王道ラブコメなんて信じない7

柏田が部室を出て行って1分後。ちなみに前回紹介した人で今後出てくる可能性がある人は一人だけだ。
「危なかったですね」
「クリスマス前にリア充を出すところだったよ」
委員長は何か似たものを感じるな。
「いや、流れにノッて言ったけど流石に酷くないかな?」
別に酷くない。というより、お前もガチなトーンで喋ってたじゃないか。まぁ、そんなことよりも
「話を変えるけど部長と副部長が決まってるみたいだし他にもルールを作らない?」
「そんなのいるの?」
そんな言葉を無視して
「はい、1つ目は『win-winになるように務める』」
「いきなり凄いことを言ったね。で、何でそれにしようとした理由は?」
「クライアントと自分達がお互いに不利益にならないようにしたいから。さっきみたいにクライアントだけでリア充になるとか有り得ないから」
「流石ですね。星宮くんはいい大人になれますよ」
委員長は皮肉で言ったのではないだろうが、流石にいい大人にはなれない。
「2つ目は?」
「『ディスクロージャーをする場を設ける』ちなみに場はもう決めてる」
ディスクロージャー、つまりうちの部活が何をしてるのかを公開することで相談にも行きやすくなると言うことだ。
「探偵部のサイトに書くの?」
「既に書いておいた」
暇過ぎたからやったんだがな。
「3つ目は?」
「まだ決まってないしなー。まだ、下校時間まで時間あるし決めるかー」
「リスクヘッジしつつアウトソーシングもするとかは?」
リスクを回避しながらも自分達は業務を外部に委託するって事だ。
「さっきから難しい言葉使い過ぎ!分からないからやめてくれっ!」
かんしゃくを起こすなよ。現代社会でやっただろ。
「もしかして橋本さんって頭悪いの?」
委員長はオブラートに包む事を知らないのか?
「率直に言うなよ。だってさ、そんな難しいこと言われても理解できないし」
「リスクヘッジはリスクを回避する。アウトソーシングは外部委託するってことですよ」
俺が説明(心の中で)したのにわざわざ言い直さなくても…。
「つまりアウトソーシングは他力本願ってことだよ」
簡潔にまとめるとそうだな。面倒ごとを他人に任せて、自分達は他のことをやるという何ともクズな発想だ。
「思ったんだけどさ、橋本さんってよくこの高校入れたよねー」
金髪も不良イジメを始めたか。やめてやれ。
「中学の授業は簡単だったけどさ高校って難し過ぎるんだよ」
いるいる、見栄張って偏差値高い高校行って落ちこぼれる意地っ張り優等生。俺に絡んできた奴もそんなんだった。落ちこぼれた挙句自主退学したな。ざまあみろ。
「そう言えば夏休みに補習に来てたよな」
「何で知ってるんだよ」
「従姉の部活の手伝いをしてる時にたまたま見かけたんだよ」
「ちなみに従姉の名前は?」
「岸本だよ」
『岸本花梨』俺の従姉で同じ学校だ。学年はあいつの方が上だけど頭の中身は俺より下だ。1人っ子の為俺にめっちゃ絡んでくる。マジでウザイ。
「ま、マジで?あの、ミス篠前校の岸本さん?」
うちの高校『篠前高等学校』の文化祭の名物であるミスコン(制服審査)で1位になった人を『ミス篠前』という。岸本は1年の時から3年連続取ってる。見た目だけはいい。まぁ、可愛いしな(他人事)。俺は全く思わないし、ほかの奴は目が腐ってるんだと思う。
「そうだよ。それがどうしたの?」
「ちなみに岸本さんは何部?」
「バレー部と演劇部の掛け持ちだ」
文化部と運動部の掛け持ちは確かに珍しいが、演劇部はほぼ、運動部と言ってもいいくらいハードだ。なんで知ってるかって?一応俺も演劇部に入っていたことがある。脚本担当だから入っていたのに役を任されたから辞めた。
「おぉ!凄っ!」
「岸本の話はいいから3つ目のコンプライアンスを決めようぜ」
あんな奴の事の話なんて時間の無駄だ。
「自分の従姉を名字で呼ぶなんて珍しいな」
「そうか?てか、そんな事をいいから、早く決めようぜ」
岸本家自体が嫌いだからずっと他人行儀なんだよ。たかってくるし、コバエかよ。コバエホイホイで毒殺するぞ。
「さっきのリスクヘッジしつつアウトソーシングもするってのは?」
「橋本さんにも分かりやすく言うと危険も回避しつつ周りの人に手伝ってもらうって事だよ?」
大事なことだから2回言ったのかな
「待って、よく考えたら周りの人に頼るうえで危険も発生するんじゃない?」
「流石の橋本でも、分かるんだな。そうなんだよ。リスクヘッジしたいのにアウトソーシングするとヘッジ出来なくなるんだよ」
パラドックスが起きてしまう訳だ。
「つまり頼る人を選ぶってこと?リスクの少ない人に頼むの?」
「そういうことだよ」
「その頼る人はいるの?星宮くんって案外友達少なそうな感じしますし目も若干腐ってますし」
俺を間違ったラブコメしてる人と一緒にするな。
「それくらいいるよ。委員長。君は馬鹿にしてるのか?」
「じゃあ、誰なんですか?」
「足尾と獅子村だよ」
「足尾は分かるけど獅子村って誰?」
「困った時の?」
「「「輝衛門?」
『獅子村輝彦』
別称は輝衛門。体型も猫型ロボットと似てるし制服改造してポケット増やしてるし、我ながらいいネーミングセンスしてると思ってる。ちなみに輝衛門を広めたのは俺だ。あと、デカいのに何故か存在感が薄い。
「そう!輝衛門こと獅子村輝彦は校内一の便利屋あいつさえいれば困らないしな、あと影薄いからかなり便利。現にそこで紅茶飲んでるし」
「ん?呼んだか?皆が気付かないから不安になってきた所だったよ」
金髪が驚き過ぎてローテーブルに足をぶつけた。オーバーリアクションだな。
「い、いつ入ってきたの!?ドア開いてなかったじゃん」
まるで幽霊を見てるような目で聞いてきた。流石に可哀想だな。
「いや、がっつり開いてたよ。「ここが探偵部かー」って言ってたの気付かなかったのか?」
「「「いや、全く微塵も気付いてなかった」」」3人が息を揃えて言った。
「海斗。俺はそんなに影が薄いのか?」
「うん。たまに幽霊かと思うし、目の前にいたのに急にいなくなった事があったじゃん」
トドメを意味も無く刺しておこう。
「それは西宮女史に呼ばれたからだし、お前がイヤホンしてたから聞こえてなかったんだろ?」
「まぁ、それはどうでもいいんだよ。コイツは影薄いから便利屋に向いてるんだよ。依頼の手伝いもしてくれるだろうし。な?やってくれるよな?な?断るなら膝蹴りする」
話を無視して問いかけた。
「海斗。それは脅迫というんだ」
「約束だからな」
商談成立。いやぁ、早かった。
「だから、一方的な宣言は約束じゃないよ」
「とりあえず決まりだ。今日は解散だ」
3人は話しながら帰り支度を始めた。
「うぉい!話を聞けぇ!」
夕焼けが眩しい部活で輝衛門の声は響いたのだった。

王道ラブコメなんて信じない7

王道ラブコメなんて信じない7

偶然という名の必然により集まったひねくれ者とその仲間達が起こす不思議な学園ストーリー

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-12

CC BY-NC-ND
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