紙の公園 26~30

遥人は、紙をめくる音や紙の匂いを感じるだけで、心が落ち着くような気がした。
遥人は、心底、本が好きで、自分の生活に欠かせないものだったのを知った。
この病院に、来て唯一良かった出来事だった。

その様な理由から、部活をさぼる様になったが、その分、勉強に専念した結果が今の成績に繋がっている。
その頃は、本を読むか勉強する以外の選択肢は、なかったが、今は、違う。
やってる事は、一緒であっても、あの頃とは、全く違う感覚だった。

ただ少女と公園で、本を読んでいるだけで一人じゃないという感覚と本の内容も普段以上に頭に入るとてもいい感覚だった。
その時、ふとある事が、頭によぎった。
自分は、少女の事が気になっているのではないのか、という事だったが、その考えが馬鹿らしくなってやめた。
でも、心の中は、少しもやもやしていた。

それから、遥人は、毎日のように、学校が終わると歩いて公園に行き、少女と挨拶をかわし本を読むという習慣が続いた。
気温は、徐々に暑くなり、桜の葉は、すっかり散り、青々とした葉っぱになっていた。
夏は、もう直ぐそこまで近づいていた。

夏と成るとやはり部活が終わり頃も近づき三年生は、必死になってる頃だった。
プールからは、部員の声や水の音が鳴り響いていた。
遥人は、部活の内部事情は、一切伝わって来ないが、努力をしているのは、痛いほど伝わって来ていた。

紙の公園 26~30

紙の公園 26~30

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-09

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