夢の灯

夢の灯

鏡

ラベンダーの香り、仄かに漂う城に

貴女は

貴女の一枚の鏡を見つめた

月の木漏れ日 藪の中

夜の鳴き声「ホゥ、ホゥ」と

ざわめく木々の揺らぎに幽かに消えて

不気味に木立の影は伸びてゆく

静まり返った夜に鐘の音

余人の枕べに 風とともに鳴り響き

数多は離島の夢の中

ただ、貴女は独り目覚め

「しくしく」と悲しそうに泣いている

孤独

孤独

番の鳥は 相方を見失ったことに 哀しんだ

独り、深い夜の海原を飛びまわり

天にかかる月影に向かって その寂しき鳴き声を轟かせた

雲の間に間に浮かぶ月

漂う潮風

誰も、彼の心知るよしもあらず

警鐘

警鐘

ある日、私は仕事に疲れ、倒れるように床についた


幾時間が過ぎたのだろうか、意識が朦朧とするなか、微かに時計の秒針がかちこちと音を鳴らしている


(眠りとは死に似ているかもしれない)などと、つまらぬことを考えながらも・・・意識は遠のいてゆく・・



母の吐息この暖かな優しい風は、衣にそよぐ春の顔

数多には喜びなれど私にはそうではなかった。


闇に女が一人、たたずんでいる。


景色はうつろい、たちまち緑の大海原となる。


私「見も知らない女よ」


初々しい緑に覆われた
その野原に立って


「寂しそうにしくしく泣くは
なぜか?」と問えば

女「この春風の暖かさが恐い」とゆう


陽は輝き
季節の虫は燦々と、歌を歌うとゆうのに
今だに私達の心に春はやってこない

穏やかな眠り

穏やかな眠り

私は鳥、

鳥瞰するように
小さな木立を離れ
世界を眺めるとき
濁りのない
瑞々しさに満たされる


そして世界の美に声をかけられ

閉じられた瞳に
神は舞い降り
御影の間に間に夢をみる



帰郷、


眩い夕陽を背にして、閑古鳥が美しい歌を歌っていた
私がその歌声にひかれ、手を差し伸べると
閑古鳥はたちまち飛び去った
そして、ある日の、あくる朝、
私の枕元へ、一陣の風が吹き
光とともにふたたび、あの懐かしい温かさが
窓辺より、射る
その歌声は私の夢であり、そして私の喜びでもあった

蕾

蕾(つぼみ)の中に貴女は眠り 健気に愛らしい寝息をもって夢、咲きいる日を待っている

花弁の向こう 抑揚に満ちた陽気な歌を 小さな山吹のいじらしい耳に 眠り眼(まなこ)に静かに
夢の咲きいらん日をと願う

夢の灯

夢の灯

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-17

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  1. 孤独
  2. 警鐘
  3. 穏やかな眠り
  4. 6