辛いときの短歌
家事勉強 介護節約 合間にも
ひしゃげぬパンを かじる幸せ
病院の 細い線のよな 三日月が
嘲笑っている 悪魔に見える
まんまるの お月様のような 柏餅
ひとくちひとくち 欠けさせていく
人の道を 踏み外すまいと 生きるほどに
恨み悲しみは 深く降り積む
雲の城 あれが私の ものならば
中にも外にも 植えよう緑
石づきとり 二つつながった しいたけは
仲の良い夫婦の 生まれ変わりか
甘くした ミルクコーヒーに 一首浮かぶ
特別実り ある日と思う
母校では ブラスバンド部 練習中
同じメロディ 口で吹いてみる
思い出は 良い物だけを とっておき
悪い物捨てる 大掃除の日
一直線の 空いた道にこそ 風通る
どこから来るのか 強い風通る
わびしくも 願いを込める 千羽鶴
寝ても覚めても 夢ばかり見る
夕暮れの 3階の窓に お顔映す
かえり見すれば 今宵満月
温かき 人の心には 羽根ありて
君が側に立つ 遠く離れても
喜びも 悲しみもすべて 歌にする
孤独ありてこそ 歌は生まれる
手を伸ばし 星を掴もうと する子供
10年伸ばし 続けている我
鏡こそ 女の部屋の 一番家具
十八は光 八十は影
餓え凍え 虐げられても なお生きる
生命(いのち)が希望を 捨てるなと言う
辛いときの短歌
古今集の序文に、紀貫之が書いています。
「ちからをもいれずして、あめつちをうごかし、目に見えぬ鬼神をもあわれとおもわせ」
短歌には確かに不思議な力があると思います。
どうしてもたまっていく心の水を、短歌という形に収めたとき、心の澱がすべて消えて、事情が好転するのを感じます。不思議なことはまるで魔法です。それで魔法に頼るつもりで、困ったときにはいつも短歌や俳句をああでもないこうでもないと直し始めます。よい歌ができると辛かった時のことも、よい歌ができたという思い返して嬉しい出来事になります。
某短歌賞に応募して落選したものを加筆修正し、あまりにも暗いものは省きました。
白犬の短歌だけでは人格が疑われると思い、UPさせていただきます。