俺は・・・『まあ、死んじゃったものはしょうがないよ』かな・・・」

「そんだけぇ!?そりゃじいちゃん傷つくわぁ・・・よく考えてみ?大切な人が死んだ時にしょうがないって言われたら!」

「そりゃ絶望だな・・・お前はなんていったんだよ」

「お前じゃない!姉ちゃんでしょ?私はね・・・まぁあんたと同じだけど、そのあとに「でも、おばあちゃんのためにできることはあるでしょ?」って」

なるほど。そうして勇気が出て勢い余って事業を成功させたのか。

それからも探していると、こっちが失敗したことはそっちが成功しているようだ。

「なんでだろう・・・何も思い出さない?う~ん・・・あっ!」

花瓶が落ちそうになった。僕は花瓶で思い出してしまった。

「どうした?弟よ!浮かない顔してぇ!」そう言って笑い飛ばしたが、鬱陶しく感じるだけだった。

「思い出した。もういい。確かめたいことがある。じゃあな」

俺はそう言うと走り出した。確かめたいことというのは口実で、一人になりたかった。

俺は分かっていたんだ。彼女がわざと花瓶を落としたこと。わかってるんだ。彼女が俺を押したこと。

もう嫌だ。俺は彼女の病院の屋上にいた。その時後ろから声がした。気にしないで飛び降りようとしたとき、

「タケル君っ!」

え・・・?彼女の声だった。なんで?この世界は俺のいた世界じゃないのに・・・

「なんか忘れてるような気がして戻ってきたの・・・思い出したから来てみたら・・・」

もういい・・・来るな・・・

「わざとじゃなかった!・・・気づかなかったと思うけど、あの花瓶の中に・・・手紙を入れてたの。いつもありがとうって・・・」

う・・・そ・・・だろ・・・?

「でも、落ちちゃって・・・」

「まだ伝えたいこととかあったけど・・・こっちのタケルは死んじゃったから・・・」

死んだのか?じゃあ俺の世界も・・・

「でもあっちのタケルは死んでない!それにタケルにはまだやることもある!だから・・・死なないでぇぇぇぇ!!」

その瞬間、まばゆい光が俺をここに連れてきた時のように優しく包み込んだ。

* * * * * * * * * *

あ・・・れ・・?戻ってる・・・?

「心配したんだよ!?大丈夫!?」

みんなが心配していた。近所のおばさんもいた。

「みんな・・・」

これから強く生きていくことを固く誓った。

その時、心無しかマキの声が聴こえたような気がした。

こうして俺の不思議体験は幕を閉じたのだった・・・

* * * * * * * * * * * 

「また来いよ!」

兄弟(仮)

兄弟(仮)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted