天駆ける。

天駆ける。

「南無阿弥陀仏ー般若心経・・」
あー怠い。お経長いし、足痺れんじゃん。
「ヒックヒック、お兄ぢぁぁああんん!!!」
はいはーいかけるーどしたー?
「お兄ぢゃああん」
何だよ翔、少しは静かにしてなさいっ、お兄ちゃん怒るぞー?
あと母さんも怒るだろーし
「こら翔っ!うるさいわよ!」
ほれみろ
「う゛う゛、ヒック」
かけるー、こっちおいでー、兄ちゃんが抱っこしてやるよ~
「・・・兄ちゃん?」
「おう翔。元気してたか?」
「兄ちゃん!!」
ドンッ
「いったたたた、うりゃうりゃ」
「きゃはははっっ兄ちゃんこしょばいよー!!」
「こら翔っ!高嶺!あんた達なにやってるの!」
「「ごめんなさ~い」」
「それはそうと高嶺、今日は翔に付き合ってあげなさい。」
「ほいほい」
「兄ちゃーんおんぶー」
「はいはーい」
「兄ちゃんあーん❤」
「あーん」
あれ?翔ってこんな甘えただったっけ?
「あ、夕方だわ、布団入れないと」
嗚呼、そろそろ
「んじゃあ俺帰るなー」
「あら、もうそんな時間?」
「おう」
「翔起こして来るわちょっと待ってて」
「うん」
かけるー、と母さんの呼ぶ声を聞きながら俺はしみじみとした気持ちになっていた。
「あと何回かな」
あと何回、俺は二人の目に止まるのだろう。
「まぁ」
「大丈夫か」
そうだ、明日の事は明日の俺に任せよう。
「にいぢゃーん」
あーあ、可愛い俺の弟の顔が台無しだ。
「翔、おいで」
両手を広げると弟は飛び込んできた。
「う゛う゛ー」
「なぁ翔、俺と男同士の約束をしようか」
ヒソヒソヒソヒソ
「うん!わかった!」
大丈夫か?守れるか?とても心配でならない。
「えっ、あんた達ー何約束したの?」
「「しーっ、内緒だよ」」
ええーと母さんはすねる。
近い。もう行かなくては。
「はい、茄子」
「ありがとう」
俺が茄子に跨がると、茄子は牛の姿をした人形となった。
「兄ちゃん、来年もまた会える?」
「おう」
絶対だよ。とわらった弟の顔が夕日に照らされて俺の帰りを急がせる。
「じゃあな、二人とも、来年まで元気でいろよ。」
「「うん」」










「ぁあーやっぱり空中散歩は楽しいな」

天駆ける。

天駆ける。

一時復活した兄ちゃんと毎年待ち続ける弟と母の家族愛話。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-02

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