うんこ大王とおしっこ王子(王子学校へ行く編)(5)

阿門 遊

五 おしっこ王子がペらぺらになる

「それ」
「それ」
 ボールが飛び交う。歓声が上がる。ドッジボールの試合は白熱している。幸一君が僕を目がけてボールを投げてきた。バシ。胸で受けた。どうだ。右手を上げ、ガッツポーズをする。そして、思い切り、幸一君に向けて投げ返した。
 投げた後、胸ポケットを見る。膨らみがない。しまった。と思う間もなく、バシと僕の膝にボールが当たった。顔を上げると、幸一君がガッツポーズをしている。
「勝負中に、よそ見をしていたら、ダメじゃないか」幸一君が勝ち誇っている。
 僕は外野に回る。恐る恐る胸ポケットを開く。思ったとおり、王子がぺらぺらになって胸に張り付いていた。
「大丈夫かい?」王子に声を掛ける。
「だ・い・じ・ょ・う・ぶ」
 王子の平面の口が動く。
「ちょっと、トイレ」僕はコートから離れると、トイレに入り、胸ポケットからぺらぺらの王子を取りだした。
「どうしたら元に戻るんだい?」
「み・ず・に・つ・け・て・く・れ」王子は息も絶え絶えだ。
 僕は手洗い場に王子を置くと、水道の蛇口をゆっくりとひねった。水滴がぽつんぽつんと王子の体にしみこんでいく。それに伴って、王子の体は丸く膨らんでいく。
「もういいよ。ありがとう」
 王子の体は二次元から三次元に戻った。昼休みの終わりを告げるベルが鳴り始めた。
 教室に戻らないと。僕は王子を胸ポケットに入れ、息を切りながら教室まで階段を昇った。昼からは国語の授業だ。給食を食べ、昼休みに運動をすると、昼からは眠たくなる。がんばらないと。

 その頃、お腹の中では。
「ふう。やっと、終わったぞ」
 うんこ大王が座りこんだ。
「そっちはどうだ。リキッド班の隊長に尋ねる。
「はい、大王。こちらも終わりました」
「そうか。王子はまだ帰ってきていないのか」
「はい。まだです」隊長はうなだれる。
「全く困ったもんだ。こんなに仕事があるのに。まあ、仕方がない。とにかく、昼食の消化活動は終わった。主が学校から帰って、おやつを食べるまでの間、休憩だ。みんな、ゆっくりと休んでくれ」
「アイアイサー」
 固体班もリキッド班も、その場に座り込んだ。作業に疲れたのか、大王を始め、隊員たちはうとうとと居眠りを始めた。

うんこ大王とおしっこ王子(王子学校へ行く編)(5)

うんこ大王とおしっこ王子(王子学校へ行く編)(5)

五 おしっこ王子がペらぺらになる

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-06

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