惑星ジャナップ4(亡くなった筈の王子)

惑星ジャナップ4(亡くなった筈の王子)

今は、書き進めている段階です。

※誤字・脱字などは、後々改めていきます。

よろしくお願いします。

号外

「号外!号外だよぅ!」
銀河電車の駅前で、青年が号外を配っていた。
「何と!あの正義の組織『セイント・クロス団』のボスが、10年前に死んだ筈の惑星ジャナップの王子だったんだよ!」

号外を手にした、人々は驚いた。

号外を配りながら、青年は大声を出し続けた。
「10年前と変わらない姿で、あのダニエル・セイント・ダイヤ・ジャナップ王子が姿を現したんだ‼︎」


「確か、10年前の墜落事故で、王子の死体だけが見つからなかったんだよな⁉︎」
「あの時、王子だけが行き残っていたの⁈」
「でも、何で歳を取って無いんだ?不老不死の薬でも飲んだのか⁈」
「そうかも知れないわね‼︎」


この一大ニュースは、銀河中を困惑させた。

デビッド王

「そんな馬鹿な‼︎」老いた男が、大理石のテーブルを叩いた。
「完全に死んだと思ってたのに‼︎」老いた女が、ヒステリックな声を上げた。
「完璧な暗殺計画じゃなかったのか⁈」
「そのはずよ⁈何度もシュミレートしたじゃない⁈」

小太りの男の名は、デビッド・ラドクリフ・ジャナップ、惑星ジャナップの現王。
やせ細った女の名は、マリエル・パデッド・ジャナップ、惑星ジャナップの現王妃。
2人は殺した筈の自分の兄である、サビレ・セイント・ジャナップ前王の弟夫婦だ。

「ドバード‼︎サビレ一家の暗殺計画の責任者は、お前だったよな⁉︎これは、どういう事だ⁈」
ドバードという初老の男は、現状把握が出来ておらず、何も言えなかった。
「特に、あのダニエルを始末する様に言ったはずよ⁈」
2人に責められ、ダニエルは土下座で謝るしかなかった。


「まぁ、父上達、落ち着いて下さい。」テーブルでワインを飲んでいた青年が言った。
「マーレ‼︎コレが落ちついていられるか‼︎」

「父上様、母上様。幾らドバードを責めたって、何にもなりませんわ。」マーレの向かいの席に座っていた女性、ルーラルが2人を宥めた。

「ねぇ。そのダニエルは、今話題の組織『セイント・クロス団』のボスなんでしょ?」テディベアを抱えた少女アンナが、ドバードに聞いた。

「はい。そうで、ございます。」ドバードは顔を上げた。

「ならさ、その組織事潰すのはどうなの?」デーブルに乗っかっている少年ガーリーがリンゴをかじりながら、ドバードに提案した。

「それは、我がジャナップ星軍なら可能でしょう。」

それを聞いた眼鏡の青年デニーロが「お父様、お母様。取り敢えず、我が軍にあの組織を潰させましょう。そうしたらダニエル自ら、コチラに殺しされに来きますよ。」

「・・・。成る程な、子供達の言う通りかも知れん。」
「・・・なら、ヤツを殺させるのは、あの子でいいかも知れないわね。」
さっきとは、打って変わって、2人は不気味は笑い声を上げた。

期待のダイヤ

ダニエルは、秘密地下基地のラボで何かをしている。
彼が見つめる先には、胎児の様なモノが液体の中にいた。
彼は、作業をしながら過去を振り返っていた。



惑星ジャナップの王、サビレと王妃のターナには中々子供に恵まれなかった。何度も、人口受精を繰り返し、ようやく第一子が生まれた。
2人は次期王の誕生だと大いに喜んだ。
その子の名前はダニエルと名づけられ、スクスクと育って行った。
6才の時にはバイオリンをマスターし、7歳の時にはピアノをマスターした。10才の時には乗馬をマスターした。
周りも両親も、彼を天才として称えた。


