紙の公園 11~15
今日の藤棚は少し曇っているような気がした。今日も少女はベンチに座って本を読んでいた。遙人は、挨拶をし、いつものベンチに座ろうとした。
「どうしたんですか?」
突然問われた。
「何がですか?」
何を聞かれたかさっぱり分からない。
「顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
どうやら体調のことを気にしてくれたらしい。
「大丈夫ですよ、少し走っただけですから。」
どうやら納得してくれたようだ。
ほっと一息ついて本を読み始めた。
本を読み初めて少したった頃ふと声に出してしまった。
「そういえば、この公園の名前は何なんだ?」
少女は、少しびっくりしていた。
「この公園は、言の葉公園って言うんですよ。」と答えてくれた。
「よく知ってますね、どこで知ったんですか?」
「ベンチの裏に書いてありますよ。たぶん、愛称ですが。私はそう呼んでます。」
本当に書いてあった。よく見つけたもんだ。
「この公園にピッタリな名前ですね。」
少し話をした後、本に戻った。しばらくして家に帰る時に、見た藤棚は、いつもの綺麗な藤棚に戻っていた。
遙人は、それから何度、もあの公園に行き少女と少し話しながら本を読み、暗くなれば、帰るというのが習慣になっていた。
だが、少女の名前を知らない。毎日会う人の名前を知りたいのが普通だが、なんだか遙人は知らなくてもいいような気がした。
やはり、僕は普通じゃなかったようだ。
お互いを知らないってのがあるのかも知れない。会話はするが名前を聞く事は無かった。
なんだか遠いが近い様な距離
この距離を、遙人は気に入ってた。
ある日、たまたま先生にあっただけで、部活の集まりに呼ばれてしまった。
正直行きたくないな〜と思ったけど、呼ばれてしまったからには行くしか選択肢はなさそうだ。
久しぶりに、部室に入った。見た事のない人が沢山いた。
部室を間違えたかも知れない、だが確かに塩素の匂いは、する。
そうだ、一年生が新しく入ったのを、忘れていた。もう一年生は馴染み始めた頃だった。
でもさっきから、視線が刺さるように痛い。何故か一年生らしき人達が、こちらを向いてコソコソ話していた。
それもそうだ。一年生からすれば遙人は、知らない上級生なのだ。
そして2.3年生もまだ居たのかと、言う目を向けてきた。
だから部活には来たくなかったんだと遙人は思った。
長い時間を耐え、この空間にいるだけでおかしくなりそうだった。
長いと思われた時間だったが、たった15分だった。
知らない間にここまでの拒否反応が出ていたとは……
早く帰ろう、これ以上具合悪くなる前に。
紙の公園 11~15
誤字などあったので、直しました。
本当にありがとうございました。
報告してくれた方 言葉(ことは)さん http://slib.net/a/17649
詩を書いてる人です。是非読んでみてください。