アフロディーテ

その嚠喨たる佇まいはまさしくアフロディーテであった。

恐らく水浴びの直後なのだろう。
清水が真珠のような滑らかな白い肌に吸い付くように付着し、金糸のような髪からは名残惜しそうに滴っていた。
髪と揃いの金色の睫毛に縁取られた、穢れを知らない宝石のような蒼い瞳は不安そうにこちらを窺っている。
控えめに開かれた薄紅色の唇から覗く赤い舌は妙に官能的であった。
すっと通った鼻筋と薔薇色の頬には薄っすらと幼さが残っている。
すらりとした体躯はまだ未発達で、十代後半に差し掛かる程の少女だと分かる。
しかし、そこには花も恥らうような洗礼された美しさがあった。
柔らかく膨らむ小ぶりな乳房に腕を押し当てる様子は、乙女の恥じらいを持っていて、より一層私の心を掻き立てる。

なんら変哲もない湖も、彼女がいるという事実だけで神聖な場所のようであった。

アフロディーテ

アフロディーテ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-08

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