彼が10の時、両親は、各惑星の王族の親睦会で、大いにダニエルを自慢した。
「息子は、剣術が達者でね。」
「ほう、それはそれは。素晴らしいですな。是非、ウチの息子と一戦交わせたいですぞ。」
「サック王、それは非常にいい提案だな。おい、ダニエル。」

一本の剣が宙を飛んだ。
「ま、参りました、、、!」

辺りは、彼を歓喜き包んだ。

その時の出来事が銀河中でニュースになった。
「ジャナップ星の王子が天才だって!5つも上のサック王の息子を剣で倒したってさぁ!」
「すごいねぇ。まだ10なのに。」

側室の青年がダニエルに号外新聞を見せた。
「王子様、貴方が銀河新聞の一面に乗ってますよ!凄すぎです!」
「そうこうふんするな。ただ相手が弱かっただけだ。」
「それでも!」と青年は瞳をキラキラさせて言葉を続けた。
「私、貴方様の側室で本当に幸せです!!」
「はは、おおげさな。でも、ありがとう。」


父である王も、母である王妃も、この星な次世代の立派な王として成長していくのを誇らしく思っていた。

そう、ある日を境に。


試験官の中の生物が、成長した。
ダニエルは、それをフラスコに移し替えた。
心臓が鼓動し始めた。

疎ましい王子

ダニエルは、フラスコの中で成長した人型の生命体を特殊な装置が付いた水槽に入れた。
すると、みるみる生命体が急速に成長しだした。
ダニエルは、そのままその人型生命体の前にたった。
その瞳は、過去を見てる。


ダニエルは、その後もその天才的で多彩な、才能を発揮し始めた。
彼が15歳の時には既に、全ての体術・勉学の先生を上回る才能を身に付けた。


それからだ。
父であるサビレが、一人息子を疎む様になったのは。

その時期に銀河で、貴重な資源であるマナが寿命を延ばす成分があると発見された。
すぐにサビレはマナを買い占めて、星の有能な科学者に長寿の薬を作らせ、服用しはじめた。

サビレは、薬で寿命を延ばすことで、より長く王位に居続けよう目論んだ。そして、次期王である自分の息子に王位を譲り渡したくなくなった。
そこで、王は自分の息子を暗殺することに決めた。その話しを聴いた王妃は、王の決断に賛成した。自分も長く王妃としての生活を送りたかったからだ。


ある日、ダニエルが乗馬をしていたら、突然顔に何かがかすった。
そこに手を拭ってみると血がついている。
「これは・・・!」
(矢だ!私を殺そうとして、放たれたのか?!)

「誰か!暗殺者が僕を狙っている!!」そう大声で叫んだが、周りのの者は無視をした。彼の側近でさえも。
「なぜ、みんな私の話を聞かないんだ!」
彼の叫びに、側近が言った。
「王子の気のせいじゃないですか?」
「き、気のせい?!明らかに、僕の顔から血が出ているじゃないか?」
「小枝か何かで、引っ掻いたんじゃありません?」
「んな訳があるか!!私の顔を見ろ!お前の目は節穴か?!」
ダニエルが側近に怒鳴っていると、なんと側近が「皆の者!!王子ご乱心なされた!!この事を、早く王様達に知らせよ!!」と響く声で叫んだのだ。

側近の一言により周りの者達が一斉に、王子を羽交い絞めにした。いくら鍛錬した彼の体術でも大勢には適わなかった。
(なんでだ・・・?!私はおかしくなってないのに!!)


彼は、王と王妃の前に連れて行かれた。そこで、真実を訴える事にした。
「父上、母上!私は、おかしくなっていません!明らかに弓矢で、私を殺そうとした者がいるのです!小枝なんかでこんなに血が出るわけがありません!!よくお考え下さい!」

母である王妃は目にハンカチを当てながら深い溜息を吐いた。
「あぁ、何てことでしょう。本当に我が息子がおかしくなってしまったなんて・・・!!」
それに対し、父である王は彼に重い命令を下した。自室謹慎である。

「そんな!父上!母上!私を見捨てるおつもりですか?!」
衛兵に引きずられながら、ダニエルは嘆いた。

そして、彼は見た。
自分の両親の口元が、かすかに笑っているのを・・・。

(・・・!!!本当に、自分達の子どもを見捨てるつもりなんだな!!!)

更に頭のいい彼は、気がついた。
(父上達が急に王座を手放したく無くなったのは、マナで寿命を伸ばそうとしているからか!!)


自室謹慎は、外出が好きな彼には厳しい命令だった。
出される食事も、毒入りかどうか実験道具で、検査してから食べた。毎食に1品には必ず即死の猛毒が盛られていた。
夜も、いつ暗殺者に殺されないか気を張りながら、短時間で熟睡できる術を得た。
彼はこんな耐え難い仕打ちを受けた腹いせに、自己鍛錬や勉学にひたすら精進した。両親を見返すために・・・。


ダニエルは、水槽の人型生命体の成長が止まった。
彼は肉眼と装置で、人型生命体が呼吸しているかどうかを確認した。
「よし、完成だ。」そう言って、ダニエルはラボから出た。

庭師ミナモト

ダニエルは、メイベルを連れてラボに入った。
「本当にいいのね?」メイベルはダニエルに尋ねた。
「あぁ、やってくれ。」
「VRA、貴方もそれでいいと本当に思ってる?」メイベルは天井に向かって聞いた。
「はい。これは『セイント・クロス団』のためでもあり、私自身のためでもありますので。」
二人の返事を聞いたメイベルは一つため息を吐いた。「・・・わかったわ。ただ、私は目が見えないから魔方陣を描くのを2人に手伝ってもらうわよ。」



そんな、一人だけの日々に友が出来た。

ダニエルがいつもの通りに、出された食事に毒の検査をしている時だった。
コンコンと窓を叩く音がした。
「なんだ?」ダニエルが窓の方に行くと見知った人物がそこに居た。
その人物が、窓越しにダニエルに話しかけた。
「王子様、私です。庭師のミナモトです。」
ダニエルは、彼も暗殺者の一人かもしれないと、慎重に窓を開けた。

その様子を見たミナモトという男は、安堵した表情をした。
「おぉ、王子様。ご安心下さい。私は、王様を裏切ったのです。いやハナから、王様に忠誠心はございませんでした。」
話をきいて驚くダニエルに、ミナモトは話続けた。
「私は、『人外』のものです。この城の奴隷として売られましたが、たまたま花の手入れが上手いと言うことで、庭師として採用されたのです。」
かれは、抱えていた麻袋から何か取り出した。
「これは、奴隷達に支給されるパンです。なので読は盛られておりません。」

ダニエルは、彼からパンを受け取り検査をしてみた。
「・・・なるほど。本当に毒が盛られていないな。それで、ミナモトよ。なぜ私にこのパンをくれたのだ?」

ミナモトは、よくぞ訊いてくれたと言わんばかりに訳を話した。
「それは貴方様が、この城の奴隷達にいつもお声を掛けてくれる唯一のお人だからです。」


日に日に、出される食事の毒の量が増えていった。
けど、それとは反対に庭師ミナモトを通して、奴隷たちから食事のお裾分けを貰い、ダニエルはミナモトに腹を割って話す様になった。

「昨晩、寝ている所を暗殺されそうになった。」ミナモトに貰ったパンを食べながら、ダニエルは呟いた。
「?!なんですと?!ついに、そこまで来ましたか・・・!!」
「まぁ、こうして生きてるけどな。暗殺者は、1人だけだった。それに日々、鍛練しているおかげで、暗殺者の骨という骨を骨折させる事が出来たぞ。」
ダニエルの話を聞いても、ミナモトは気が気ではない。
「しかし、王子様。」
「ダニエルでいいと言ってるだろう。」
「あ、すみません・・・ダニエル様。しかしですな、いつどこで暗殺されても可笑しくない状況まで来てしまいました。これでは、私をはじめ奴隷の皆が心配しております。」
ミナモトの話を聞いてダニエルは俯いた。
「・・・。そうだな。」

「だから、これを。」ミナモトは、そう言って懐から焼き物のペンダントを取り出した。
「これは私の先祖、地球人から伝わる“天命を全う出来るお守り”です。これさえあれば、どんな苦難・暗殺にも耐え抜けられます。」
ミナモトは、ダニエルの首にペンダントを下げた。

そして、かれはつらい表情をした。「最近、王様が苛立っています。いくら食事に毒を盛っても、ダニエル様が死なないからです。」
「だから昨夜、暗殺者をよこしたのか。」
「そうだと思われます。」
ミナモトは、何かを決意した瞳をダニエルに向けた。

「・・・ダニエル様。これからは、暗殺者を殺さなけれなば貴方様が殺されてしまいます。正直に申し上げますと、全身の骨を折るなんて甘いです。貴方様を見捨て暗殺しようとしている、ご両親を恨む気持ちを暗殺者にぶつけるように、相手を殺さないとなりません。」
「かなり、ミナモトにしては過激な発言だな。人を殺した事があるのか?」
「・・・殺した事が無いように見えますか?」
「見えんな。」

ダニエルは、背伸びをした。
「お前の過去は詮索しない。お前の言うとおりに、次からは私を暗殺しようとしている奴らを殺していく。死体処理は、お前たちに任せてもいいか?」
ミナモトは深くお辞儀した。「かしこまりました。」


翌日も、その翌日も、暗殺者がダニエルに襲ってきた。ダニエルは庭師の言うとおりに暗殺者を殺し、奴隷たちに死体処理を任せた。
そのうち、段々と暗殺の回数と暗殺者の人数が増えてきた。ダニエルは、殺され掛けながらも生き延びた。相手を全員殺す事によって。

「昔に暗殺者対抗訓練をマスターしてよかった。」いつもの昼下がりに、ダニエルはミナモトに言った。
「そうですな。ですが、王様の堪忍袋の緒がそろそろ切れそうです。」
「はははは。そうだろうよ。アイツが寄こした暗殺者は皆殺しにしているんだから。」

ミナモトはムッとした。
「笑い事では、ありませんぞ!王は、今度の夏のバカンス先で大掛かりな暗殺計画を実行しようとしているのですから!」
それを聞いた、ダニエルは真剣な顔になった。「それは本当か?ミナモトよ、誰から聞いた?」
「奴隷のA-001とA-103です。」
「ケインとアビデだな。」
「そうです。二人が王様の寝室で床を磨いていた時に、王様が独り言を言って笑っていたと・・・!」
「なるほどな。」ダニエルは服の胸元から、例のペンダントを取り出した。
「こいつの本領発揮っていうことだな。ますます、コイツが手放せんな。」
「左様でございますね。」

ダニエルはミナモトの両目をじっと見つめた。
「ミナモトよ。もし、私の身に何があっても、私は必ず生き延びるぞ。だからミナモト、お前も必ず生き延びろ。そして、どこかで必ず会おう。いいな?」
それを聞いた、庭師ミナモトは涙を堪えた。
「はい。このミナモト、必ずや貴方様とお会いになる事を誓います。」



そして数日後、ダニエルは両親とともに避暑地へ旅立った。



「なんとか、魔方陣が完成したわね。ダニエル、私から下がって。」メイベルはそういうと、長い呪文を唱え始めた。
「・・・全ての太陽神よ、すべての命の神代よ、我メイベルの下に御出で下さい・・・」
魔方陣が、緑色の光を発し始めた。
「・・・この心を有する者に・・・全ての善なる神々の御力を・・・!!」

人魚メアリ

ディッパーが、ラボに入ってきた。
「うわぁ。すごうねぇ~。本当に生きてるよぉ~。」
「おい、ディッパー。まだ入っていいとは言ってないだろ?」ダニエルは憤慨した。
「そうよ。まだ、安定してないんだし。余計な刺激を与えたくないの。」メイベルも怒っている。
「え~ぇ。ただ、様子を見に来ただけじゃぁん。」ダニエルがふてくされる。
「それがダメなんだ!お前は、まだ狩れてない有害な組織を狩ってこい。」
ダニエルに命令されて、ディッパーは肩を落としながら、ラボを後にした。



ドカーーーーンッ!!
避暑地へ向かう飛行船が突然爆発した。
飛行船火を噴きながらは真っ逆さまに落ちてゆく。



(・・・?!)
「あら?目が覚めたわ。」
ダニエルが目を覚ますと、かすんでいる視界からブロンドヘアの女性の顔が見えた。
「あなた、確かダニエル王子よね?かわいそうに、こんなにボロボロになって・・・。」
「・・・ここは・・・?」ダニエルは、周囲を見渡そうとした。
「ちょっと!今、人魚の秘薬で傷を完全回復させているからじっとしてて。」
(・・・?)

