前髪

前髪

彼が切れと言った訳じゃない。自主的に、自主的にだ。

私は彼が似合うからと言ったから髪を伸ばしてる。私はいつだって、ショートかベリーショートだ。片想いというにはまだほど遠いが、恋には近づいている気がする。
彼は髪が長い子が好きだと言ってる訳じゃなく、彼は髪が長い私が良いと言ってくれた。
そんなこと言われて悪い気はしない。そんなこと言われて調子に乗ってしまう。だから私は髪を伸ばしてる。似合うって言われたい、ただそれだけのために。

肩まで伸びたくらいの時だろうか、きっと彼は髪が伸びた私を見てたった一言「可愛いね」と言ってくれてるのを待ってた。でも、それは叶わなかった。

彼は髪が短い女性に恋をしていた。わかってしまった。好みとか、似合うとか容姿の良し悪しではない、それに。

自主的に切ろう。忌々しい髪め!

前髪

前髪

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-14

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