孤独の懺悔

定期的に送られてくるその一言は、わたしを静かに深く沈めて苦しめるのでしょう。

儀式

「今日もいいよね」

その一言が唐突に送られてくる。
その1文の意味はわたしだけが知っており、わたしがどう返すかによってどうなるかも、わたしだけが知っている。

わたしは自分から連絡は入れない。そこまで大切に思ってないのも確かだけれど、自分の領域に入れられるほどの存在であることも確かだった。


「んー、でもあした忙しいよ」

了承をしているような、そっと引き離すような、そんな返事をいつもする。 この返事の意味は、わたしと相手の中ではイエスという意味を持つ。
相手に選ばせているような気になって、自分でもう決めさせられていることを、わたしは気づいていた。


彼は夜の11時に家に来る。
その間にわたしは部屋を片付け、お風呂に入り、髪が濡れたままドアを開ける。


彼はわたしのお気に入りのクッションに座り「乾かさないの?風引くよ」と優しく言い、わたしの頭を撫でる。

それは、ほぼ毎回のように行われ、まるで儀式のようだった。



わたしたちは、セックスをする。
突然相手から始まり、相手が疲れれば終わる。主導権は彼であり、わたしは彼が気持ちよく思えるように耳を舐めあげる。

そして、振動とほんの少しだけの快感に声だけを出し、股の間を舐められるときにだけ「恥ずかしい」と単語を紡いだ。



初めてを捧げたのは、付き合ってもいない彼だった。


小説や漫画を読み、とても神聖で尊いものだと思っていたその行為は、実際に終わってみると、なんてことのないことだった。
何かが変わるわけでもなく、ただ、病気と妊娠という危険がついてくるだけのもので、やらなくてよかったことだったんだなと思い、自分が今まで大切にしてきたものを失くしたかのような錯覚に襲われ、静かに泣いた。
世間が、カップルがセックスをすることでお互いの深い愛情を確かめ、それがどれだけ素晴らしいことであるかのように過剰に描かれていたということを目の当たりにした。


どれだけ身体を重ねても愛は生まれず、独りよがりのさみしさを裸で埋め、生理が遅ければ、望まぬ妊娠をしてしまったかもしれないとひとりで風呂場で涙を流した。
親に言えない関係と、もし命を授かってしまってそれをどう伝えればいいのかという不安は、わたしを深く後悔させた。

生理が再びくれば、こんなことではできないかと安堵し、すぐに妊娠をしてしまうかもしれないという恐ろしさを忘れ、安易に彼を中に埋める己の愚かさに辟易とした。



彼はかっこよくもないし、背が高くもない、性格もいいわけじゃなかった。
ただ、わたしの孤独感を満たしてくれる役割を持っていた。
お互いがお互いを利用し、けれど傷を多く負うのはいつだって女である事を知りながらわたしはそれでも今日彼を受け入れる。


痛くて死にそうな思いをした割に、得たものは薄っぺらく、何も知らない親に対する謝罪の気持ちだけが生まれた。それでも、彼との関係を壊すことはできずにまたきょうも扉を開けてしまうのだろう。

孤独の懺悔

女子大生あるあるのような。

孤独の懺悔

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-22

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