状況が把握出来ないダニエルは困惑している。
「・・・あなた、避暑地に行く飛行船ごと爆破されたの。あなただけは、このお守りのお陰で何とか生き残れたみたい。」
そういって女性は、横になっているダニエルにペンダントを見せた。

ダニエルはかすんでいる目で、彼女をよく見た。「人魚・・・!」
ダニエルの驚いた顔を見て、彼女は微笑んだ。「そうよ。私、メアリ。見ての通り、人魚なのよ。」

彼は、更に目を凝らして彼女を見た。なんと、右腕が無い。「・・・腕が・・・?!」
メアリは苦笑いした。「そうなの。人間と恋に落ちた罰で、腕をね・・・。でも、腕を切られて良かったみたい。」
人魚の言葉にダニエルは不思議に思った。
「だって、この星の希望に私の腕を食べて貰えるから。」
「・・・?どういう事だ?」

人魚メアリは、ダニエルに人魚の肉を食べると不老不死になる事を話した。
「・・・ただの伝説かと思ってた。・・・それで、なんで貴方は、私に自分の腕を食べてもらいたいんだ?」
「今の王政をぶち壊して、貴方にこの星を収めて欲しいからよ。」
「だが、王は先ほどの爆発で死んだのでは?」
「たしかにそうね。でも・・・。」
彼女は、王の弟デビットについて話し始めた。

「彼はずっと『人外』以外の民に、”私が王であれば、こんなに窮屈な思いを皆さんにしてもらわなくて済む”と宣伝して回ってた。そして、反王政組織を立ち上げたのよ。そして、偽りの預言者に”王たちが避暑地に行く時、彼らに死神が訪れる”って叫んでたわ。」
メアリの話を聞いたダニエルは気が付いた。
「?!あの爆発はデット叔父の仕業だったのか!」
「・・・そういう事。」
彼女は、話の続きを始めた。

「この星の民全員、気が付いていた。デビット王が王になっても、『人外』はずっと『人外』のままだと。それに対し特に『貴族』達は彼に賛同したわ。”自分たちのやりたいように出来る”ってね。」
人魚は深いため息を吐いた。
「昔から人魚は『人外』だった。ほかの種族の人々も基本的にはそう。」

彼女は鋭い目で、この星の王子であるダニエルを見つめた。
「だから、貴方に私の腕を食べてほしいの!お城の奴隷にも、外の『人外』にも、分け隔てなく接するという貴方に!そして、貴方に・・・」
「この星を収めてほしい・・・か?」
「・・・そうよ。それが、『人外』達の思いでもあるのよ。」
「・・・なるほどな・・・。」


人魚の肉は、鉄の味がした。


「大丈夫?」メイベルが完成した人型生命体に声をかける。
「・・・。」無言でソレは頷いた。
「これから、ストックも用意する。それにも、メイベルが魔法をかけてくれるから安心しろ。」
再度、人型命体は頷いた。

殺人の師 岩鷲

「まだ、意識がふわふわしているみたいね。」メイベルは、人型生命体の様子を見てダニエルに言った。
「そうだな。」
「しばらく、ベッドで横にさせた方がいいわ。」
メアリの提案に、ダニエルは賛成した。



全ての傷がなくなったダニエルを見て、人魚のメアリが提案した。
「ねぇ、思ったんだけど貴方、殺人の特訓をしてみない?ちょうど、打ってつけの人物がいるんだけど。」
「殺人の特訓?」
「そうよ今後、必要になってくる可能性が高いからね。」
ダニエルは頷いた。「そうだな、暗殺者対抗訓練はしたが、殺人の訓練はした事が無い。それに、メアリの言うとおり今後、必要になってくるからな。」

