意識の中で


コツコツと階段を登る音が聞こえる。
二階に到達したそれは、一度息を潜め、再び音を鳴らす。
それに合わすかのように僕も息を潜める。
冷や汗が止まらない。鼓動が早まっていき、ドクンドクンと音をたてる。
コツコツコツ。
僕の鼓動とは裏腹に、それはゆっくりと、しかし確実に僕の部屋に近づいている。
──コツン。音が鳴り止む。
それは僕の部屋の前で立ち止まり、難なくドアを開けてみせた。
殺される。
僕の意識は朦朧とし、そこで途絶えた。



「10月15日20時頃、蒲公英荘の住民を刺殺していく事件に幕が下ろされました」
アナウンサーである一人の男が原稿を読み上げる。
「この事件では、〇〇県〇〇市〇〇町蒲公英荘の住人を三日間で二人刺殺し、警察官が張り込んでいる所、ドアをこじ開け、中に入ろうとしている犯人を発見し、逮捕に至ったとの事でした」
男がつらつらと言葉を述べ、カメラはスタジオに切り替わる。
「それにしても残忍な事件ですね…」
コメンテーターの女が呟く。
「そうですね…しかし三人目の被害者が出る寸前の逮捕ですから被害を抑えられて良かったですね」
そうですね。と女が呟き、別のニュースに切り替わる。



──眩しい。
意識を取り戻した僕は強い光に目を覚ました。
まだ意識が朦朧とし、光に目が慣れない。
「起きろ」
聞き覚えのない声が僕を呼びかける。
少しずつ意識が回復していき、薄ら目を開ける。
そこには、天井から吊るされた縄があった。
「何か言い残すことはないか」
見知らぬ男が僕に問いかける。
──ああ、そうか。そうだったな。
僕の意識ははっきりとした。
「被害者の方、それに遺族の方にご祝福を」
そう言い終わると、男が歩を進める。
「それでは死刑を開始する」
僕の意識はそこで途絶えた。

意識の中で

初めて書いてみました。
拙い文章ですが、ご感想頂けると幸いです。

意識の中で

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-08

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