ノンケのごとく♂
体育館の中心でゲイ♂をさけぶ
陽彦「…1年生になった~ら、1年生になった~ら」
漢(おとこ)は、入学式特有の緊張感ただよう体育館で、男子校特有の独特な光景を目の前にして――
陽彦「 “ホモだち″ 100人、でっきるっかな♪」
――男色家特有の鼻歌を口ずさんでいた。
校長『新入生の皆さん、薔薇色学園へのご入学おめでとうございます』
黒、黒……視界を埋め尽くす、学ランの黒。この一面が松崎しげる色の世界に佇んでるは、十人十色さまざまなダンジたち。
草食系ダンジに、美系ダンジ……スポーツ系ダンジに、ショタ系ダンジ……不良ダンジに、マッチョメンダンジ。
陽彦「グヘヘ」
夢にまでみた景色を現実のものとした漢(おとこ、と読んでくれたまえ)は下衆な笑いを止められそうにない。
校長『ええー、新入生の皆さんには、三つの気を持ってもらいたいのです』
可愛いピーチが、いち、にー、ダン、ジー……周囲を(周囲のお尻を)舐め回すような目で視男する。
先ずは、どの桃から揉もうか……むしろ一人一人、お尻ほじり虫して回ろうか……いっそこの体育館を、お尻とお尻のお尻ゲイで埋め尽くしたい!
陽彦「グッヘッヘ」
淫夢にまでみたピーチへのスピーチを現実にした漢(おとこが好きなおとこの事ね)は、ゲイな欲求を抑えきれそうになかった。
校長『それは元気と、やる気と、根気…――』
陽彦「――否っ! 持つべくは、 “ ゲイ気、掘る気、男根気 ″ ! あと、勃起だ!」
高らかに叫ぶと、体育館中のダンジの視線がこちらに集まる!
あのスポーツ系のダンジいいー、ムキムキな身体がワイルドー! 『なんだあいつやべえぞ』みたいな目がたまらないいっ!
あっちの草食系ダンジもいいなあ、しなやかでセクシー! 『あのひと怖いよ恐ろしいよ』みたいな表情が可愛いすぎるううっ!
陽彦『ダンジ、最高ぉぉぉぉーーーーう!!!!』
教師「そこの君、ちょっと、来なさい」
漢(いい加減覚えたかい?)は体育館の後ろのほうで、ちょっとしたご指導を頂いた。
くそう、この陽彦ともあろう漢が、ウホッいい男探しを遮られてしまった。隠密行動を心掛けていたのになぜなんだっ。
しかも男性教師にでなく、おんな教師に注意を促されてしまった。ええい屈辱だあ……この学園に、あの憎き恨むべきビッチなど要らんっ。
陽彦「ケツ辱だああーっ」
そこら辺にいたダンジ「…ちょ!」「…えっ!」「…うわあ!?」
腹いせに、体育館の後ろから戻る最中、並んでるダンジたちのお尻を順番に触っておいた。
校長『ええ何故わたしの話が長いのかと言うとそれは、校長の威厳=話の長さなのでありーー』
さて、壇上の木偶の坊のくそ寒いスタンダップコメディを読ませ続けておくわけにもいかないので、ここで漢のくそ寒い自己紹介をしてやろう。
尻の穴かっぽじって、よく聞いておいてね?
名前は佐藤 陽彦(さとう はるひこ)。性別と一人称は、『漢』。
学校生活における得意なことと言えば勉強くらいか。その特技を生かし、見事、私立の男子校に入り学費を浮かす事が出来た。えっへん。
苦手なことは運動。体育祭前日には微熱を捏造し、プール開きには女装し女の子の日を主張して見学したもんだ。そのあとプールに投げ飛ばされたっけなあ。
第二次成長を迎えても尚、大した成長を見せないひょろい身体と身長と童顔がコンプレックスな、15歳、日本男児だ。
※(間違っても「もやしっ子」等という低俗な言葉で漢を表してみろ? ダンジなら後ろの穴にもやし突っ込んで許すけど、おんなならもやすからね)
ああ因みに気が付いてるかも知れないけど、漢の好きな食べものはダンジ(男性♂)だ! 自らの尻私欲を満たす尻合いを求め、遠路遥々、男子校までやって来たのだ。
そして嫌いなものはビッチ(おんな♀)! わざわざ異性ことウルトラマ×コスモスの居ない異星までやって来たのだ。
……だというのに。先述の通り指導を加えてきたのは、ビッチ教師だったのだちきしょー。大体、校長の話の邪魔したくらいでなんだ。
陽彦「グッヘッヘヘヘッ……」
木偶の坊の長話聞いてるよりか、肉の棒たち(目の前に並ぶダンジたち諸君)に悪戯してた方が、よっぽどゲイの肥やしになるっての!