ダニエルの答えを聞いたメアリは、おもむろに笛を吹いた。
「何を呼んだ?」
ダニエルの質問に、メアリは笑って答えた。
「貴方の殺人の師になる人物よ。」

ざぁ・・・と風が吹いたと思ったら、ダニエルたちの目の前に黒い不思議な格好をした人物が現れた。
「メアリ、何用か?」
「来てくれて有り難う。岩鷲。実は頼みたいことがあってね・・・。」そういって、メアリは要件を伝えた。

「なるほど。拙者に殺しの特訓をしてほしいとな。」岩鷲(がんじゅ)はダニエルを見つめながら言った。
「そうだ。よろしく頼む。」ダニエルが頭を下げた。
「いいだろう。小僧、これに着替えろ。」岩鷲は、彼に自分と同じ服の色違いと革の黒マスクを渡した。

「着替えたぞ。」ダニエルが言うと、岩鷲は無言で彼に鞭を渡した。
「これは?鞭?先に刃が付いている。・・・?!この刃、ダイヤやセラミックより硬いラ・クリスタルだろ?!」
岩鷲は驚いた。「何故わかった?」
「昔、之について研究してたからな。」
「左様でござったか。」


「さぁ。もう生き返ったのだろう?続きをするでござるよ。」岩鷲は血まみれのダニエルに言った。
(・・・!これでもう8回も奴に殺されている!)
「この拙者に殺されるのをやめて欲しくば、その鞭を自分の体の一部にして操ってみろ!」
「・・・くっそったれ!!」ダニエルは鞭を岩鷲に当る様に振った。
しかし、先端の刃が、岩鷲に当る前に本人は姿を消していた。
「遅い!!」今度は左斜め後ろから、ダニエルは急所を刺されて殺されてしまった。


20回岩鷲に殺されたころ、ダニエルは生き返りながら意識を取り戻す事が出来てきた。
(・・・どうしたらいい?どうしたら、この鞭を自分の手足の様に操れる・・・?)
体が回復している中、ダニエルはどうしたら鞭を自在に操れるか分析する。

「さっきより、回復が早くなってきたでござるな。」岩鷲はダニエルを見ながら感心した。
「メアリ、お主の切られた片腕も、これで安心していると思うでござるよ。」
「そうね、岩鷲。そう祈るわ。」

この特訓は、今まで受けてきたものとは違う。何回も殺されながら、特訓を受けるのもそうだが、一番は『お手本』が無い。
ダニエルは、今まで教師たちが示した『お手本』を元に訓練をマスターしてきた。そんなダニエルにとって、『お手本』の無い特訓は早く飲み込めない為、苦戦を強いられている。


「・・・!!」
ダニエルの意識が飛んだ。
「ほう。もう100回以上、色々なやり方で殺したが、殺した瞬間に意識が回復するようになったとは。」


ダニエルも岩鷲も1ヵ月も飲まず食わずにいた。
「拙者、『忍者』という種族ゆえ、空腹には耐えられる。お前はどうじゃダニエル?」
「・・・もう殺されまくって、空腹も何も感じない。」
「さようか。では、再開するぞ。」


千も殺されると、ダニエルは鞭の扱い方に慣れてきた。
(・・・最初は持ち方が悪かった。後、振るときの姿勢も。あと・・・)

「もう、拙者は疲れたぞ。さすがに、短い時間でこんなに殺した事はない。いい加減、その鞭をマスターしてはくれぬかの?拙者、腹が減った。兵糧丸でも持たん・・・!」岩鷲は音をあげた。
「まて、岩鷲。私はまだまだいけるぞ?殺しに来い!」
意気込むダニエルに、岩鷲はひっくり返りそうになった。
「わかった。これが今日で最後でござるよ・・・!」



