あおいしずく
「いつから雨は青や水色になったのでしょうか」
「見えるんでしょうよ、見える人には」
唐突に聞かれたものだから、反射的に言葉が出てしまった。
「見える人には、というと」
「そうですね、純粋な目を持った人といいましょうか」
実際地上に落ちて行く雨なぞ見たことなかったので、言葉の曖昧な事と言ったら。
それにしても自分は何故咄嗟にあんなことを言ったのだろうか。
「なるほど、その人たちには、虹に透けた雨でさえ青に見えるんですかね」
「見えないでしょう、虹に透けたなら、それは虹色の雨だ」
コロコロと、面白くなってくるくらい言葉が出て行く。
「虹色の雨、いいですね美味しそうだ」
「どんな味でしょうね。」
「赤は甘い。紫は一見渋そうだが、実は深みがあって口当たりがよさそうですね」
「へぇ、いいですね。」
「時々海に溶けて魚たちが食べるんですよ。するとたちまち元気になって勢い良く跳ねる」
「それを海鳥がすかさず捕まえるんですね」
「海鳥は嬉しいだろうね、さっきまで目の前にあった虹を食べた魚を食べられるんだから。」
「彼らはくちばしが小さいから、虹自身は食べられないんですね。」
「その通り、虹を食べられるのは海にいる生き物達と太陽くらいだ。」
「へぇ、太陽も。そいつは驚きだ」
「なんてったって、虹を作るのは太陽でもあるからね」
「なるほど。お腹がすいた時にひょっこり顔を出すんですね。」
コロコロ、言葉がどんどん積もり積もって。
それが、地上に降る雨だということは、雲の彼らには知る由もなかった。
あおいしずく