道化師と心身分離

道化師と心身分離

僕は
『いつもどんな時も
笑顔で
にこにこ
明るく振舞う子』

取り戻したんだ。
その建前に貼り付けられたレッテルを

どんなに落ち込んでても
どんなに苦しくても

『いつもにこにこしてて
悩み事なんてひとつもなさそうだね』

そのひとことを言われるために

『君の笑顔は見ていると元気になるよ』

そう思ってもらえるように

周りを見て
ひとりぼっちはいないかな、
悲しい顔をしている子はいないかな
そう考えるのが当たり前になってきて
ただ、大切な人の笑顔が見たくて

僕が
会話の橋渡しをしてみたり
無駄にケタケタ笑ってみたり


それを見て

『君はうるさい』

『あの子は空気を読まない』

そんなレッテルまで貼られて

みんなの心に余裕が無い分
僕が心を広く持たなきゃって
僕がピエロにならなきゃ
戯けて、転けて
滑稽で愉快な道化師にならなきゃって

本当は多分
「もう疲れたよ。」
って投げ出してしまいたいんだ。
「やーめた。」
って言って楽になりたいんだ。

でも、また
『ひとりぼっちでしか泣けないコ』
になってしまったんだ

笑顔の仮面を剥がしても
その下にはまた仮面があって
心のなかはぐちゃぐちゃで
それでもうまく泣けなくて

「それでも、僕は–––––。」

今夜もまた、
小さな画面に向かって呟く

明日もまた、
不気味な仮面を被って嘯く

道化師と心身分離

でも、いちばん見たい笑顔を

僕はまだ見れずにいるんだ。

ありがとうございました。

道化師と心身分離

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-09

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