人型生命体をメイベルのベットに寝かせたダニエルは、ソレが寝ているのに気が付いた。
「こいつ、寝るのか?」
「そうよ。あたりまえじゃない。生きてるんだから。」メイベルは笑った。
「こんな魔術を施せとは言って無いぞ?」ダニエルは、メイベルを睨み付けた。

鞭使いダニエル

メイベルに、人型生命体のお守を任せたダニエルは、ラボに戻った。
「さて、ストックを用意するぞ。」
ダニエルは、再び同じ作業を始めた。



「まいった!」首を絞められた岩鷲は降伏した。
「わかった。」ダニエルは、岩鷲を自由にした。

「ごほっ・・・!1001回目で、突然鞭を自在に操れるようになるとは・・・!しかも、その鞭は誰もマスターしていない代物なのに・・・恐れ入った!」
「誰もこの鞭を扱って無いだと?なら何故これを私に渡した?」ダニエルは、岩鷲を問い詰めた。
「お主・・・いや、ダニエル様なら可能かと思ったからでござる。なんでも昔からやってのける天才だから。」
「なるほどな・・・。」ダニエルは、鞭でメアリが用意した食料を手繰り寄せた。
「私も空腹だ。一緒に食べようではないか。」
「ははぁ。この岩鷲、ありがたき幸せ。」

「ダニエル様、今後はどうなされるおつもりですか?」岩鷲はご飯を食べながら、ダニエルに聞いた。
「そうだな・・・。しばらくは、身を隠そうと思っている。この特訓で1年を費やした。・・・デビットがもう王になっている筈だから、その反旗を翻すための準備をしようと思う。」
「左様でござるか・・・。」岩鷲は袖から笛を出した。
「何かあったら、この笛で拙者をおよび下され。助太刀いたしまする。」
ダニエルは笛を受け取った。「わかった。有り難う。」


ダニエルは、メアリと岩鷲に別れを告げ、惑星ジャナップの陸の大半を占めているスラム街へ向かった。


彼は黒い革のマスクのチャックをきっちり締め、苛つきながら歩いている。
「汚い汚い、実に不衛生だ…。」

そんな彼が街角を曲がろうとした時、大柄な男達5人とぶつかった。
「すまない。」
彼は素直に謝り、そこを通ろうとした。
しかし、ぶつかった相手はそれを邪魔してきた。

「あ?骨が、折れちまったじゃねーか。」
「あ!本当だ!みっちゃんの骨が折れてる!!」

ダニエルが彼らを見ると、彼らはニタニタと笑ってる。
「骨は折れていない様だが。」
「はぁ?折れたんだよ、俺の心の骨がな。」
「その割には、笑顔だな。」
「テメェの気のせいだ。慰謝料とっとと払えよ。」
「生憎、そんな金持って無い。」

みっちゃんと呼ばれた男が、ダニエルに殴り掛かった。「っらぁぁ!」
しかし、彼の・・・いや彼らの体はいきなり不自由になった。
ダニエルが彼らを鞭で縛り上げたのだ。
「威勢の割には弱いな。」
そして、彼らを始末した。


「さて、人の気配がない所に行こう・・・。」
ダニエルは、地下基地を作り始めた。



ダニエルは、キリのいいところで作業をやめた。
そして彼は、執事長に出かける旨を伝えた。

源ジィ

「本当なのか・・・?」源ジィが銀河新聞の号外を震える手で読んでいた。
「源ジィ、どうしたの?」源ジィの様子が変なことに気がついたディッパーが訪ねた。
「い、いや。何でもねぇ。」源ジィは号外をクシャクシャにして焚き火に放り捨てた。

「そういや、ザンキャックの残党は始末できたのか?」
「うん。完璧にね。」
「そうか。んで、今話題のボスから何か言われたか?」
「あ。悪の組織でも狩ってこいって言われた。」
「大体、名だたる組織は破壊したじゃねーか。」
「だねぇ・・・。あとは詐欺集団とか?」
「だな。そういう輩は、ゴキブリみたいにしぶといからな。慎重にやれねーとな。」