陽彦「だよねえ? 校長よりカンチョーだよねえ?」
前に並んでるダンジA「えっ……」
さっそく悪戯をすることにした漢は、さりげなく背後から声を欠けると彼と息のかかる距離まで接近する! 両手を拳銃の形に象ると、その尻肉に突きつけた。
陽彦「動くな、漢はゲイだ」
Aくん「ひぃ……!」
悲鳴をあげたAくんの身体がタチに睨まれたノンケのように硬直する。グヘヘ、可愛らしいなあ、たまらんなあ。
漢は理性という安全装置を外すと、銃口を(指先を)急所に(お尻の真ん中に)向けて狙いを定めた!
陽彦「さあさあ、命ゲイをするならいまのうちだよ」
Aくん「いっ、一体なにがしたいのさっ」
陽彦「グヘヘ良いだろう。君の〝知りたいこと〟なら何でも教えてあげるぞう。漢の目的はねえ」
お手製マグナムに、銃弾の代わりの性欲とゲイ欲を込めると、
陽彦「君に〝尻痛いこと〟を教えてあげることさっ」
Aくんのアソコ目掛け一気に加速する!!
Aくん「嫌あああアッー」
陽彦「そうれ、漢(カン)チョー発射ッ! 標的は君のアナ――」
?『首席の和泉谷 悠(いずみや ゆう)と申します。宜しくお願い致します』
陽彦「――ル!?」
指先を突き刺そうとしたその時、壇上に立つある一人の男児の存在に気が付く。
さっきまで校長が長話を繰り広げていたそこでは、本年度の首席に選ばれた生徒による挨拶が行われていた。
悠『この度、僕たちを迎え入れてくれた薔薇色学園に心より感謝を申し上げたいと思います』
ななな、何だ、あの見目麗しきダンジは……。
悠『僕たちは、この学園に入学できたことを誇りに思っています』
壇上の彼は、美しい。端正な顔立ち。透き通るような肌。短めのストレートヘアでいて前髪は少し長く、睫毛にかかった髪の合間からクリっとした大きな瞳を覗かせている。
悠『校訓に則った、規則正しい学園生活を贈ることを誓いたいと思います』
少し声が高く、少し小柄な彼。しかし採寸を間違えたのか、身体のサイズより一回りも大きい学ランを着ていた。ぶかぶかの松崎しげる色を纏っていて尚栄える、真っ白い頬。正しくおどろきの白さ。
悠『新入生計216名に代わって、この旨を伝えます』
そして芯の通った真っ直ぐな姿勢で体育館中に熱弁を振るう。その姿、何処か他の男児とは違う凛々しさがあった。
陽彦「………………」
おれは暫し時間を忘れて、彼に見入ってしまう。
悠『ありがとうございました』
″ パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ ″ !!
陽彦「………………んっ」
場内に沸き起こる拍手の音をもって、現実に引き戻された。
そしておれの中に沸き起こって来たのは、ある表現のし難い高揚感。
陽彦「……ふ、ふふ」
ああ困った、小田和正じゃないのに言葉にできないや。北島康介じゃないのに何も言えねえ。
強いて言うなら―― “もう二度と感じることのできないと思っていた高揚感" ! こんなところかな。
陽彦「ふふふ」
陽彦「ふはははグッヘッヘッヘッ!!」
素晴らしい……素晴らしいじゃないか薔薇色学園! まさかこの陽彦を、こんなにも掻き乱してくれるダンジに巡り合わせてくれるとは思いもしなかったぞ! うほっ!
おれ、いやさ漢は決めたっ……! この薔薇色学園で、まさしく薔薇色の学園生活を贈ってやることをなあッ!
陽彦『漢、最高ぉぉぉぉーーーーう!!!!』
Aくん『痛痛たたたた痛アッーーーー♂』
おっと! テンション高ぶりすぎてAくんのお尻目前でストップさせていた指先を、見事に彼のトンネルに突き刺してしまった。
教師「お前達、ちょっと、こっちへ来い」
漢とAくん(とばっちりごめんね♂)は体育館の後ろのほうで、ちょっときつめのお説教を食らった。
ノンケのごとく♂