奥で

 左耳の奥で
 泣いている声が聞こえる
 煩い
 遠くなる雨音と
 生きたいと思うもの

 煙草に火をつけて
 それを腕に充てる
 熱くもないし痛くもない
 希死念慮を抑えるための
 方法も知らないこども

 身体には確かに
 声にならない傷が残り
 だけど私は気付けない

 発狂しそうなのに
 溺れて声も出ない
 息苦しさを
 知らずに嗤う者たちよ
 あなたは殺していることを知らない
 あなたに殺されている人々を
 あなたは知らない

 何も知らずに
 ねぇ

 紫色を愛さない君を
 私は愛せない
 耳の奥で
 囁いていないで

奥で

奥で

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-25

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