「俺らのボスのボスが、この星の前王の王子だってぇ!」単願族のミッシェルが号外のコピーをディストラクションのみんなにばらまく。
「まじかよ?!ボスったらすごい奴をボスに選んだんだなぁ!」
「でも、何でボスは死んだはずの王子様とやらをボスに選んだんだ?」
「ものすごく、深く考えた結果なんじゃない?」
「さすがはボスだぜ!」

みんなが口々に言っていると「おい!ボスのボスが来たぞ!!」と、アジトのドアが勢いよく空開いた。

「マジかよ?!」
「噂をすれば何とやらだな!」
「それを言うんだったら《噂をすれば影》!」
「なんだっていいから、生のボスのボスを見に行くぞ!」
メンバーが一斉に、ドアを出て行った。


「なんだ?この騒ぎは?」源ジィが騒ぎを聞きつけた。
「あ、ダニエルが来たみたいだよぉ。」
「?!」源ジィは、勢いよく騒ぎの中心に向かって、一心不乱に走り出した。
「ちょっとぉ〜、まってよぉ!」ディッパーは彼の後を追いかけた。


「うわ!本物だ!」
「これが前の王の王子様?」
「名前なんつったーけ?」
「ダニエルだよ。」

「どいてくれ!」人ごみを掻き分けながら源ジィがダニエルの元へ向かう。
「おい!じいさん、邪魔だ!」
「邪魔なのはお前さんの方だ!」
「ちょっとぉー!源ジィー?!」ディッパーは彼の背中を追いかける。
「あ、ボスじゃないですか?」
「ごめんねー。通してぇ。」


(相変わらずココはうるさいな・・・。)
ダニエルがため息をついたその時、「ダニエル様!!」と人ごみから老人が現れた。

「?!お前は・・・?!ミナモトか?」
老人が立て膝を付き深くお辞儀をした。
「そうです。ダニエル様、庭師のミナモトです!」老人こと、ミナモトの目には涙が溢れていた。
「あの噂は本当だったのですね!!どれだけこの日を待ちわびたことか・・・!!このミナモト、ずっとあなた様が生きていると思っていました!」
ミナモトは涙を腕で拭きながら言った。
「よくぞ・・・よくぞ、ご無事で・・・!」
ダニエルはしゃがみこんでミナモトの肩に手をのせた。
「お前も無事でなりよりだ、ミナモトよ。長いこと心配かけたな。」

ディストラクションの設立の秘密

「ミナモトお前が、ディッパーのブレーンだったのか。」
ディストラクションのタワーの元ディッパーの部屋には、ダニエルとディッパー、そしてミナモトがいる。
「はぁ、まぁ、そういう事です。」

全く話について行けてないディッパーがミナモトに聞く。
「源ジィ、そういう事ってぇ、どぉーゆーことぉ?」
するとミナモトは、ディッパーの頭をハリセンでひっぱたいた。
「相変わらず、お前さんは馬鹿だなぁ。つまり、俺がこの組織の裏のボスってぇ事だ。」
「いったいなぁ!って、ちょっとまってぇ!源ジィが裏のボスなのぉ?ボスって僕だけじょなかったんだぁ!」
「今更気がついたのか⁉︎ホンットにお前さんってぇ奴はぁ。ずっと、お前さんにアドバイスして来たのはこの俺だぞ?」

二人の漫才を呆れながら見ていたダニエルは咳をした。
「ミナモト、お前がこの組織をこいつに作らせたんだな?」
ダニエルの言葉にハッとしたミナモトは、畏まって言った。
「左様でございます。」
またまた話について行けてないディッパーは、ダニエルに尋ねた。
「え?それって、どぉーゆーことぉ?」
ミナモトは、深い溜息を吐いた。

惑星ジャナップ4(亡くなった筈の王子)

惑星ジャナップ4(亡くなった筈の王子)

  • 小説
  • 短編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-11-15

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  1. 号外
  2. デビッド王
  3. 期待のダイヤ
  4. 疎ましい王子
  5. 庭師ミナモト
  6. 人魚メアリ
  7. 殺人の師 岩鷲
  8. 鞭使いダニエル
  9. 源ジィ
  10. ディストラクションの設立の秘密